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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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多数決


「じゃあ、多数決を取るよ。このまま進むって人は?」

フリザの問いに私が手を挙げる。

「次、魅高の町に戻る」

誰も手を挙げない。

「次は街道を外れて南へ向かう」

カリナが手を挙げた。

「北へ向かう」

ペコルが手を挙げる。

「うん? キャノは? どれにも手を挙げなかったけど」

「悩む……魅高の町に戻るのは無いにしても、土大領に行くのはどうだろう? リンの母上を追い掛けるなら土大領方面に向かうのが一番なのは分かる。でも、あの馬に乗った人は魔族、魔族を相手にするのは……それなら魔物と戦う方が良いよ。そうなると南に向かうか北に向かうか……」

「いや待って、キャノって国境の町でミスリルの鎧買ったって言ってなかった?……あっ!」

「ペコル!」

ペコルとキャノが私を見た。

「ミスリルの鎧? ミスリルって高いよね? そのお金ってどうしたの?」

「ええ……と……」

キャノは口篭もる。

「まさか冷蔵車を造って稼いだ旅のお金からじゃないよね?」

「いや……旅に必要な装備だから良いかな……って思って」

「それで…いくらしたの?」

「冷蔵車1台分……と少し?」

「1台と半分くらいでしょ」

フリザが告げ口した。

「フリザ!」

「キャノが鎧を買わなかったら後で余計に2台の冷蔵車を造る必要無かったんじゃ……」

「……ごめん。でも前衛は私だけだから鎧は必要でしょ?」

「鎧は必要かもしれないけど、そんなに高いミスリルの鎧が必要?」

「ミスリルの色って前の鎧の色に似てるでしょ? それにミスリルなら魔法耐性が有るから魔族との戦いでも有利だし、この先は魔族と戦わないとも限らないでしょ?」

「それならキャノは土大領方面に行っても良いよね?」

「……うん」

私に睨まれキャノが頷く。

「これで行き先は土大領に決まりで良いね!」

「それはズルい!」

ペコルが抗議の声を上げる。

「じゃあ私はペコルの方に1票。これで2票対2票」

「フリザ?」

フリザが北へ向かう方に手を挙げる。そして4人の目がカリナに集まった。

「ぇ? 何ぃ?」

「カリナはどっちにする?」

「私は南にぃ……」

「それは予選落ち。土大領に向かうか街道を外れて北に向かうかの決選投票」

フリザの言葉にカリナが困った顔になる。




カリナの答えを待ち時間が過ぎていく。

「ここで止まってても仕方ないよ。夜が明けたら本格的に追っ手が来るんじゃない? 早く決めないとカリナを連れ戻しに来ちゃうんじゃないかな?」

そう言って私はカリナにプレッシャーを掛ける。

「そうだよ。追っ手に見付からない様にしたいなら北に向かう方が良いのね? 土大領に行ったら私達って目立つよ。エルフに獣人族が2人だよ? 目立つと思うな~」

「それなら私達はフードを被るよ。それなら顔と耳が隠れるから」

「私達? 私はフードなんて被らないよ。耳が隠れると音が聞こえ辛い。戦闘になった時に音が聞こえないのは危ない」

「……ねえ、そもそもペコルとフリザは私の護衛だよね? 私が西に向かうって言ったら付いて来るのが護衛じゃないの?」

私の言葉に2人は首を横に振る。

「護衛は安全第一。わざわざ危険な方へ行かせないのが護衛の役目」

「そう」

ペコルの言葉にフリザが大きく頷く。

「キャノ! 何か言ってやって!」

「わ、私!」

「そうだよ。キャノは土大領に行きたいんだよね?」

「いや……どっちでも……」

「行きたいよね!」

「はい! 土大領に行きたです!」

「それならカリナを説得してよ!」

私はキャノを脅す感じになっていた。

「説得……北に向かったら食べ物に困るかもよ」

「弱いな……魔物を倒せば肉になるから」

直ぐにフリザに言い負かされる。

「他には……北は毒を持つ魔物がいるって聞くよ」

「念のために解毒薬を買ってある」

これもペコルに反論された。

「ええと……海がある」

「「「…………」」」

頭を悩ませて遂に説得にならない様な事を言ってしまう。

「海ぃ……海は行ってみたいかもぉ」

「じゃあ決まりね!」

「キャノ! 反対の説得してどうするんだよ!」

「あっ!」

パチパチパチパチ

「はい決まり! 3対2で北に向かうに決まりました!」

フリザが拍手で宣言する。

「待ってよ! それは無し!」

「もう決まりました! 馬も休めたし……出発!」

そう言ってフリザが御者台に行き、馬車を発進させた。

「ごめん」

キャノが私に小さな声で謝った。

「リンの安全のためだから。誰がリンの能力を狙ってくるか分からないんだ。用心に越した事は無い」

「それじゃいつまで経ってもリャルルに追いつけないよ」

「でも、また攫われたら? その方がリャルルに会うの遅くなると思わないか?」

「それはペコルが守ってよ」

「守りたいが魔法を使われると……これまで私は魔法相手に戦った事が無いから対策出来ない。だから魔族より魔物の方が戦いやすい」

「…………」

私は納得出来ず馬車に揺られていた。


街道を外れた事で馬車の揺れは激しい。




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