3人の昔話
ユズの表情と仕草に私とアンはドキッとしてしまう。
「何々? 知り合い? 一緒に飲もう!」
シエルの目がこっちを捉える。
「ええと……聞きたい事があって……」
「聞きたい事? 何々? 私で分かるかな?」
「いや……あの……ユズさんに」
アンはシエルの圧とユズの妖艶さに言葉が辿々しくなっ
てしまっていた。
「アンの……彼女の従姉がこの町にいるのですが、どこに行けば会えるのか知りたくて……この店で聞けば分かると言われていまして」
「その子の従姉ぉ? その耳ぃ……カウヨかしらぁ?」
「そうですカウヨです!」
「あぁ……“ナ”のぉ」
「ナに入ったの!」
シエルが驚いた声を出す。
「彼女の従姉がねぇ」
「何か良くない組織なんですか?」
「良くないと言うかぁ……私達とは合わなかったかなぁ……ツキ様とねぇ……」
「ツキ様?」
「そぅ、闇黄ツキ様ぁ。秘密組織ナの実質的な指導者ぁ」
「名目上は別の人なんだけど、絶対にあの人の言う事が最優先になるでしょ?」
「私は別に嫌じゃ無かった」
「ソルン? そうだったの? じゃあ何で一緒に辞めた?」
「みんなが辞めたから」
「別に辞めなくても……」
「……ソルンの気持ちぃ私は分かる気がするぅ……かなぁ。私もツキ様と意見の合わない事はあったけどぉ……嫌いってまでではなかったかもぉ……シエル達はきらいだったでしょぉ?」
「うん……私は嫌いって言うか嫌だった」
「それ同じ」
「同じだよぉ」
シエルの言葉にソルンとユズがそう返す。
「え! そうかな? 私の中では違うけど。アクヨは嫌いだったみたいだけど、ラコアは私と同じで嫌だったよ」
「嫌いと嫌の違いが私には分からなぃ」
「嫌いはずっとで嫌はその時の気持ちかな? まあそんな感じだよ?」
「じゃあ私は嫌」
「そうだねぇ。私も嫌だったかなぁ? 良いと思う事もあったけどぉ、嫌だと思う事が増えてきてぇ私は辞めたんだよぉ」
「私も同じだな。考え方が合わない時が増えたんだよね」
「アクヨは最初から嫌いって言ってたけどねぇ」
「ツキ様がミカ様を批判していたから」
「そうだったぁ……アクヨはミカ様に育てられたからねぇ。まぁツキ様の気持ちも分かるんだよねぇ、ルシ様が殺されたのはミカ様のせいって部分もあるからぁ……」
「それアクヨの前で言っちゃダメなやつ」
「分かってるぅ」
「あの……それで、カウヨは……?」
3人が昔話で盛り上がり私達の事を忘れている様なので、私はもう一度ユズにカウヨの事を聞く。
「あぁごめんぅん。カウヨねぇ。カウヨは秘密組織ナの重要人物だからなぁ……」
ユズは少し困った顔になる。




