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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
2章 私が跡取り?
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記憶違い


「盾の騎士カール?」

「そうです。英雄カールです!」

「知ってる?」

私の問いにペコルが首を横に振る。

「カールは人族の英雄の一人。聖人ミカに拾われた孤児の中で特別な能力と使命を与えられて英雄となった者らしいです」

「フリザは詳しいの?」

「いいえ。子供の頃はこの国で育ったので聞いた事がある程度です、私の母は魔族なので。でも少し年の離れた兄がいるので彼から教えてもらいました。彼の母親は人族だったので」

「聖人ミカって双子使徒の妹の方?」

「流石リン、物知りですね。リンがそんな人族の隠している秘密を知っているなんて驚きました! やはり使…っぃて…」

フリザが『使徒』と口を滑らし掛けてペコルに脛を蹴られてしゃがみ込む。


「聖人ミカ様の秘密なんて適当な噂話の嘘ですよ。どこで聞いたか知りませんが変な事を言うのは止めてもらえますか。誰かの記憶違いの戯言の話を聞いたのが英雄と言われた騎士カールの子孫の私だったから許しますが他の人に聞かれないようにして下さいね!」

キャノが目を見開きドスの利いた様な低い声で告げる。

「……はい」

その私達の遣り取りを少し離れた大風の屋敷の門の所から冷たい片目で見るカリナの姿がある。



「屋敷の中に入るわよぅ」

私達に話し掛けて来た時はカリナの目はいつもの様にニコニコしていた。

「でも……」

後ずさりしようとした私の後ろから突風が吹き背中を押す。

「はい、ご案内ぃ」

私の腕をカリナが掴む。そうして屋敷の玄関のドアが開き中から一人の魔族の男性が表れた。


「彼女が僕の孫かな?」

どことなくリャルルに似た魔族の口から発せられた言葉に私もペコルやフリザ、キャノも驚く。

「そうですぅ。母親の方は連れて来られなかったのですがぁ、娘はこの通りぃ」

「母親……確かリャルルと言ったか?」

「そうですぅ」

「孫さえいれば良い。おいで、君は今日から大風家の跡取りだ!」

そう言って魔族の男性が私に手を伸ばした。











☆約2週間前


ペコルとフリザは私の想像より仲良くやっていた。

あの後、2人の必死な形相に後ろを振り返ったダンが馬車の速度を緩めたために直ぐに追い付き馬車の荷台に乗り込んだ。

それから白羊の里で一時の休息を取り、本格的に魔物の出る獅子の里への街道を背負ってる私達は進む。


獅子の里への街道は思いの外順調。それはフリザが加わった事も大きい。

馬車の操縦もダンを入れて3交代、夜の見張りも3交代、休みの日も3交代。一日毎に交代して進む。


そのんな旅の中で私もペコル、フリザの2人と仲良くなった。

夜や昼食の休憩中、ペコルには細剣の使い方を教えてもらい、フリザには魔法を教えてもらう。

それまでダンに習った双剣がメイン武器の戦い方からペコルの細剣で突きを繰り出す戦い方や前後左右上下に跳躍して敵を翻弄する戦い方も取り入れる。フリザには主に氷魔法を中心に習う。特にシーメェの馬車に使ったと言うエルフの氷魔法、半永久凍結状態を造り出す氷魔法は役に立ちそうだ。馬車の荷台の内側にその魔法を掛ける事によって荷台を冷凍車の様に出来るらしい。

「それでお金儲けしたら良いのに」

そう私が言うと

「エルフは魔法をお金儲けに使ってはいけないのです。それがエルフの掟」

「エルフの掟か……それなら仕方ない。エルフじゃない私が覚えて大金持ちになってやるぞ!」

私の宣言にフリザもペコルも苦笑いを浮かべた。


「フフフ、なるほど……良い事聞いたわ。リンがその魔法を習得する前に私が大儲けしてあげる!」

「ちょっと狡い! ……でもお母さんってエルフ魔法も使えるの?」

「いいえ、エルフの魔法は使えないけれども……こうやって氷魔法に減速魔法を合わせて使うと……ほら半永久凍結状態になった」

そう言って近くにあった空き箱の内側に魔法を掛けるの

「凄い! 冷蔵庫みたい!」

「冷蔵庫……そうね冷蔵庫ね。何でこんな簡単な事に気付かなかったんだろう? ……そもそも冷蔵庫って言葉もリンに言われるまで忘れていた……記憶……私の記憶……」

リャルルは『記憶……記憶……』とぶつぶつ口の中で呟くとダルをダンに預け昼休憩の食事も取らずに馬車に戻ってしまう。

「リャルル? 大丈夫か?」

ダンの呼び掛けも耳に入っていない様子だった。

「にゃ~にゃ~」

「よしよし泣き止んで、ダルも心配なのかな? お母さんどうしちゃったのかな? ねぇ、よしよし、よしよし」

ダンはダルをあやしながらリャルルのいる馬車の方を見る。


リャルルの口数が減ったのはこの時からだった。

それからのリャルルはいつも何かを考えている様に見えていた。

この時の私にはリャルルが何を考えていたのか想像も出来なかった。


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