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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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追っ手


「ペコル!」

私の叫びにペコルは『シマッタ!』と言う顔になる。

「リンが使徒ぉ……様ぁ?」

「やっぱり魔王ルシの生まれ変わり!」

「それは違うから。別の……使徒」

「別の使徒? それは何の使徒様?」

「何のって言われても分からないよ」

「分からない? 使徒様は何か特別な使命を果たすために生まれるんじゃ……」

「マズい! 移動しよう」

フリザが声を上げ御者台に座り馬にムチを入れる。

「何!」

馬車は揺れながら走り出した。

「声が大きいよ! 外に丸聞こえ!」


御者台でフリザが叫ぶ。

「私……声は小さい方だと思うけど……」

キャノが小さく呟く。

「大きいのはカリナの声だよ」

ペコルが気まずそうに言った。

「私ぃ?」

「カリナは地声が元々大きい……」

『確かに』

私は心の中で思う。前から少し気になってはいた。カリナは話し方に特徴が有ってそこに耳を奪われがちだが、基本的な声のボリュームも他の人より大きい。

「えっ……!」

カリナはショックを受けたように下を向く。

『その驚く声も大きいんだよな』




私達の馬車はフリザの操縦で魅高の町を出た。

「馬達を休ませるって話は?」

私がペコルに聞くが黙って首を横に振られる。

『どうやら今日も一晩中走り続ける様だ』そう思っていたがフリザが突然、街道から少し離れた位置に馬車を止めた。

「どうかしたの?」

キャノが様子を見に御者台の方へ向かうとフリザが小声で話す。

「誰か付いて来てる」

「尾行?」

「多分。夜に馬車を走らせてるのは私達だけだと思うよ。何かの魔力も感じるし私達を追って来てる」

「魔力って事は魔族?」

「だと思う。どうする? 逃げる? 隠れる? 迎え撃つ?」

私達はお互いの顔を見回す。

「誰が決める? 馬車の操縦してるフリザ?」

「私? ペコルが決めたら?」

「私はこの国の事は詳しくないから判断出来ない。そもそも魔族と戦った事無いもん。キャノは?」

「私も魔族と戦った事無いよ。私は魔物の討伐専門だったから。カリナは? カリナは魔族軍にいたんだよね?」

「私はぁ……」

「シッ!」

カリナが何か言いかけたがフリザが口に人差し指を当て静かにする様に合図した。


『馬?』

追っ手は馬に乗っていて、時折手を前に伸ばし何か魔法でも使っている様に見える。

ガサゴソ

カリナが何かを取り出し魔力を込め始めた。

「姿を隠す魔法道具」

その言葉の通り私達の乗る馬車を何かが覆った。



馬の上の人の姿はくらいせいかよく見えなかったが、そのシルエットから首を傾げ魔法を使っている手を左右に動かしている。

『魔法で私達を捜してる?』


「行った」

どうやら私達が先に行ったと判断したようで馬に乗った人は街道の先へと消えた。


「何だったんだろう」

「狙われるとしたらリン? リンが使徒様だって聞いた誰かの指示で捕まえにでも来た?」

「それはどうだろう? 使徒様が現れたってデマはよく聞く話だよ。特に最近は魔王ルシ様が復活したって都市伝説も聞くから」

「あぁ、それはミカ様の命令で私が流した噂ぁ……」

「カリナが?」

「ミカ様に言われて噂を流したのぉ」

「でもそれは魔王ルシが復活したってって噂でしょ? 他にも噂はあったよ? 例えば今度の使徒様は死者を生き返らせるとか……」

「死者を生き返らせる……」

ペコルとフリザが私を見る。

「あの日いた全員に口止めしたはずだよ?」

私の言葉にキャノとカリナの視線も私に向く。

「死者を生き返らせるって使徒様の噂はリン?」

「……あれは生き返らせたとは言わないよ。それにあれは私だけの力じゃないし、偶然魔力が暴走して変な効果が発動したって言うか……マグレ?」

「マグレでも出来た事には変わりない。あの魔法を見て私はリンを追い掛けて付いて来たんだから」

「フリザ……」『本当は自分では使徒の本も出せない』とはなんとなく言えなかった。


「この後どうする? このまま進めばあの馬の人に会うんじゃない?」

「でもぉ、戻るのは無しでぇ。高魅の町に戻ったら屋敷に連れ戻される」

「連れ戻される?……もしかしたらあの馬の人ってリンを捜してるんじゃ無くて、カリナを捜してるって可能性も有るんじゃない? 魔法も使ってたし、魔族だから狙いはリンじゃなくてカリナ……」

「それならぁ、余計魅高の町にも帰れないしぃ、この先の土大領にも行けなぃ」

「そうは言っても街道は1本道、魅高の町に戻るか土大領に進むかしか無い」

「いや、有る」

フリザとカリナの話にキャノが入る。

「どこに?」

「街道から外れて南の火大領か雷高領を目指すか、北に進んで水大領か毒高領を目指す。そこから迂回して風大領に行く」

キャノの話にフリザは首を横に振る。

「無理無理無理。南に行くにも北に行くにも魔物が出る。街道から外れるのは危険だよ!」

「私達の実力なら問題無い。食料も大量に買ったし、魔物を倒せば肉も手に入る。それに魔物の素材を集めながら旅するならお金も稼げる」

キャノの話に私達は魅高の町に戻るか土大領に進むか街道を外れて北へ向かうか南へ向かうか多数決を取る事に決めた。



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