姿を消したアダル
この日もユズの店の料理は美味しかった。
「鳥料理だけじゃなくて卵料理も美味しい!」
「うん……ですよね! 他には何か珍しい料理は無いのですか?」
私の「美味しい!」にベァーテスも頷く。
「珍しいって言われてもねぇ……私には何が珍しい料理なのかぁ分からないからなぁ……」
ユズは困った様に考え込む。
「それよりルーフに用って何?」
「そうだったわぁ。私の弟子ぃのアダルがいなくなってぇ、店も閉めてるらしいのぉ。他の従業員だけじゃぁ店が開けないって今朝ぁ知らせが来てねぇ」
「アダルってルーフの幼馴染みの?」
「そぅ、そのアダルゥ」
ユズとオルエの話に私は疑問を持つ。
「あの! 昨日、私達が朝に領境の町を出る前にアダルの店に挨拶をしに行って弁当を貰ったんです」
「えぇ昨日聞いたわぁ。ソルンが勝手に2つも食べた弁当よねぇ。ソルンはまあまあって言ってたけどぉ、ソルンの『まあまあ』は褒め言葉だからぁ。ウフフゥ」
「いや、そこじゃなくて、昨日の朝までは確かにあの店にいたんですよ? アダルはいついなくなったんですか?」
「ええとぉ……従業員がぁ店に来た時にはもぅ誰もいなかったってぇ……」
「お店は閉まってたんですか?」
「そこまでは聞いてないけどぉ……」
「調味料は私が届けるしなぁ。食材を買いに行ったんなら町にいるだろうし……」
シエルは考え込む。
「食材は毎日決まって配達されるからぁ食材を買いに行ったとも考えられないけどぉ? 何か新しい料理の試作ぅ……とかしててぇ夢中になって時間が過ぎたとかぁ?」
「それはいくら何でも無いでしょう。それに私達がアダルの店を出てから開店時間までは2時間くらいだったはず。その前に従業員が来るとして、その間にいなくなったと考えても時間的に町にいるのでは?」
ガラガラガラ
店の戸が開きルーフがソロッと顔を見せる。
「オルエ? いる?」
「ルーフ!」
シエルが店に入って来たルーフの肩を掴む。
「アダルの幼馴染みだよね?」
「は……はい……?」
「アダルが昨日の朝から領境の町にいなくて店を閉めてるって知らせが来たんだよ!」
やはりシエルの圧は強い。ルーフの肩を掴んで一言毎に体を揺する。
「はぁ……それで?」
「ルーフに何か連絡無い? それかアダルが来たりしてないかって!」
「私には何も……最近はあまり連絡してないので……アダルは私が組織に入ったのが気に入らないみたいだったから……でも、そうじゃないと朱森領からの追っ手から……朱森領からの追っ手! 諦めたのかと思ったのに……ねぇ、領境の町で私達の他に鳥の獣人を見掛けなかった!」
ルーフは自分の発した言葉で2人を追う者の存在を思い出した。




