秘密組織のスカウト
ユズの説明ではアンの従姉の桃犬カウヨは秘密組織ナの重要人物になっているらしい。
「彼女は優秀なスカウトですよぉ。特に彼女が連れて来た獣人族の内3人はぁ秘密組織の重要な役職にぃ就いていますからぁ」
「それじゃ……会えそうにないの?」
「どぅ? ソルンならぁ……連絡取れるよねぇ?」
「うん」
「そうなの! それなら早く言ってくれれば……」
「私、知らなかった。知らない事教えられない」
「まあ……そうだよね」
カウヨとの面会の段取りはソルンが明日してくれるとなって私達はユズの店から出た。
ソルンからの連絡はユズからクオに伝えてくれると言う事となり、私達は首都エルでの宿泊先をユズの店からほど近い南区画の宿に決める。
「久々の別々の部屋だ」
この旅が始まってから私達は大体馬車の中か、宿に泊まってもVIP用の部屋が幾つもある大きな部屋にばかり泊まっていて、この宿の様な完全な個室に泊まるのは本当に久しぶりだったりする。
「タリア何かあったら大声で呼んでくださいよ。勿論アンもですからね」
「分かりました」
「うん、多分大丈夫だと思うけど、何かあったら呼ぶよ」
「油断は禁物です。ここは魔人国なのですから。周りには魔族もいるんですよ」
「そうそう、ほらここにも」
そう言ってクオが自分の顔を指で差す。
「そうですよ。油断していると……」
「弁当を取られるからね、ハハハ」
クオがベァーテスを揶揄った。
「…………魔族は嫌いだ!」
そう言い残してベァーテスは自分の部屋に入って行った。
「では私達も……」
それぞれ自分の部屋に入り鍵を掛ける。
『お腹いっぱい……やっぱりアダルの料理の先生の店なだけあるわ。本当に美味しかった。それにしてもあのユズの喋り方? 変わってる……よね? 誰も何も言わなかったから私も聞き流していたけど、ずっと気になってたんだよね……アンやベァーテスは気にならなかったのかな? それにもう1人……あの圧の強い……シエルって人族……ユズにソルンにシエル、それとあと2人。秘密組織や魔族軍の関係者なのでしょうね……』
私はベッドに横になりながら今日聞いたユズの店での話を思い出して眠れなくなっていた。
『明日は少しゆっくり出来るかな? ソルンがカウヨとアンを会わせてくれるってなったけど、ソルンはどこか自由人の様な感じだから……いつ頃になることやら。まあ、のんびり待つのも良いかな?』
そんな事を考えながら朝方になってやっと私はいつの間にか眠れたのだった。




