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黒猫ダン


突然の事に理解が追い付かない。俺は何でこうなってしまっんだろう……。




切っ掛けは……思い返せば妻になる女性リャルルとの出会いが俺の人生を変えたのだろう。

元々俺は田舎の町の近くにあっる遺跡を調査する仕事をしていた。

子供の頃からやんちゃで親からは見放された様に育った。それがたまたまイタズラで忍び込んだ古い遺跡で俺は最初の運命を感じた。

運命と言っても確かなモノでは無く、頭にビビッと何かを感じたのだ。

その遺跡は昔の使徒様の遺跡だと噂されている場所。でも実際はどの使徒様の遺跡かも分かっていなかった。

俺はそこに何となく無限の可能性を感じてしまった。


『俺が新たな発見をして歴史に名を残す!』


でも遺跡の発掘はそう簡単なものでは無かった。

元々あまり勉強が出来た方では無い俺は遺跡と仕事のために借りた家との往復で何年も大きな成果を出せていない。それでもコツコツ調査を進めていると少しづつ発見があり、いつしか領都からも視察が訪れるまでになっていた。

その視察に訪れたのが後の俺の妻になるリャルルだった。

一目惚れ。魔族の彼女は獣人族には無い不思議な魅力があった。


「ふーん……これはどの使徒のかしら?」

そのクールな横顔。人を引き付ける様な声。妖しく光る瞳。そのどれもが俺の心に響く。

俺は遺跡発掘の冒険者を辞めた。


『彼女を逃してはダメだ!』


俺は領都に帰る彼女を追い掛けていた。そうして押して押して押して押し掛けで婿になる。


『押した者勝ちだ!』


俺はリャルルの紹介で領都にある領主官邸の警備兵になる。

「領兵の仕事をしっかりして、騎士になって。騎士になったら私の専属護衛にするからね」

リャルルからそう言われ官邸の門番をする毎日。そんな中、リャルルが妊娠。娘のリンが産まれる。


『可愛い!』


初めてリンを見た時に俺は宝物を手に入れた様な感覚になる。

リャルルの仕事復帰を待ち望む人達の声が大きくなり、俺はリンの子育てのための育休を提案される。

それは俺にとって願ったり叶ったりだった。


『やった! 可愛いリンと毎日一緒に居られる!』


そんな楽しい毎日が2年過ぎ、リャルルがまた妊娠した。

それと時を同じくして領主のターガツ様の娘タリア様が使徒の絵本からお告げを授かった。

「近くに猫の姿の使徒様の気配がする」


『猫? ……俺?』

俺が使徒様の遺跡に惹かれた意味が分かった気がした。俺はそれを聞いて居ても立ってもいられず、無責任にも妊娠のリャルルと幼いリンを置いて故郷の使徒様の遺跡に向かってしまった。

しかしそれが間違いの最初の一歩だったのかもしれない。

俺はそこで殺人犯として捕まってしまった。


『無実だ! 俺はやってない!』

そう叫び続け領都に連行されるが、リャルルとリンのお陰ですんなり解決してしまう。

そして俺のいない間に息子のダルが産まれていた。



その後、俺もよく分からない内に国境の町への引っ越しが決まる。


『俺はリャルルとリンに付いて行くだけ』


そうして国境の町へ。

そこでリンが攫われてしまう。

俺とリャルルは急いでリンが連れ去られたと思われる西に向かって馬車を走らせた。リャルルには何か思い当たる事があったのかもしれない。

俺達の馬車は真っ直ぐ魔人国ルシミカの首都エルに向かっていた。


首都エル。そこでまた運命が変わったのかもしれない。

リャルルの様子がおかしい。

見た目は変わらない様に見えるのに、中身は別人に思える。

首都エルに入って直ぐに話し掛けてきた少女にあってからリャルルは変わってしまった様だ。夜中にリャルルのうなされている声が聞こえる様になったのもこの頃からだ。

そしてリャルルはどこからか魔族達を連れて来て旅に同行させた。

「あれは誰? リンを捜すのに必要なの?」

何を聞いてもこの頃のリャルルは何も教えてくれない。



リャルルの実家でリンがいるらしい大風家の屋敷に到着したのは2週間後の事だった。



『何でこんな事になってしまっんだろう……』


『リャルルが死んだ? 理解出来ない。意味が分からない。そもそもあれは本当にリャルルだったのか?』


目の前には首ただけになってしまったリャルル。

途中から一緒だった魔族とその仲間達がリャルルを連れて行くと言っている。意味が分からない。

「リャルル様の首を渡さなければ、ここにいる全員を皆殺しにしてリン様とダル様を連れて行く」

俺は宝物のリンとダルを守るために魔族達の言葉を了承した。いや、するしか無かった。






『俺は

何をしてるんだろう?』

あれから俺はずっと上の空の様な気持ちだ。

いつの間にか俺は大風領の領主代理になっている。


『俺は何をしているのだろう……』

俺は心の中でその言葉を繰り返していた。


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