団子を食べながら
4人の獣人の私達の席は珍しい様で、チラチラとした周りの視線が気になる。
「ハァ……私に何か?」
ルーフがチラチラ見ている1人に目を合わせる。
「いいえ……」
目が合ったその人族は目を伏せる。
「じゃあアンタは?」
次にルーフが別の席の人族に視線を向ける。
「……」
その人は無言で首を横に振り席を立って店から出て行った。
それからルーフはキョロキョロと周りに視線を動かすが、誰ももう私達の方を見てくる人はいなかった。
「人族はまだ私達、獣人族に慣れないんだよね」
「そうだよね。やっと魔族の中では私達の事を知ってる人も増えて変な視線を向けられなくなったけどね」
「本当にやっとね。ハァー」
ルーフとオルエはうんざりとした表情で溜息を吐いた。
「お茶と団子のセットです」
店員が私達の前にお茶と串に刺さった4つの丸い球が皿に盛った物を並べる。
「食べな」
ルーフは私にそう言うと自分の前の皿から串を持ち上げると球の1つを口に咥えた。
私もそれに倣って1つを食べてみる。
モキュモキュと柔らかくも歯ごたえのある物が口の中で感じられる。
「甘塩っぱくて美味し……」
「うん……美味しい!もう一皿……同じ物を!」
向かいの席のベァーテスがモグモグ口を動かしながら団子のお代わりを頼む。
「気に入ってもらえたなら良かった。それで?白山領の獣人が使節団? 本当の目的は何?」
私を見るルーフの目は鋭い。
「本当の目的……本当は…風大領の知り合いに会いに行くのが最初の目的で、父が使節団として私に経験を積ませて白山領の仕事を手伝わせるのに……」
「確か白山領は領主は世襲では無いんだったか? それで政治的に次の領主候補にするための実績作りかな?」
私が説明する途中でルーフが言葉を割り込ませてくる。
「いえ、私は領主にはなれません。白山領の領主は男でないといけないので。なので母は私の弟を次の領主にしたい様で、私はその補佐をと」
「ふーん、面倒くさ。わざわざ争いの種になる様な……」
「白山領は魔人国との戦争の最前線だったために、領主にはその時代で一番の強さが求められたからこその領主の決め方です! 戦争から遠く安全な場所に暮らしている様な気楽な領の者には理解出来ないのでしょうがね」
オルエの言葉にベァーテスが喧嘩を売る様に反論を口にする。
「ハッハハ!」
ルーフは馬鹿にした様に声を大きく空笑いをする。
「フン、自分達の足下しか見えてない視野の狭い奴」
オルエも鼻で笑う。
その2人の態度にベァーテスが席から立ち上がった。
「はい、お代わりの団子」
「…………」
勢いよく立ち上がったベァーテスの前に団子の皿が差し出され、それを受け取ったベァーテスは勢いを削がれた様にそのまま椅子に座る。




