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白虎タリア


洗礼式で絵本の使徒様の絵本様から予言の様なお告げの様な言葉を聞いてしまい、私は白山領に混乱を巻き起こしてしまった。

父や母は「タリアのせいじゃ無い」と言ってくれるが、私のせいでリャルルさんがお父様の秘書を辞めてしまったのは紛れもない事実。

それについても「リャルルはどちらにしても秘書は辞めていただろう」と言われる。

でも私の心のモヤモヤしたものは収まらなかった。


少ししてリャルルさんが死んだと言う噂が流れ、私は思い悩んでしまう。

この国の領主は世襲制では無い。父のターガツが領主を引退した後の事を私も考えなくてはならなかった。

『私に何が出来るのだろう』

これも私の悩みの1つ。

今は父の手伝いとして領主の秘書見習いをしていて、もう直ぐ見習いを卒業して本格的に秘書にと言われていた。

『このまま秘書になってどうなるのか……もし領主が代わったら私は必要無くなるの? それとも私をそのまま必要としてくれるのかしら? 私はリャルルさんの様に立派な秘書になれる? もっとリャルルさんがいる間にいろいろな事を聞きたかった』



リャルルさんが死んだとの噂が流れて少しして今度はリャルルさんの娘だったリンさんが魔人国の風大領で領主になったと伝わってきた。これは本当の事の様だ。そう伝えたのが私の知っている人、エルフのフリザさんだからだ。フリザさんはリャルルさんやリンさんを追い掛けて旅立ったと聞いている。

『出来ればフリザさんに直接会って話しが聞きたい』

どうやらフリザさんは国境の町でリンさんの治める風大領で働く人を捜しに来たらしい。

『お父様に掛け合ってフリザさんに会いに行く?』

モタモタ悩んでいる間にフリザさんは帰ってしまっい私は優柔不断な自分に対して自己嫌悪に陥ってしまう。



こうしてまたモヤモヤしたまま1年が過ぎてしまった。


『ゴウケン将軍のお嬢さんのアイさんが玄海領から来た冒険者と魔人国に向かった』

前日にリクと名乗る亀の獣人が訪ねて来たのは知っている。それの方を案内して来たのがアイさんなのも分かっていた。なのでその話を聞いて直ぐに行動したアイさんを心の底から『凄い』と思った。

そして『私も!』と決意の様なものが芽生える。

私は直ぐに父ターガツの下に向かい宣言する。


「私も魔人国に行きたいです! リンさんが領主になったと言う風大領に行ってみたい!」

「そうか、それではタリアに1つ仕事を頼みたい」

「仕事ですか?」

「そうだ仕事だ。タリア、我が白山領の特使として使節団を率い魔人国の風大領と友好関係を結んできてくれ」

「特使として友好関係を……私に出来るでしょうか。リンさんが領主になったと聞きましたが、その他の相手は魔族ですよね?」

「そうかもしれんが領主はリンで未成年のために領主代理をリンの父のダンが務めているらしい。ダンならば黒猫族、我らと同じ獣人。それも我らと同じ白山領の出身だ」

「分かりました。私タリア、特使として魔人国の風大領に行きます!」

「頼んだぞ。使節団の人員と旅の準備は俺の方でしてある。後はタリアの準備が出来次第、明日にでも出発するがいい」

「分かりました。早速帰って準備をします」

私はそのまま家へと帰り旅の支度をしようとしたが、帰ってみると既に私の荷物が纏められていた。

「どうして?」

「特使として魔人国に行くのですって。頑張って。これで次の領主に一歩近付いたわ」

そう言って母は去年生まれた私の弟ダインに微笑み掛ける。

「はい……」




私は旅立つ。魔人国に向けて。そして自分の未来の何かに向かって。

『やっと心のモヤモヤを晴らせる気がする! 自分で何者になるか決める旅!』

そう私は未来への一歩を踏み出した。


「では行きますか」

馬車を操縦するのはいつも私の護衛を務める赤熊バァーテス。そして私の秘書として秘書見習い兼護衛見習いの白犬アンさん。

3人の友好使節団。

この後、国境の町で白犬アイさんも私の護衛見習いに加わる予定と聞いている。


ここまで私が魔人国に行きたいと思って1日。何か全て父ターガツの掌の上で踊らされている気もするが、それでも私はワクワクとドキドキで胸がいっぱいだった。



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