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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
2章 私が跡取り?
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連れ去り


フリザはあれから口を開かない。

「ねぇぇねぇぇ~秘密教えてぇ? エルフの秘密ぅ」

カリナにしつこく言われても無視を決めた様に押し黙る。


「じゃあぁ……リンちゃん、何か知ってそうだけどぉ? ねぇお姉さんにぃ~話してみようかぁ?」

急に話を振られ私の心臓がドキッとする。


「やめなよ! それより自分の話をしたら? アナタ本当に何者? 飛行艇を操縦出来るなんて、なかなかいないはずよ」

キャノがカリナに聞く。

「私ぃ? 私は元軍人。だからこの制服ぅ」

「軍人? 魔族の魔王国直属の精鋭って言われてる、あの?」

「そうよぉ。私こう見えてもエリートなのぉ」

「見えない……」

フリザがボソッと呟く。

「本当ぉ? 美し過ぎてかしらぁ?」


「それより、どのくらいで国境の町に着く?」

ペコルがカリナの言葉を無視して到着時間を聞いた。

「そうねぇ……」

カリナの惚けた口調にキャノとフリザが窓の外を見る。

「……これ、どこに向かっている? 街道が見えないわよ?」

「本当だ。方角が違う! 国境は東なのに今向かっているのは……南よ! 南に向かって飛んでいるわ!」

「あーぁバレちゃったぁ」

そう言ってカリナは右目を隠す眼帯に手をやる。

「させないわ!」

フリザの魔法が私達4人とカリナの間に放たれ氷の壁が出来る。

「ちょっとぉ! 私の飛行艇がぁ!」

氷の壁の向こうからカリナの声が聞こえる。

「進路を戻しなさい!」

キャノが叫ぶ。

「ダメェ~」

「ダメって……飛行艇の壁を壊すわよ!」

「そんな事をしたら皆死ぬわよぉ」

「風魔法で飛ぶから平気よ!」

「止めた方が良いと思うけどぉ? ここがどこか分かってる?」

「ここ?」

フリザがもう一度窓の外を覗く。キャノは外を見ずに何かに気付いた顔になった。

「街道から外れて南に向かってるって言ったわよね。それじゃ魔物が出るわ! それも南なら空を飛ぶ羽根の生えた魔物……風魔法で飛びながらでは空を飛ぶ魔物の相手は難しいわよ!」

「そうよぉ。その通りぃ~。だから大人しく乗っててねぇ」

「目的は何?」

私はつい何となくそう言ってしまう。

「目的ぃ……目的は魔王の生まれ変わりの確保かしらぁ」

「魔王の生まれ変わり?」

「リンちゃん、アナタ魔王の生まれ変わりでしょうぅ?」

カリナの言葉に他のみんなが驚く中でキャノの目だけがキッと細められていた。











☆十数時間前。


「起きてぇ。到着したわよぉ」

私は奇妙な女の声で目を覚ます。


「……ここは?」

「風大領よぉ」

「風大領?」

「そぉ」

「それって魔族の国?」

「そうよぉ」

「何で……」

まだボーッとする目で横を向く。

「キャノ? ……窓? 何? ここ……」

私の横にキャノが眠っていて反対側には窓があり、銀色の半円形の屋根に包まれた少し狭い空間の椅子に座らされていた。

「ここは私の飛行艇ぃ」

「飛行艇?」


『飛行艇って……どんな物? 前世でもゲームの中でしか知らない言葉だけど』


「空を飛ぶ乗り物ぉ……」

「ん……っ」

後ろから気配を感じ振り返るとフリザと目があった。フリザの隣にはまだ眠ったままのペコルがいる。

「フリザ」

「リン……ここは」

「やはりエルフですねぇ。魔法耐性が強くて目が覚めるのも早いぃ」

「私達に何をした!」

「少し眠ってもらっただけですぅ」

「……リン無事か?」

「うん」

「逃げるぞ!」

そう言うとフリザは私の服の背中を引っ張っり横のペコルの腕を掴むと風魔法をカリナに向けて放つ。

パリンと音が鳴りカリナの指輪に填まった宝石の1つが砕ける。

「これぇ高いんですよぉ。もおぅ、飛行艇から降りたいなら言ってくれれば良いのにぃ。今ぁ、扉を開けますからぁ」

そう言ってカリナはキャノの横の壁に手をかざす。


ガガガガと音が鳴ってキャノとその後ろのペコルの席の横の壁が開いた。

「どうぞぉ~」

カリナが一足先にピョンと降りる。それを見てフリザがカリナの降りた地面を確認し、私は開かれた扉から外を見た。


『森の中……の広場?』

そこは木々を切り倒して作った様な周りを木に囲まれた場所。少し離れた場所に馬車が停まっていてその先は道になっている様に見える。


「迎えの馬車も来ていますねぇ。急ぎますよぉ」

「急ぐ?」

「人を待たせているのでぇ」

「私達を……どこに連れて行くつもりだ」

「着いてからぁ待っている方が説明してくれますぅ。私は連れて来ただけですからぁ。ほらぁ……アナタもそろそろ起きてぇ」

カリナはまだ眠ったままのキャノを揺する。

「うう……うん……はぁぁぁ……よく寝た。ふうーん……」

キャノは欠伸をしてから伸びをする。



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