表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
54/151

魅高の町


ペコルは一晩中、馬車を走らせ続けた。私は前日の疲れのせいとこの体が2歳と言う事もあるのか馬車が走り出して直ぐに眠ってしまっていた。


私が目を覚ましたのはお昼くらいになってから、既に馬車は魅高の町に到着していた。

「起きた、リン」

そう声を掛けたのは私の隣で横になってたペコルだ。馬車は止まっていてフリザとキャノの姿は無い。

「うん。おはよう。他の2人は?」

「キャノは知り合いに会いに、フリザはカリナを見付けたんで後を付けて行ってもらった」

「カリナ?」

「そう。途中、飛行艇の発着場にも寄ったんだけど。昨日、私達の乗った飛行艇は無かったんだ。でもここにカリナがいるって事は飛行艇はどうしたのかって思って……」

「ペコルは私がいるから留守番?」

「そう言う訳じゃ無いけど、私がカリナの後を付けると目立つから。それに少し休みたかったのもある」

「そうだったね。ペコルはずっと馬車の操縦をしてたんでしょ?」

「うん。それは大丈夫」


「ただいま」

声が聞こえてキャノが戻ってきた。

「お帰り」

「あ、リン起きたんだ。ペコルは眠れなかったの? やっぱり今日はこの町で休まない? ペコルも疲れてるのもあるけど、馬達の休息も必要だよ」

キャノの言葉に私も一晩中走ってくれていた馬達の事を思い出す。

「そうする? ……リンが良ければだけど。リンはリャルル達に早く追い付きたいんでしょ?」

「それは有るけど、ペコル達に無理させてまででは無いから。馬達もこんな大きな馬車を引いて走るのは体力も消耗してるよね」

「大きい馬車だけど二頭引きだから負担はそこまででは無いんじゃないかな? でも夜道を走ったからね」

「フリザが戻ったら宿を取るの?」

「そうしようか……それにしてもフリザ遅いな?」

「カリナが遠くまで行ったんじゃない? カリナの尾行でしょ?」

「それなんだけど、フリザには『程々にして帰って来なよ』とは伝えたんだけど」

「フリザに会ったの?」

「高魅の屋敷でね」

「高魅の屋敷?」

「そうだよ。カリナの実家。私も高魅の屋敷に用事が有ったから」

「知り合いって高魅の人?」

「高魅の当主の護衛の1人。魔物討伐の依頼を出した人かな。本当の依頼主は高魅の領主なんだけど、魔族が直接人族の英雄カールの関係者に依頼出来ないから間に人族の使用人とかを挟むんだよ」

「面倒くさいね」

「相手は魔貴族、それが長年対立してきた人族と魔族の暗黙のルールだから仕方ない」

「魔貴族……カリナの実家って、カリナってお嬢様!」

すっかり忘れていたがカリナは高魅領主の娘なんだからお嬢様に間違いない。

『カリナももしかして三高魔貴族の後継ぎだから魔力を受け継ぐのかな?』

私は大風の屋敷でエリオットに言われた事を改めて思い出し、カリナも私と同じ様な境遇なのかもしれないと考えていた。


「キャノはカリナとは屋敷で会ったの?」

「擦れ違った程度。お互い気付いたけど……話せる雰囲気じゃ無かったから」

ペコルに聞かれキャノがそう答える。

「何が話せない雰囲気だったの?」

「多分、私の想像だけど、ミカ様の事は秘密なんだと思う。ミカ様の命令を聞くのを三高魔貴族の高魅領主が許すかな?」

「魔族と人族の関係にそこまで詳しくないけど、これまで聞いた感じだと分かる気がする」

そうペコルはキャノの話に納得したようだった。




「お客さん」

フリザが戻ってきたのはキャノが戻ってきてから数十分後だった。

「お客さん?」

馬車で休んでいた私達3人は『お客さん』と言う言葉に頭に『?』が浮かぶ。


「カリナ?」

キャノが疑問の言葉。

「カリナ!」

ペコルが驚きの言葉。

「…………」

私は無言だった。


「旅に出るならぁ私も連れてってくれ無ぃ?」

カリナの口から出た言葉は私達の予想外のものだった。

「……飛行艇で連れてってくれるって事?」

「飛行艇は没収されたぁ……」

「没収?」

「あれは元々魔族軍の物ぉ。軍を辞めた私が勝手に使ってただけぇ」

「そうだったの!」

「まぁ、それは良いのよぉ。ミカ様に頼まれた仕事は終わったのだからぁ」

「それで何で旅に? カリナの父上様にミカ様の事で怒られて縁でも切られたの?」

「父さんはミカ様の事を知らなぃ。それに父さんなら知っても何も言わないと思うかなぁ。それより母さんがねぇ……」

そう言ってカリナは母親の事を話し始めた。




「そう……カリナの母上がミールの子孫でカリナも……」

「ミカ様に言われた事を伝えたんでしょ?」

「ミカ様の名前を出しても私の話を信じてくれなかったわぁ」

「だから家出? 本当にミカに会ったと私達から話したら信じるかな?」

「信じないと思ぅ。特にペコルは獣人族だしぃ、フリザはエルフゥ、キャノはカールの子孫、それとリンはぁ……そんな不思議な組み合わせの人達が言う事なんて信じないぃ。いや、信じたくないのかもぉ」

「今まで信じてきたモノを変えるのは難しいからね」

私がそう言うとみんなが変な顔をする。

「リンはたまに悟った様な事を言うよね。使徒だから?」

ペコルの言葉にキャノとカリナが驚いた様な顔になる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ