食べた事の無い肉
「最近……ここ3日間、鳥料理ばかり食べてるよね? たまには別の食べ物も食べたくない?」
クオが私とベァーテスに聞いてくる。
「それってユズの店ではなく別のお勧めの店があるの?」
「何件か。2人が何を食べたいかによるが……それで鳥以外なら何が食べたい?」
「鳥以外……範囲が広いよ。例えばどんな料理の店があるの?」
「そうだね……例えば卵料理の店とか……魚料理の店、熊料理の店に鯨料理の店もあるよ」
鯨料理と言った時はベァーテスの顔を見てニヤリと笑い、鯨料理の店と言った時はオルエの顔を見てニヤリとする。
「鯨料理と魚料理の違いは何ですか? どちらも確か海で捕れると聞いた憶えがありますが……」
「さあ? 大きさなんじゃないか? 多分……」
ベァーテスの疑問にクオは適当に答える。
「魚は卵で生まれる鱗のある生物、鯨は親と近い姿で生まれて乳で育つ生物だ!」
オルエはイライラした口調で呟いた。
「そうですよ。獣人の鯨族はどちらかと言えば私達に近い種族ですから。鯨の肉も牛や豚、羊に近いのでは無いでしょうか」
そう言って私はオルエを見る。ベァーテスも同じ様に視線をオルエに向けた。
「……なぜ私を見る?」
「いや……どんな味なのか知ってるかなっと思って?」
「ハァ……馬とか鮪に近い様な味かな?」
「馬……」
「鮪?」
溜息を吐きながらオルエが口にした説明は馬も鮪も食べた事の無い私とベァーテスには想像がつかなかった。
「食べれば分かるって。それじゃ鯨で良いのね?」
「いやちょっと待って、想像出来ない味なのは……不安」
「それにアンを除け者にする様で……今日は止めておきましょう!」
クオに鯨料理に決められそうになり私とベァーテスはやんわりと断る。
「それじゃ……熊料理?」
「…………」
私はついベァーテスを見てしまう。ベァーテスは口を開けたまま固まってしまった。
「熊も止めておこうか……ここは無難に卵料理で」
私はベァーテスに気を遣いながら無難な卵料理を選択する。
「そう? もっと珍しい料理を食べて貰いたかったんだけどな……分かった卵料理ね。北区の店にしようか。フフフ」
クオはそう少し悪い顔で笑う。
「その店、本当に卵料理なんでしょうね?」
「間違いなく卵料理だよ。信用してよ」
「不安です……」
「待った!」
私達3人がそんな話をしながら北区へ行こうとするとオルエが待ったをかける。




