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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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入国許可証


「儲かりました。ムハハハハ」

ラムメェがそう言って笑っていた。

あの後、予想通り旅支度のお金はもう殆ど残っておらず、また私は追加で2台分の冷蔵車を造る事になった。


「これだけのお金があれば風大領までの旅は余裕だね」

「だね。これもリンのお陰だよ」

「そうそう、ありがとうリン」

「…………」

3人は私を褒めて持ち上げ、お金を使い過ぎた事を誤魔化そうとしていた。


「そうだそうだ。リンに頼まれてた事、魔人国側の人達に聞いてきたよ」

フリザキャノが話を逸らそうとして私の頼んだリャルルの情報を話し出す。

「私もいろいろ回って聞き込んだけどどっちから聞く?」

ペコルもリャルルの事を聞いて回った様だ。

「……じゃあペコルの方から」

私は最初に絵本の国側の情報を聞く事にする。


「私達がカリナに連れ去られて少ししてリャルル達が戻って来て、馬車が無いと騒いでいたらしい。それで馬車が魔人国側に向かって行ったと聞いてダンと走って行ったって」

ペコルが話し終わるとキャノが続けた。

「リャルル達は魔人国側に来るとそこでも馬車の行方を聞いて回っていたらしいわ。それで私達の乗った馬車が国境の町を出て魅高の町の方へと向かったと聞いて、馬車を借りて行ったらしい。この町での目撃情報はそこまで。確かに魔族の女性と黒猫族、それに赤ちゃんの3人だったと言っていたから目撃情報はリャルル達で間違いないと思う」

「リン、最初の目的地は魅高の町で良いよね?」

「うん。多分そこから風大領に向かったって事で良い?」

「そうだと思う。この町からも私達の乗った飛行艇が見えたって言う人がいたから。それもリャルル達と一緒にね。その人が言うには『まさかあの飛行艇に乗ってるんじゃ……』って呟いたのを聞いたって」

「そう……」

「準備も出来たし出発する?」

3人の視線が私に集まる。

「待って」

ピオネがそれに待ったを掛ける。

「何?」

「もう少し待って。ユキが戻ってくるまで」

「ユキ?」

「今、ユキに魔人国への正式な入国証を作らせてるから」

「入国証なんて必要?」

「絶対あった方が良いから。魔人国のどの町でも正式な入国証が有るのと無いのでは扱いが違う。特にペコルとリンはな。獣人族が魔人国を旅するのは難しい」

「そうかもね。私は見た目がエルフだしキャノは人族だから問題無いと思うけど、リンとペコルは余計な事に巻き込まれるかもしれない。そんな時に許可証が有れば無用な争いに巻き込まれないで済む」

「分かったよ」

そんな話をしている間にユキが走って来るのが見えた。


「お待たせ。許可証。これがリンのでこれがペコル、そしてこれがキャノ。無くさない様に首から下げておいて」

そう言ってユキが許可証を渡してくれる。

「私のは?」

フリザだけ許可証がもらえなかった。

「フリザは元々魔人国の住人だし、魔人国の冒険者証も持っているでしょ?」

「うん。有るよ」

そう言って首から下げていた青い金属のドッグタグの様な物を出す。

「それが許可証の代わりだから」

そんな話をユキとフリザがしている横でキャノが何か驚いている。

「どうしたのキャノ?」

「これ……父上の裏書が有る」

そう言って許可証の裏側を見てた。

「そう。この許可証はキャノのお父さんの名前で出してもらったの。カールの子孫の裏書ならどこで出しても有効だから」

「父上は私がこの町から出るの反対だと思ったのに」

「そんな事無いと思うよ。無口な人だけど寛大な人だよ。そうじゃないと獣人族と共存しているこの町の責任者なんて出来ないよ」

ユキにそう声を掛けられキャノは自分の許可証をギュッと握った。






「出発!」

そうペコルが御者台で馬にムチを入れ、私達の乗る馬車は走り出した。

見送ってくれているピオネ達4人が手を振ってくれる。

私達もそれに手を振り替えした。


「急ぐよ!」

ペコルはそう言うと馬車の速度を上げる。

「夜の間に走って魅高の町に朝までに着くから3人は寝てて良いから」

私達が国境の町を出たのは深夜、日が代わった頃だった。



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