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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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それぞれの今後


「帰りはゆっくり行きましょうよ!」

後ろでキャノの声がする。私はそれを無視して洞窟の階段を駆け上がっていた。


「キャノ! 早く来ないと置いてくよ!」

「無理! 鎧が重いんだって!」

遠くでキャノの声がした。

「私達の様に魔法が使えないのだから大目にみてあげたら?」

フリザがキャノの擁護をする。

「それはペコルも同じ」

「私は……身軽……だから」

私の隣で息を整えているペコル。

「仕方ないか……2人とも洞窟の入口から少し離れて」

そう言うと私は魔力を集め風魔法を使う。

ブァァー

洞窟から風が吹いた。

「キャーーー」

キャノの悲鳴がだんだん近付いて来る。キャノは私の風魔法に背中を押される様にして階段を凄いスピードで駆け上がっている。




「足が……足が……」

ガクガク震える足を摩りながらキャノは馬車に揺られていた。私の風魔法で筋力以上の動きをしてしまったために足が痙攣してしまったのだろう。

「無茶だねぇ……」

カリナがキャノを横目に呟いた。

「やる事が見付かったんだの。だから早くリャルル達と会って、それから本当の私の旅が始まるの」

「本当の旅ぃ?」

「そう。私の使徒を捜しに行く!」

「私の使徒ぉ?」

「私の使徒って何? リンが使徒でしょ?」

驚いた顔のフリザの声が響く。それに馬車を操縦するペコルも後ろの荷台の私達の方を振り向いた。

「私は使徒じゃない。私は使徒の本」

「……?…っ?………えっ?」

みんなの頭の上に『?』マークが浮かんでいる様だ。

「私は使徒じゃないの。私は使徒の本。だから私の持ち主の本当の使徒に会いに行く!」

「それはつまり、リンが使徒の本で本当の使徒がいる?」

「そう言う事」

「それは……リンはその使徒を捜すって事?」

「うん」

「捜すって! どこにいて……誰か分かってるの?」

「多分」

「多分?」

「そう多分。多分、絵本の国にいる」

「絵本の国に……こんなに遠くまで来たのに戻るって事?」

「そう……なるかな。でも、私ひとりの問題だから護衛は私がリャルル達と再会するまでにしよう。ペコルとフリザとはそこで一度解散」

「一度解散?」

ペコルは驚いて馬車を止める。

「うん。私は絵本の国に戻るって決めてるけど、2人の行き先は自分で決めて欲しい。もし行き先が私と同じ絵本の国なら、また一緒に旅をするのも良いよね」

「私は一緒に戻るよ。この国にいても仕方ないし、獣人にはここで生活するのは難しいと思う。それに馬車の操縦はリンには無理でしょ? 絵本の国に帰るまで面倒をみてやるよ!」

そう言ってペコルは御者席から立ち上がって私の肩を叩く。

「ペコルがそう言うなら私も絵本の国まで一緒に行こうかな。使徒の本だって言ったリンに興味があるから。私のこれからの研究対象にさせてもらうけど、それでも良いかな?」

「ペコルは分かるけど、フリザは本当にそれでいいの? 魔法研究なら私よりリャルルの方が適任だと思うけど」

「いいえ、リャルルさんの魔法は時間を掛ければ私でも理解出来ると思うのだけど、リンのあの死者を生き返らせる魔法は私だけではどんなに時間があっても解明出来そうに無い。だから私はリンと共に行きます。リンの魔法を解き明かすまで覚悟していてね!」

そう言ってフリザはウィンクした。

ペコルとフリザとの旅はまだしばらく続きそうだ。


「ちょっと待ってよ! 私は? せっかく町を出て自由になったのに!」

「私達、絵本の国に行くんだよ? キャノは人族でしょ? 周りが殆ど獣人族の中で旅続けられる?」

「……じゃあ取り合えず国境の町まで……それからの事は……」

「せっかく国境の町を出たんでしょ? それなら別の行き先にした方がよくない?」

「…………」

「キャノォ、私と一緒に何かしないぃ? 私ぃ、高魅の屋敷も出てきちゃったしぃ、知り合いも少ないぃ。それにミールの子孫とカールの末裔が一緒なら何かこの先ぃ……何か起こる予感しないかなぁ?」

「ミールの子孫とカールの末裔?」

「どぉう? 手始めに飛行艇を手に入れるぅ。それからミカ様の隠れ家を全部回ってみるぅ。それからぁ……」

「よし! 決めた! 私、カリナと行く! でもまずはリンを家族に会わせる! そして国中を旅して回る! よろしくね!」

そう言ってキャノはカリナに右手を差し出した。

「よろしくぅ!」

カリナがその手を握り返す。


「それぞれ今後の旅の目的が決まったね! ペコル、馬車の操縦代わる」

そう言ってフリザが御者席に向かう。

「どこに向かうんだ?」

フリザがそれまで走っていた馬車の方向を変えたのを見てペコルが聞く。

「このまま走ってもリャルルに追い付けない。だから……」

フリザはニヤリと笑った。


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