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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
1章 私は何者?
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私の魔法


「生命反応は感じられない……」

リャルルがチタリの体に触れておかしな事を言う。

「生命反応が無い? それは死んでいると言う事か? それなら何故俺はは起き上がって話が出来る!」

「……生命反応は無いが魔力反応はある。これは魔法で動いているのか?」

「何! 本当だ生命反応が無い代わりに魔力反応がある! この魔法は何だ?」

リャルルに続いてフリザもチタリの体に触れる。

「私の娘リンの……絵本の使徒様の魔法……」

「絵本の使徒様の魔法? この娘が使徒様だと? なるほど、それが使徒様の絵本……」

そう言ってフリザは私の手の上の本に触ろうとした。


バチン

フリザの手が絵本に触れた瞬間に弾かれた。

「大丈夫?」

私は心配になってフリザの手を見る。

「何をしたの」

「え……何?……何も……」

私は何が起こったのか解らずリャルルに目を向けた。

「この子はまだ2歳よ。使徒様だとしてもその能力は自覚出来ていないの!」

「そう……2歳か、それはすまない」

リャルルの言葉にフリザは素直に謝る。


「そんな事はどうでもいい! 俺はどうなる! 俺は生きてるのか? それとも死んだのか?」

チタリが叫んだ。

「魔力が少しづつ減ってしまっている、この状態は長く続かないと思うわ。持って後……3時間……」

「その後は! 魔力が消えたら俺は……死ぬのか?」

チタリがリャルルの肩を掴んで縋る様な声で聞く。

「そうね……」

「魔力をもう一度……もう一度その魔法を使ってくれ!」

チタリは私に向かって叫ぶ。

「え……うん、……」

私は 先程と同じ様に魔力を絵本に込める。

「…………」

「どうだ、俺の体の魔力は増えたか?」

「ダメ……変わってない。減り続けてる」

「そんな……」

リャルルの言葉にチタリの目から涙が流れた。


「なあ、家族を呼んであげられないから? 今なら話も出来る。お別れの言葉くらい言えると思うけど」

それまで静かだったダンが話し出す。

「そうだな、家族を……チタリの家族を呼んでやれ!」

ゴウケンの言葉にベティが走って訓練場を出て行った。



その後、最後の時をチタリ家族だけで過ごさせるために私達は訓練場から移動する事となった。


「やっぱり俺は使徒様じゃなかったんだな……」

訓練場を出る時に手を縛られていた縄が外されて自由になったダンがそう小さく呟くのが聞こえた気がした。






「今回の殺人容疑を掛けてしまった事を俺から謝らせてくれ」

険しい顔のゴウケンがダンに頭を下げる。

「ああ……」

ダンは不服そうに小さく答える。

「俺からも謝罪する」

領主のターガツも頭を下げる。

「ああ……それで俺はこれまで通り領兵として領主官邸の門番に戻って良いのか?」

「その事なんだけど……私達家族は白獅子の里の国境の町に引っ越します!」

リャルルがダンに宣言する様に言った。

「国境の町に引っ越す?」

「そうなの、リンの……使徒様のお告げでね。絵本に『家族で魔族の国に一番近い町に家族で引っ越せ』って書かれたんだって」

『ダンごめん、嘘なんだけどね』

私は心の中でダンに謝る。

「そう……絵本の使徒様の……リンが使徒様か……俺が使徒様の父親……俺が使徒様の父親? オォー俺が使徒様の父親! そうかそうか、うんうん、そうか……」

ダンの表情が一瞬にして笑顔に代わる。

「「…………」」

嬉しそうな笑顔のダンを見て、その場にいた全ての人達が無言になりダンとは反対に表情が消えた。


『ここにいるみんな……ダンの浮かれた様子に引いてるんだろうな……私の父親なだけでダンに良い事がある訳じゃないのに……それに私が使徒だってのも嘘だし。リャルルはダンにも本当は自分が元使徒だって黙ってるつもりなのかな?』

私は何故か浮かれているダンと澄まし顔なのに笑いをこらえているリャルルを交互に見ていた。







リャルルは領主のターガツに「話がある」と呼ばれていて私とダンだけが先に家へ帰っている。私もダンも我が家に帰るのは久しぶり。

「お父さん」

小さな声で鼻唄まじりで私と手を繋いで歩くダンに呼びかける。

「何だ?」

「浮かれてるみたいだけど、私が使徒だって誰にも言わないでよ。秘密だからね」

「分かってるよ」

「それにしては何で浮かれてるの?」

「それはさ、リンが使徒様なら父親の俺は使徒様の親だろう。それなら無敵だろ!」

「何で無敵?」

「何でって、リンが使徒様なら絵本に願えばお金に困る事も無いだろうし、病気や怪我も予知して回避できるだろう?」

「そんな事出来ないよ。私は絵本を自由に使える訳じゃないんだから」

「そうなのか?」

「そうだよ」

「なんだそうなのか……でも何で白獅子の里なんだ?」

「それは私がもっと魔法を習いたいから」

「魔法を習う? リャルルに教えてもらえば良いだろ? それに絵本で指示があったんじゃなかったのか?」

「それは……絵本にもっと魔法が上手くなりたいなって願ったから」

「ふうぅんそうか……」


私はそれでもまだ鼻唄を歌っているダンに呆れつつ、家に帰ってからの事を考えていた。


『リャルルと話さないといけない事がいっぱいあるな……ダンに本当の話をするのかとか、それと……リャルルが元使徒だって事は前世の記憶があるのかな? 前世の……地球? 日本? この世界の言葉や文字が日本語なのも歴代の使徒が伝えたからだと思うし、そうなるとリャルルも同じ日本人の可能性が高い。私みたいに子供の時に死んでこの世界に来た? それとも大人になってから死んだのかな? リャルルは私は嘘を吐いて使徒だと言っていると思ってるんだろうから、私にも前世の記憶があるって聞いたら驚くかな?』



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