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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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お金が無い


手持ちのお金が無かった事に今更ながら気付いた私達は今後の旅に不安を覚えた。


『どうしようかな……』

3人が3人とも頭を悩ませ国境の町の魔人国ルシミカ側の入り口にただ突っ立っている。

そんな中でキャノが旅装備を整え戻って来た。


「私は準備万端。後はユキが馬車を持って来てくれるのを待つだけ?」

「そうでもないんだけど……手持ちのお金が無くて買い物も出来ないのよ……」

フリザが素直を言う。

「お金が無い?」

「そうなの、飛行艇で連れ去られる前に乗ってた馬車に殆どの荷物が置きっ放なしになってたから。今持ってるのは装備していた服や武器だけ。小銭は買い物をした時に出た銭貨がかろうじて有るけど……」

そう言ってフリザは少額の小銭を出す。

「私も……」

ペコルもポケットから数枚の銭貨を出した。

「リンは?」

「私は買い物する時はダンかリャルルに出してもらってたからお釣りの銭貨も持ってないよ」

。キャノに聞かれそう返す。

「これじゃね……おやつくらいしか買えないか。……私が貸しても良いんだけど、私もそれほどお金持ちでもないし、私の分の旅費は有るけど4人で風大領まで行くならそれなりの食費や宿泊費も掛かるからな……お金を借りるならラムメェ?」

「ラムメェか……」

ペコルが考えている。

「ラムメェはお金持ちなの?」

「まあ……金持ちかって言うと親が金持ちかな?」

「親?」

「そうラムメェは武装商戦団コットン会頭の白羊シーメェの一人娘。今は実地経験を積むためにピオネの下で交渉担当兼金庫番をしてる。だからラムメェにお金を借りると言う事は実質的にコットンから借りるって意味になる」

「コットンからか……私なら借りたくないかも」

キャノがコットンと聞いて嫌な顔をする。

「そんなに悪い印象は無かったけどな」

フリザが首を傾げる。

「フリザは私達と合流するまでシーメェと旅をしてたんだったもんね」

「そうリンを追い掛けるのにシーメェの馬車に乗ってた。その時も無茶を言われた事も無いしお金にキチッとしてるだけで悪気は無いと思うけど」

「その金にキチッとってのが冒険者には悩ましいんだよ。冒険者は基本その日暮らしに近いから依頼が無かったり怪我をしたりすると収入が減ったり無くなったりするんだよ。でもコットン商会の取り立ては必ず取り立てていく。金が無ければ冒険者の命綱の武器や防具を取られるし、長期滞在するために宿に前払いしていた宿代を宿から回収されて、宿を追い出されたりするんだよ」

「それは恐ろしい……」

フリザもペコルの話で自身も冒険者だからこそ、その怖さの意味が分かったらしい。


「でも、旅の費用は必要だから」

キャノの言葉に2人は考え込む。

「何か売れる様なものは無いかな?」

「リン、売れるものって具体的には何? 私達が持ってるのは軽装備の服と武器くらいだよ?」

「あれ、前にフリザが使った魔法は? あの魔法でまた馬車を冷蔵車にして売るとか。他に何か魔法とかで稼げないかな?」

「稼ぐか……」

私とペコルの視線がフリザに向く。

「前にも言ったけど、エルフの魔法はお金儲けに使っちゃダメなの! それはエルフの決まり!」

「ああ……うーん」

ペコルはフリザが前に言ってた事を思い出して唸る。

「あの魔法使っても良いんじゃない?」

「だからエルフの決まりで……」

「それだよ! ミカに言われたでしょ? フリザはエルフの森の改革者だって。改革者って今までの決まり事を変えたり新しい秩序とかを作ったりする人じゃない? それならエルフの魔法でお金儲けをしてエルフの決まりを変えるのがエルフの森の改革者の最初の一歩になるんじゃないかな?」

「改革者の最初の一歩……うーん……なんかリンに騙されてる様な……リンの口車に乗せられて大切な何かを失いそう……」

「新しいものを作るにはまず古いものを壊さないと、それが改革の始まりだって!」

私の言葉にペコルとキャノが納得した様に頷いている。


「ギャハハハ」

笑い声が聞こえた。

「笑い事では無いからね」

「だって可笑しいだろ。私も古い老人達の価値観を壊してる途中だから分かるわ」

笑いながらピオネともう1人真面目な顔をした黒狼族の女性が歩いて来た。


「ピオネ! ワォン!」

キャノが振り向いて2人の名前を呼ぶ。

「2、3日見ないと思ったらキャノも一緒だったのか」

「うん。そうだよ」

「それに珍しい格好だな。いつもの青銅鎧はどうした?」

「あれはこの町の騎士の正装だから脱いで来た」

「そうなのか?」

「そう私……騎士辞めた!」

「そうか。良かったんじゃないか。キャノは英雄カールの名に囚われ過ぎだったからな。それで辞めてどうする? キャノさえ良ければ私の仕事を手伝わないか?」

「ああ、ありがとう。でも私、リン達と旅がしたいの。この町以外のもっと多くの場所を見たい!」

「良いかもな、キャノにはそれが合ってるかもしれないな」

「それで、頼みがあるんだけど」

「頼み? 何だ?」

「お金貸して!」


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