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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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やっと国境の町まで帰って来た


飛行艇での国境の町への帰り道はみんな無言だった。それは出発前にミカが一人一人に話した事がそれぞれの心に何かの影響を与えているからだろう。

端から見て特にキャノとカリナはそれまで信じていた自分の価値観を壊す様なものに思えている様に感じる。



「着いたわぁ……」

カリナの言葉で私達は飛行艇を降りる。

「ここから町は少し離れてるから……歩く?」

キャノが私達3人に聞く。

「まあ町も見えてるし歩くか」

「そうだねペコル。冒険者の旅の時はもっと歩くのが普通だからね。見えてるくらいの距離なんてなんてこと無い。リンは……」

フリザがそう言って2歳の私の短い足を見た。

「歩けるよ!」

「あはは。知ってる。馬車で何日も一緒に旅をしていたんだから」

「帰ろう。リャルルも心配してるだろうから」

「それとダンもな」

こうして私達3人は町に向かって歩を進めた。

「待ってよ。私も一緒に行くよ!」

そう言ってキャノが隣に並ぶ。

そんな様子を飛行艇の横でカリナが見ていた。







「やっと着いた……意外と遠かったよ」

私達は半日近く歩いてやっと国境の町に辿り着く。

「そうだね。飛行艇の発着場は高台にあるから遠くまで見えただけだった」

「だから歩くって聞いたんだよ私」

キャノは驚いた様に言葉を返す。

「歩く以外に他に何かあった?」

「魅高の町の方が近かったから、そこで馬車を借りるとか」

「魅高の町?」

「そう発着場の直ぐ傍。国境の町と反対側にあったでしょ?」

「あった?」

「国境の町の方しか見てなかった」

「そうか。飛行艇に隠れてたから見えなかったかも。飛行艇の後ろ側に町があったんだよ」

「嘘! 聞いてないよ!」

「いや……飛行艇の窓から見えてたとえ思ったから言わなかったんだけど……」

「私は考え事してて見てなかったけどペコルは見えた?」

「私も考え事しててカリナに到着したって言われるまで外見てなかった。リンは?」

「え? 見えたけど……」

「それなら何で言ってくれなかったの!」

「2人とも冒険者ならって……歩くって言うから」

「そうだったかも……」

「もう済んだ事は仕方ない。リャルル達の泊まってる宿を探そう」

「そうだね。それじゃこの町に詳しい私の知り合いに聞くね?」

「あの白獅子族の人?」

「そう。ピオネ」

そう話していると町の中心部からこっちに走って来る白狐族の女性がいた。

「ペコル!」

「ユキ!」

ペコルは名前を呼ばれ手を振る。

「どこ行ってたの!」

「ええと……魔法で眠らされて大風の屋敷に……」

「大風の屋敷! それって国の反対側だよ!」

「うん。飛行艇に乗せられて連れてかれたから」

「飛行艇……」

「うん。それで頼みがあるんだけど」

「頼み?」

「リンの家族、リャルル達の泊まってる宿を知りたくて」

ペコルの言葉にユキと呼ばれた白狐族の女性は私を見る。

「リャルル達って黒猫族と魔族と赤ちゃんの3人だよね?」

「そう! 知ってるの!」

「まあ……」

「どこにいるの?」

「どこだろう……」

「どこだろうって町の宿のどこかにいるでしょ?」

「それが……追い掛けて行ったの」

「追い掛けた?」

「そう。アナタ達を……と言うか娘さんのリンちゃんを」

「リンを! それで……何で……どうやって……」

「落ち着いてペコル。アナタ達の馬車が魅高の町の方へと向かったって知って追い掛けて行って、高台の飛行艇の発着場で乗り捨てられた馬車を見付けたらしくて、魅高の町で飛行艇の飛んで行った方角を聞いて回って西に向かったそうよ」

「そんな……」

ユキとペコルの話を私は横で聞いているしかなかった。


「ここでウダウダ言ってても仕方ない。追い掛けましょう!」

私の隣でペコル達の話を聞いていたフリザが言う。

「うん……でも獣人族の白兎族の私と黒猫族のリンが魔人国を横断してまたあの風大領まで行ける?」

「行くしかないでしょ! リン、リンは行くわよね?」

「うん」

フリザは私の目を真っ直ぐに見て聞いてくれ、私はそれに頷く。

「それじゃ直ぐ出発しよう。早ければ早いだけ早く追いつける! まず馬車を確保して、後は食料と……」

「それは私が用意するわ。ラムメェに頼んでくるから少し待ってて」

そう言ってユキは町の絵本の国側の方へと走って行った。


「ねえ、その風大領までの旅に私も一緒に行っても良いかな?」

「キャノ?」

「私……ミカ様に言われて、もう昔の英雄カールの末裔としての使命に囚われなくていいって……だから私も冒険に出る! それで最初の冒険はその切っ掛けになったみんなの役に立ちたいと思う! どうかな?」

「私は良いわよ」

「うん私も勿論」

フリザと私がキャノに返事を返しペコルを見る。

「私?」

ペコルは自分に集まった視線に困惑していた。

「当たり前でしょ。ペコルも私達の仲間なんだから。勿論、一緒に行くわよね?」

「…………当たり前でしょ。私はリンの護衛なんだから! リンが行くなら私も行くわよ! それに私にはなんだから分からないけど、リンを誰かと出会わせる使命も有るらしいしね!」

「そうだってね。それじゃ少し待ってて。私、実家に行ってミカ様と会って言われた事を話してくる。そして冒険者になるって言ってくる!」

キャノはそう言うと急ぐ様に走って行ってしまった。


「キャノとユキが来るまで買い物でもする? 長旅になるだろうから必要な物も買わないと」

「お金はあるの?」

私の言葉に2人は顔を見合わせて慌てる。

「「私のお金、馬車の中に置きっ放なしだ!」」


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