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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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ミカの想い


ミカの用意してくれた朝食はとても美味しかった。

「ねえミカ、このご飯を作る材料はどうしてるの?」

私はミカに中央の屋敷に呼ばれ、話の掴みとして世間話のつもりで聞いてみた。

「ウフフ。リンなら聞いてくると思った!」

嬉しそうにミカが笑う。

「無理には聞かないけど気になったから……」

「それが大変だったのよ。お米は風大領と火大領の境目にある隠れ家の近くに作った水田で採れた物。魚はここ水大領と土大領の間の隠れ家の近くの海で捕れた物。味噌や醤油、お酒や酢とかの調味料は風大領と水大領の端の海岸の隠れ家の近くに造った醸造所で作った物。それと食器とかは前にリン達を呼んだ火大領と土大領の領境に創った隠れ家の近くにある工房で作ったのよ」

ミカは誰かに聞いて欲しかったのか嬉しそうに話す。

「大変だったんだね」

「そうなのよ。本当に大変だっわよ。各地に隠れ家も創って……聞いてる?」

「聞いてるよ。各地に隠れ家を創って、それで?」

「孤児を引き取って育てて……」

「孤児? もしかしてここで働いてる人達はみんな元孤児なの?」

「ええそうよ。この世界は魔物がいるでしょ。だからどうしても孤児になる子供達が出てしまうの。本当はそうならない様に魔物を狩り尽くしてしまえばいいのだけど、それはそれで不都合もある様なのよね。だから魔物を造っている使徒の居場所が判ればなって……その使徒を説得出来ればいいのだけど……」

「説得?」

「そう説得。魔物は人の住んでいない場所に出現させてくれないかって頼みたいのよ」

「聞いてくれるかな?」

「聞いてくれるまで説得するわ。私、こう見えてとてもしつこい性格なのよ」

「しつこい性格……」

「だからルシの事も諦めてない。どこかで生きてて欲しい。ねえ、リン? どこにいるか教えて?」

「ええと……本当に今どこにいるか分からないんだよ」

私は『今どこにいるか分からない』と一応本当の事を言う。

「私しつこいって言ったわよね? 絶対聞き出すから、覚悟しておいてね。ウフフ」

「う……ん。でも何でそんなにルシに会いたいの?」

「それは双子の姉妹でもあるからと……このご飯食べて欲しいから。ルシにも思い出して欲しいの……」

「思い出して欲しい?」

「私達がこの世界に来て初めて感じた想い」

「想い?」

「リンは……」

そう何か言いかけてミカは私の目をジッと見ると言葉を飲み込んだ。

「ミカ?」

「……リンは使徒じゃないのか…………使徒の本は違うのかしら? この世界に来る前に願った想い……」

それまで楽しそうに話していたミカの表情が曇る。

私はミカに言われた『前世で願った想い』と言う言葉に心を動かされる。


『前世の願い……最後に想っていた事。莉愛はどうしてるかな……陸と竜は生まれ変われたのかな……みんなの心……魂は幸せだったかな?』

頭に浮かび上がった想い。

『陸と竜もこの世界にいる! 多分、陸が使徒で私がその本なのか……? もしかしたら竜も私と同じ様に陸の使徒の本なのかもしれない。捜さないと!』


「遣りたい事が見付かったみたいね」

「うん」

「私に協力出来る事はある?」

「亀の獣人は……いや、自分で捜さないとダメな気がする!」

「使命を思い出したみたいね。それでこそ使徒。リンはもしかしたら使徒になれるのかもしれないわ。私とルシも最初は……これは秘密にしておきましょう。自分で気付く事が大切な事もあるものね。ウフフ。話はここまで、旅はまだ長いのでしょ? もう旅立った方が良いわ」

「うん。まずはリャルル達と合流して……それから仲間を捜す!」

「頑張って」

その言葉をミカにもらい私は屋敷を出た。


「キャノに渡してくれる?」

屋敷を出たところで渡されたのは紫色の宝石が付いた碧色の棍棒。

「これは?」

「キャノに渡したかった物」

「これが?」

「そう。この先、魔族との戦いになった時のための武器。キャノには相手が魔族であっても人殺しをしてほしくないから、だからこのミスリルの棍棒。この棍棒には魔法を無効化する力と殴った相手を気絶させる効果があるわ。キャノならきっと使い熟せるわよって伝えて」

「キャノに直接渡したら?」

「急いで行きたい場所が出来たの。私も自分でまだやれる事があるって思いついたから。リン、気付かせてくれて……ありがとう。じゃあね」

その言葉を残してミカは屋敷の扉を閉めた。

私はミスリルの棍棒を手に立ち尽くしていた。


『魔族であっても人殺しをしてほしくない……』

ミカのこの言葉が私の頭に残る。



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