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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
3章 聖人ミカの想い
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聖人ミカの言葉


今、私はカリナの操縦する飛行艇で国境の町を目指している。

あの後何があったのか。それは……



ミカの屋敷を何かの能力で追い出されるとキャノが屋敷の前に立っていた。

「ミカ様との話は終わった?」

「うん」

「それじゃ次は私が面会もらえるのかな?」

「…………」

そう言ってキャノがミカの屋敷の扉をノックする。しかし返事は無い。

「出ないよ? ミカ様は中にいるんだよね?」

「私が中にいた時は……」

「ミカ様。ミカ様! 英雄カールの末裔です!」

「…………」

キャノの声は段々大きくなっていくがミカからの返事は無い。

「鍵とかしてある? 開いてないかな?」

そう言ってキャノは引き戸を横に引っ張った。

カラカラカラ

扉は簡単に横に開く。しかし扉の開いた屋敷の中は私が見たものとは別の部屋だった。


「ミカ様……ミカ様……ミカ様? …………」

最初は恐る恐る顔だけで中を覗き、次に上半身が中に入る。

「ミカ様……」

次に右足。

「ミカ様?」

中に入っている右足をズズっと奧へ滑らせキョロキョロと中を見ている。

「ミカ様……いませんか?」

徐々にそして少しづつキャノの体が屋敷の中に入っていき、残っているのは左足の爪先だけになった。


『左足の爪先だけ外にあるだけって、もう中に入ってるのと同じじゃない?』

私は冷たい目でキャノの後ろ姿を眺めていた。


「何をしてるのぉ?」

私の後ろからカリナの声がする。

「キャッ」

カリナ声に驚いたキャノが玄関から屋敷の中に完全に入ってしまった。

「あっ!」

キャノの残っていた左足の爪先が完全に中に入った瞬間キャノの姿が目の前から消えた。

「ミカ様の許可無く入っちゃったぁ……」

「キャノ……消えたよ! どこに行ったの?」

「ミカ様の屋敷ぃ」

「屋敷?」

「そう。本当の屋敷は誰も知らない場所にるのよぉ。ここはその入り口ぃ」

「勝手に入って大丈夫なの?」

「まぁ……ミカ様も了承したんじゃないかしらぁ。そうでなければ玄関の入り口で転がるだけだからぁ。姿が見えなくなったと言う事はミカ様の魔法でどこかに移動したのよぉ」

「ミカの魔法?」

「私も詳しくは知らないわぁ。ただミカ様は空間を自由に操れる魔法が得意らしいわぁ」

「空間を……操れる。……! ミカが空間を操れるならルシはもしかして時間が操れる? だから加速と減速の……」

この時、私はルシとミカが双子だと考えるとミカが空間ならルシは時間じゃないかと安易に思ってしまっていた。





キャノが戻って来たのは半日後の事だった。

「ミカ様といっぱい話が出来た。これで私の目的も分かったわ! これから私は新たな道に進む! 私は自由よ!」

帰って来たキャノの第一声はそれだった。

「そう……良かったわねぇ」

カリナは何か他に言いたげに短く言葉にする。

「キャノも帰って来たし、もうここに用は無いね。帰ろう」

ペコルがそう言うと

「もう遅い。今からあの階段を上ってとなると真っ暗になってしまう。飛行艇は夜でも飛べるのか?」

フリザがカリナに聞いた。

「飛べない事も無いけどぉ……暗い中を飛ぶのは不安でしょうぅ? どこに飛んでいくか分からないものぉ……ねぇ」

ペコルとフリザに向けてカリナは挑発する様に答える。

「じゃあ、明日の朝一で出発。リンもそれで良いか?」

「うん。私は……それで良い」

「何かあるのか?」

「あの……またあの朝ご飯みたいな料理が食べたいなって……」

「ああ、あの初めて見る料理か。味は悪くなかったからな」

「分かったぁ。ミカ様に頼んでみるわぁ」

そう言うとカリナは部屋の隅にある昔ながらの黒電話の様な物で誰かと話し始めた。


こうして私達は日本式の夕食を食べ眠りに着いた。





翌朝、目を覚ますと既にみんなの帰る準備は整っている。

私は特に何か準備も無く、また前の日と同じ様な日本式の朝食をみんなで食べられて満足出来た。



「今日こそ帰るよ」

「待って!」

ペコルの言葉と同時に声がした。

「ミカ様?」

「みんなにそれぞれ話があるの。リン、交換条件忘れないでね」

「うん」

私は静かに頷く。


「キャノ、獣人族との大きな争いはもう起こらないわ。だからあの町にカールの子孫は騎士として留まらなくても良いの。昨日話した通り自由にして良いのよ」

「はい!」


「ペコルだったかしら? 兎族の……白兎族なのに青色……アナタは特別な……そう選ばれし者よ。特別な使命があるわ。リンをある人に引き合わせる使命。それがアナタが青毛になった理由」

「私の青毛に意味がある?」

「そう。青い事に意味がある。その内分かるわ」

「…………」


「フリザ。アナタはエルフの森の改革者。アナタなら今のエルフが変わる切っ掛けになれるわ。このままではこの世界からエルフはいなくなってしまう。それを止めるの」

「……はい。考えてみます」


「最後にカリナ。もうミールの罪に囚われる必要は無いのよ。私もカリナを利用してしまっていたけど、これからは自分の人生を歩みなさい。これは私から自由になるだけじゃ無く、母親や他のミールの子孫達からも。意味は分かるわね? 人族と魔族の未来を背負わなくて良い。それは私とルシが考える仕事だから」

「はい」

カリナの目には光るものが見えた。


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