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白犬アン


リンちゃん家族が領都からいなくなって2年。

私はターガツ様の秘書見習いをしていた。


双子の姉のアイや両親はリャルルさんを魔族だからと嫌っていたが、私はそこまで嫌いでは無かった。

それでも私は周りに合わせてリンちゃんにも冷たい態度を取っていた。


洗礼式を終えて大人になって秘書見習いとして働き始めてリャルルさんの凄さに改めて気付く。

そして、私の下にある噂が流れる。

『リャルルが死んだ』

これは前からあった噂だった。

最初はリャルルさんが嫌いな人達が言っている嘘なのだろうと聞き流していたが、最近になって魔人国との交易が増えて、両国を行き来する商人がこの町にも寄るようになっていた。その一人がこの国から一番遠いと言われる魔人国の風大領まで行って、そこで領主があのリンちゃんで領主代理をリンちゃんのお父さんのダンさんが務めていると見てきたらしい。

その風大領は元々はリャルルさんのご実家がある場所で、リャルルさんは元々そこの領主の娘だったそうだ。でも 領主とリャルルさんが死んだのでリンちゃんが領主になったのだと。

交易が増えたと言われる今でも魔人国の情報は少ない。

積極的に国境の町を両国の交易の町にしようとコットン商会を中心に活動を初めてまだ1年。人族の造った商品が少しづつ増えているが、国境の町のあるこの白山領の領都でも情報は噂程度な事が多い。



そんな中、アイが変わった客を案内して来た。亀の獣人のリクさん。なんとリンちゃんを捜していると言う。

『リンちゃんに他領の知り合い?』

アイも同じ様に思ったらしい。


リクさんは領主官邸でリンちゃんとリャルルさんの事を尋ね、魔人国に行ったと理解した様だ。そこでリンちゃんが風大領の領主になっていると噂を聞き、魔人国に向かうと言った。

私は自分の仕事をしながら他の人達との会話を盗み聞きしてしまう。

その時は『そうなんだ……』と聞き流していたが、仕事が終わり家に帰るとアイが旅の準備をしていたのだ。


「どこか行くの?」

「魔人国」

「魔人国?」

「そう。今日、亀の獣人を案内したでしょ。あの人と魔人国に行くの」

「何で?」

「冒険者になるためによ」

「ああ……まだ諦めて無かったんだ」

私はボソリと本音を言ってしまう。

「諦める訳無いでしょ!」

アイを怒らせてしまった。

「冒険者って……」

私は言いかけて止める。


次の日、本当にアイは亀の獣人のリクさんと旅立って行ってしまった。


数週間後。

私はアイが心配になり積極的に魔人国の情報を集めているが、それは父のゴウケンも同じだった様で、なぜか父は領都の騎士団長でもあるのに国境の町に遠征に出掛けてしまう。

更に数週間後。父ゴウケンが帰って来て領主のターガツ様にある提案をした。それはタリア様を外交使節団の代表にしてリンちゃんが当主をしていると噂の風大領に行かせると言う提案。

タリア様もそれに興味を惹かれ、積極的に行きたいと言いだしてしまった。

そしてなぜか私もその使節団の一員に選ばれてしまう。


私は流されるまま旅の準備をしながら思う。

『冒険者になりたくなかったんだけどな……』


私達はタリア様を団長に白山領使節団を結成。

タリア様と私とタリア様の護衛の赤熊ベァーテスの3人での旅が始まった。

そして国境の町でアイと合流し、アイも使節団に加わる。


私はどうやら父とアイに騙された様だ。

父は私達を「冒険者にするつもりは無い」とは言っていたが、この使節団でタリア様の護衛をさせて実績を作り私達を騎士見習いにする気でいる様だ。

それにアイが賛同して私を巻き込んだ。それが真相。


『私は秘書になりたいんだよ!』

こうして嫌々魔人国での旅が始まる。



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