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不裏氷フリザ


フリザの父親は魔法研究家のハイエルフだった。

魔法の探究が生涯唯一の目標。エルフの里のある青霧領での研究をし尽くして旅に出た。

最終目的地は魔族の国。

青霧領を出て4つ目の領に真ん中、絵本の国の中央特別領『絵本神殿』に籠もり使徒様の使う魔法を調べ、自分達エルフには使い熟せないものだと理解するのに約10年。

絵本神殿での研究に満足した彼は旅を再開する。


エルフの寿命は長い。なのでその旅もゆっくりしたものだったものだった。


絵本神殿を後にした彼は白山領を通って魔族の国に向かった。途中、猫の里近くに絵本の使徒様の遺跡があると耳にする。

『寄り道も旅の醍醐味』そう思った彼はまた10年を白山領で過ごした。


青霧領を出て約20年。彼はやっと目的地の魔族の国『ルシ』に辿り着いた。


『ルシ』は双子の使徒で魔族を守護したとされた女性の名前。同じ国なのだが人族は自分達の国を『ミカ』と呼んでいる。これは双子の使徒で人族を守護した女性の名前。

その国の首都には1つの壁を挟んで隣り合う城が建っている。隣り合うと言うより本来は1つの城が2つに分かれているだけだった。双子の使徒が喧嘩をした時に城を2つに区切った壁がそのまま残っているのだ。

それから何百年か過ぎ、魔族と人族によって城は互いに改装増築され真ん中の不滅の壁だけが今も昔のまま残っているのだ。


彼は使徒様に挨拶するため最初に魔族側の城を訪ねる。しかし既に魔王と呼ばれていた『ルシ』は放浪の旅に出ていて行方不明。国中を1人で当てもなく彷徨っているのだと言われていた。

次に人族側の城に向かう。そこの主である聖人『ミカ』はもう何年も誰とも会わず独り城の地下に潜っていると噂されていた。

2人の使徒への面会を諦め切れなかった彼はいつか会える時が来るのを願ってそのまま首都で暮らし始める。


それから何年が過ぎたのだろう。彼には家族が出来ていた。

最初の妻は人族。この国に来てから彼の身の回りの世話をしてくれていたメイドの女性。息子も生まれ幸せに暮らしていたがしかし人族の寿命は短い。数十年で別れがやって来てしまう。永遠とも思われるハイエルフの寿命。ハーフエルフとして生まれた息子も大人になり家を巣立っていって、また彼は一人になってしまう。

それからまた何年かが経ち彼は二番目の妻と結婚する。彼女は最初の妻の死後に彼に弟子入りした魔族の女性。共に魔法の研究をしている中で結ばれたのだった。

2人には娘が生まれる。それがフリザだ。


フリザは両親の魔法研究家としての背中をずっと見て育ったためか魔法に強い興味が溢れていた。

両親に魔法を学び、20歳になったフリザはこの国での勉強に満足出来なくなって旅に出る。

『2人を超える魔法使いになる!』

フリザは父親とは反対に絵本の国のエルフの里を目指して旅立った。


フリザの旅は順調で数ヶ月でエルフの里に辿り着き、エルフの魔法を学ぶために父親の親戚の家に居候する事となった。

しかしフリザはエルフの里での暮らしに疎外感を覚える。

居候している家の家族はみんなハイエルフ。ハーフエルフであるフリザとは距離が出来てしまう。

そこで居候している家を出て一人暮らしを始めたのだが、周りのエルフ達も珍しいハーフエルフのフリザとは中々関わろうとしてくれない。魔法の研究も思うように進まない。

『父の魔法を超えるにはここにいてもダメだわ!』


環境を変えるためにフリザはまた旅に出る事にする。

最初は同じ青霧領の竜人の里。しかし基本的に竜人は身体強化の魔法しか使わない。

『…………』

フリザは竜人の魔法への興味が持てず次に他の領へ行く事に。


魔族である母親の資質を受け継いだからか水魔法と氷魔法が得意、そこで海があり寒い地方にある玄海領を目指した。

しかし玄海領はフリザが思っていた所では無かった。玄海領に主に住むのは鱗と甲羅を持つ獣人族、なので全く魔法が使えない。他にはゴブリン族が住んでいるのだが、魔法は殆ど使われていない。一部メイジゴブリンと呼ばれる魔法を使うゴブリンはいたがその魔法は魔族やエルフの血を引くフリザから見ると初歩の初歩の魔法。

『ここでも学ぶ魔法は無いわね……』


次に向かったのは玄海領と反対に暑い朱森領。

『暑い場所での実践訓練で魔法を鍛えるぞ!』

勉強での魔法の上達に限界を感じて、自分の得意な氷魔法を鍛える方向にシフトしたのだった。

朱森領での暮らしも思うようにいかない。

そもそも獣人族は魔族を忌避している。そのためか魔族とのハーフであるフリザに積極的に関わってくれる人がいない。

結局は森に籠もって魔物を狩り魔法の訓練を2年程しただけだった。

偶に魔物狩りで仲良くなったオーク族が戦闘訓練に付き合ってくれる事はあったが、それも魔法を使わない力任せのオーク族とでは大した成果も得られなかった。

『これなら素早い動きのゴブリン族の方が魔法の訓練になるんじゃないかな?』

2年間の魔物狩りで多少のお金も手に入り、フリザは1度実家に帰ろうかと思い始めていた。


『白山領からルシに帰るかな……』

魔物狩りに飽きていたフリザはまた旅に出る。


『そうだ! どうせ通り道だし使徒様の遺跡を見学して帰ろう!』

フリザは絵本の国の中央特別領の神殿と白山領の遺跡を見に行く事にした。

中央特別領の神殿は父親の話通りハーフエルフが使える魔法は無かった。

『白山領の遺跡も同じかな?』

そう思いつつも白山領を旅して猫の里に辿り着く。そこで奇妙な噂が耳に入った。

「魔族が領都で領主の秘書官をしている。その魔族の魔法が凄い」

そんな噂に

『どうせ獣人族から見ての飲魔法でしょ? 大した事無いんじゃない?』

そんな事を考えていたフリザの目の前で人が倒れていた。


『死んでる? 遺跡の中で……何があったんだろう。まあいいか、遺体を氷魔法で凍らせて家族の元に連れて行ってあげようか』


こうしてフリザは犯人と言われている黒猫族の男と鼠族の遺体を領都まで運ぶ手伝いをする事になってしまったのだった。



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