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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
2章 私が跡取り?
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絵本の国から一番遠い場所


「カリナですぅ。客人をお連れしましたぁ」

軍服姿の魔族の女性カリンが屋敷の入口で中の執事に声を掛ける。


「逃げた方が良くない?」

私は手招きで屋敷の門から少し離れた場所に移動して隣のペコルとフリザに小声で話し掛ける。

「逃げるのは構いませんが、その後は?」

「私達は飛行艇で連れて来られたんだよ。私、魔力が無いから飛行艇なんて動かせないよ」

ペコルの言葉で私はフリザを見る。

「無理無理。いくらエルフでも初めて乗った飛行艇なんて操縦出来ません」

「それなら歩き? どこかで馬車を手に入れて……」

私の言葉にフリザが呆れた顔をする。

「ここをどこだと思っているのですか? ここは大風家の屋敷ですよ」

「「うん」」

フリザにそう言われたが私とペコルは『それが?』と言う風な顔をする。

「大風家のあるこの場所は魔王国ルシの中央西側。絵本の国から方角的に言うと一番遠い場所」

「「えっ」」

私とペコルの声が重なる。


「何を話してるの? 私だけ除け者は止めてね」

小声で話す私達3人の話に鎧姿の女騎士が入って来る。

「除け者って言うか……まだキャノとは知り合って間もないから……」

「そうだよ。まだ私達はキャノを信用しきれてない」

「ええ? そうなの?」

私とペコルの言葉にキャノは少し驚いた顔になる。

「私は名前だけは知っていますから信用出来る人物だと分かってはいますが、絵本の国から来た2人はそもそも人族の事は知りませんからね」

「フリザ、キャノって有名人なの?」

「そうですね……キャノがと言うよりキャノの家系が有名ですかね。キャノはあのカール様の子孫です」

そう言われてキャノは誇らしげな表情になる。

「「カール?」」

また私とペコルの声がハモる。

「エヘン。そう! 私は盾の騎士カールの子孫キャノ!」

そう言って一層誇らしげに青銅鎧からはみ出しそうなその発達した大きな胸を張る。











☆約1ヶ月前。


「まあまあ、2人とも」

私は睨み合うペコルとフリザの間に入る。

「リンの護衛は私で十分。魔法なんて必要無い!」

「必要無いじゃなくて使えないでしょ?」

間に入った2歳の私の頭の上で言い合いはヒートアップ。

「じゃあ勝負してみる?」

「勝負? 良いでしょう!」

更にヒートアップしてペコルが腰の細剣に手を、フリザが魔力を手に集める。

「待ちなさい!」

その言葉と共に2人の間に土の壁が出来る。2人の間にいた私は当然その壁の上に持ち上げられた。


「そもそもリンに護衛なんて必要無いから。ペコルはターガツに『どうしても』と頼まれたから。フリザも魔法での護衛なんて私がいるから不必要。2人が勝負するから2人ともここに置いていくわよ!」

リャルルの声が響く。

「にゃにゃ~にゃ~にゃ~」

「ほら! 2人がうるさいからダルが泣いちゃったじゃない! よしよし。うるさい2人はここに置いて馬車に戻りましょうね。リンも行くよ」

「「えー!」」

ペコルとフリザ2人の声が揃う。


『リャルルが大声出したからダルは泣いたんじゃ……』

そう思いつつ私はリャルルの造った土の壁を飛び降りる。勿論、風魔法を使ってフワッと安全に。


「ダン! 馬車を出して!」

リャルルは私が馬車に乗ったのを確認するとダンにそう言った。

「でも……あの2人は?」

「置いてっていいわよ!」

「でも……そうなると馬車を動かすのが俺一人に……」

「いいから行きなさい! もう直ぐ白羊の里でしょ。里に着いたら馬車の操縦者を雇えばいいから」

「うん……」

そう返事をしてダンが馬車を出発させる。


『リャルルって意外と短気?』

そんな事を考えてリャルルを見ていた。

「どうしたの? 私の気が短いと思った? フフ、私、元々気が短いのよ」

「そうなんだ……」

ここでリャルルの声が小さくなる。

「だから魔人族のために国を創ったの」

「リャルルが魔人族の国を創ったの?」

「違うわ。私の双子の妹のミカ」

「妹のミカ? それって私の伯母さん?」

「うーん……違うかな。ミカは私の前の魔王と呼ばれていた時の妹。今のリャルルの妹は……いるのかな? 兄と姉はいたらしいけどね」

「複雑な家族だったんだね……で、その魔人族の国を創ったって人も使徒?」

「そうだよ。聖人ミカ。私が魔王でミカが聖人なんて笑っちゃうわよね」

「何で?」

「だって魔王の時の私を殺させたのはミカだったんだから。でも私が生まれ変わったって事は知らないだろうけどね。知ってたらもう何百年も籠もり人……いや使徒か、籠もり使徒なんてしてないだろうから」

「籠もり使徒?」

「そう。自分の創った分身に私が殺されたって知ってからずっと城の地下に引き籠もってるらしいわよ」


『何百年も引き籠もってるってまだ生きてるの? 使徒って不老不死? いや、昔のリャルルは一度死んでるから不死ではないのか……』



「待ってくださいよ!」

「止まって!」

馬車の遙か後方から声がする。


『あれはどうなってるの? フリザは後ろ向いてる?

背中合わせなのか? ペコルがフリザを背負ってる?』


フリザが風魔法で後ろに風を吹かせ、ペコルがフリザを背負って猛スピードで走って追い掛けて来るのが見えた。




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