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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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大きいのは大変?


「フリザ、起きて、移動するわよ」

ミカがフリザを起こす。

「もう……朝?……ミカ様? 夢?……まだ夢の中……」

目を擦りながら起き上がる。

「ほら、私の隠れ家に行くわよ」

「え?」

私達は混乱するフリザを笑いをこらえながら見ていた。




「ミカ様が来たのならもっと早く起こしてくれたら良かったのに。ミカ様に私を起こさせて後ろで笑ってるなんて酷いよ」

フリザが馬車の隅で拗ねた様になっている。

「ごめんごめん」


今はミカの先導で近くのミカの隠れ家に移動している。

ミカはデコボコした地面を何の魔法なのか分からないが滑る様に進んで行く。その後ろを私達の馬車はついて行っていた。


「うん? 潮の香りがする」

私は馬車から顔を出すと鼻をスンスンとして外の匂いを嗅ぐ。

「ウフフ。海が見えてきた。もう直ぐ着くわよ」

馬車から顔を出した私と振り返ったミカの目が合う。

「海?」

何かに驚いた様子のフリザが私の隣並んで馬車から顔を出し外を見た。

「どうかしたの?」

「私……これまで進んで来た方向間違っていたかも」

「どう言う事?」

「私の予測だと海はもっと北に有るはずなの」

「そうなの?」

「もっと西に進まなくちゃいけなかった……私達は殆ど真北に向かって進んでたみたい」


「ペコル、あの崖の下の洞窟は見える?」

先を滑る様に進むミカが馬車を操縦するペコルに聞く。

「見える」

「あそこが私のもう一つの隠れ家」

「洞窟……嫌な予感がするんだけど、もしかしてまた階段を降りるのですか?」

「当たり!」

ミカは笑顔で答えた。

「階段か……」

キャノが馬車の私達と反対側の方から顔を出し前方に見える洞窟の入り口を見付けて、前の隠れ家の時の長い階段を思い出した様だ。

「ウフフ。階段、嫌なの?」

「嫌ですよ。この鎧を見て下さい。重いんですよ」

「ミスリルの鎧ね。なかなか良い装備じゃない。前の青銅の鎧よりは軽いんじゃないかしら?……ああ、キャノは鎧より重い立派なモノを持っているから」

ミカはキャノの胸を見ている。

『確かにキャノの胸は重そうだ』

そうキャノの胸を思いながら隣のフリザの胸に目をやる。

『フリザも重そう……そう言えばカリナも大きかった様な……』

夜の間魔法道具で魔物の警戒をしていてミカの隠れ家まで少し仮眠をしているカリナを振り返る。

『ペコルは……普通。大きくもなく小さくもない。この中で私だけ小さい? いや私はまだ子供なだけ!』

私はそう自分自身に言い聞かせるて納得する。






やはり洞窟の隠れ家へ続く階段は長かった。

ミカはまたここでも不思議な魔法なのか滑る様に下りていく。ペコルは身軽にそれに続く。フリザは風魔法を使って体を少し浮かせて負担を減らしていた。私もフリザを見習って風魔法を使う。

『これは楽』

カリナは「まだ眠いしぃ、馬車の番をしてるぅ。朝ご飯は適当に食べるからぁ~行ってらっしゃぃ~」と手を振り、海に面した崖の下にある洞窟の前に停めた馬車に残り隠れ家には付いて来なかった。

キャノも「カリナと馬車に残ろうかな」と言ったが、ミカに「キャノに渡したい物が有ったのに残念」と言われ階段を下りる決断をする。


「ハァ…ハァ…ハァ……」

最後尾のキャノから息を切らせている声が漏れていた。

『本当にミカはキャノに渡したい物なんて有ったのかな?』

たまに振り返って涼しい顔を見せながら階段を下りるミカの後ろ姿に疑いの気持ちを抱いている間に前と同じ様な大きな扉が見えてきた。

『ここにも護衛がいるんだ』

扉の横には2人の騎士が立っていて、ミカの姿を確認すると扉を開ける。

「ありがとう。お客を連れて来たから」

そう言ってミカが扉をくぐる。それに続いてペコル、私、フリザが通り、最後にキャノが通り過ぎて扉が閉まる。

「ハァ…ハァ…ハァ……は、走らなくて……もよかった……んじゃないの? ハァ……ハァ……」

『そう言えば前回は歩いてた。何でわざわざ走ったんだ? ミカの下りるスピードに合わせたから走る事になったけど、ミカにもっとゆっくりとか、歩いて下りるから先に行っててとか言っても良かったのでは? まあ、今更言っても仕方ないか……』

息を切らせているキャノを見ながらそう思うのだった。



「朝食の用意をしてくるわね」

そう言ってミカは中央の一番大きな日本家屋の様な屋敷に入っていく。私達は屋敷から出迎えに出て来た女性に案内されて前回の隠れ家の時に泊まったのと同じ様な屋敷に通された。


「疲れた……こんなに走ったのは久しぶりだ」

ペコルは畳の上に置かれた座布団に座ると足をダランと前に伸ばした。

「いい運動になったわ」

フリザは涼しい顔でキチンと座布団に座る。

「ダゥハァ……」

倒れ込む様にキャノは座布団を枕に横になった。

『大きいってのは大変なんだな……』

私は横になっても存在感をみせるキャノの胸を見てそう思うのだった。

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