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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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街道を外れて


街道を外れて4日目。

北に向かって進む私達の馬車は大きく揺れていた。


「失敗したかもぉ……」

カリナは馬車の揺れに気持ち悪くなっていた。

「今からでも土大領に向かわない? 魔物の襲撃も日毎に増えてるし……」

「今更? 多数決で決めたのに? 余計に危険だよ。魅高の次の町で私達を見てないって知られたら街道を外れたって分かられてる可能性が有る。街道で待ち構えられてるかもしれない」

私の言葉にフリザが反対した。

「カリナも後悔してるって言ってるよ」

「カリナ、もう少し我慢して。2日もしたら毒高領に入るから。毒高領は魅高領よりなだらかな土地で馬車の揺れも少なくなるはず」

「ぅ……ん」

カリナが弱々しい声で返事をする。


「カリナも起きた事だし、この辺でそろそろ野営にするか?」

御者台のペコルが聞いてきた。

「そうだね。もう夕方だ」

フリザがそう答えペコルは馬車を止めた。

基本的にフリザが旅の指揮をしている。それはフリザがこの中で一番旅慣れているから。

馬車の操縦はフリザとペコルが一日交代。

魔物が出たらキャノが馬車から真っ先に飛び出し、馬と馬車を守る。

その間に私とフリザが魔法を唱えトドメを刺す。ペコルは伏兵に備え警戒態勢を整えて馬車で待機。後ろや横からの襲撃に備えている。

カリナは馬車酔いが酷く、日中は自分に眠りの魅魔法道具を使い眠っている。本当はカリナが魔法道具で馬車に近寄って来る魔物を探知する役目を任せようとしていたが、最初の日で馬車酔いが酷く使い物にならないと日中は眠ってもらって、みんなが眠っている夜の魔物警戒を任せていた。なので日中の魔物探索はこの中で一番魔力量の多い私の担当に決まってしまう。

最近はもっぱら常にカリナから借りた魔法道具に魔力を込め魔物が近寄って来ないか神経を研ぎ澄ませていた。


馬車が止まり夕食当番のキャノが夕食の準備をし始める。

「フンフフフンフンフフンフン」

キャノが下手くそな鼻唄を歌いながら料理をしている。

その間にペコルが馬に餌をフリザが魔法で水を出して与え、その後は2頭の馬を1頭づつ手分けしてブラッシングしてやる。

私は魔法道具で魔物を警戒しつつカリナの馬車酔いが良くなるのを待つ。カリナの体調が戻り私から魔法道具を受け取って魔物の警戒を交代。

そしてみんなで夕食を食べる。

それがいつもの夕方のルーティン。


「このまま順調に進むと2日くらいで毒高領に入るわ。毒高領ではその名の通り毒を持つ魔物が出始める。魔物の他にも毒を持った動物もいるからそれにも気を付けて」

「フリザ、毒を持った魔物は魔法道具で探知出来るけど、動物は探知出来ないと思うよ?」

「そうよぉ、私の魔法道具は魔物しか見付けられないわぁ」

「私も毒高領に行くのは初めてで、実際に毒を持った動物は見た事が無い。でも聞いた話では毒と言っても動物のなら仮に毒を受けても死ぬ事は無いらしい。もし毒を受けてしまったら直ぐに解毒薬を使う。それしか対策は無いかも……」

「その動物の毒は馬にも効くの?」

「馬……多分」

「それなら私達より馬が毒に犯されないかの方が気を付けないと。私達は基本的に馬車の中にいるでしょ? でも馬は常に外だよ」

「そうか……私達より馬の対策を考えないとか……」

「カリナは毒に有効な魔法道具とかは持ってないの?」

「無いわぁ」

「フリザの魔法は?」

「私も毒に関して有効な魔法は知らない」

「リンは?」

「私?」

「そう。使徒様の本に何か書かれてない? 毒を無効にする方法とか、毒を耐性を付ける魔法とか……」

「毒……」

私は前世の記憶を改めて思い出してみるが、毒についての知識は無かった。

「本を出して見てみてよ」

「本?」

「そう。使徒様の本」

4人の期待と好奇心のこもった目が私に集まる。

『どうしよう。使徒の本なんて出せないよ。あれはリャルルの本なんだから。リャルルがいないと……』

私は頭を悩ませる。

「どうした?」

「ちょっと魔力を使い過ぎてて……」

咄嗟に嘘の言い訳をしてしまう。

「そうか、ずっと魔法道具に魔力を使ってたから。それに魔物との戦いでも魔法を使うしね。明日、魔力が回復してから調べてみて」

「うん……疲れたから少し早いけど寝るね」

フリザにそう返事をして夕食を途中で切り上げ私はいつもの寝る定位置で寝袋を広げて頭までスッポリと入って顔を隠す。


『どうしよう。今更本当は使徒の本が出せないなんて言える? 私は使徒じゃないって言った方が良いの? でもペコルとフリザは前にリャルルの出した本を私が出した本だと思って見てるんだよな……。本当はリャルルが魔王の生まれ変わりだって白状する? それもカリナとキャノの反応を想像するとマズい気がするし……』


「どうしたら良いんだ!」

私は思わず叫んでしまった。



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