二度目の賄い
アダルの店は今日も盛況だった。
私達も料理を運んだりテーブルを片付けたりと、この日一日閉店まで手伝った。
そして閉店して直ぐ、客がいなくなり私達がホッと一息吐いた時にクオがやって来たのだ。
「やっぱりここにいた。もしかして一日中いたの?」
「店の手伝いをしてたの」
「タダで料理を食べるために?」
「違うよ!」
「それじゃ……賄い料理のためだ!」
「そう言う訳じゃ無いけど、賄いは美味しかった」
「フフフ、そう」
「そう言うクオは今日一日何してたの?」
「私は明日のために首都へすんなり入れる様に根回し」
「根回し?」
「そう、昨日みたいに地下で閉じ込められたくは無いでしょ?そのための事前準備」
「私達のために? ありがとう!」
「まあ……うん……」
クオは私達から顔を背けて照れてなのか、それとも何か他にも目的があるのか分からない返事をする。
「それでは少し遅めのご飯にしましょうか。貴女も良ければ……残り物ですけど」
「ありがたい!」
アダルの言葉にクオは嬉しそうに席に着いた。
「それで……明日は……首都エルに?」
ベァーテスが食べ物を口に運びながらクオに明日の予定を聞く。
「そのつもりだけど。それから口に物を入れながら話すのは止めた方が良いと思うな……」
クオがベァーテスを冷ややかな目で見て答えた。
「そうですか?……明日の予定が気に……なったので……クオの……答えに……よっては……今日が最後……になる……かもしれないので……思い残す……事無く……食べたいですから」
「…………そう」
「では明日は町を出て首都エルへ向かうのですね。首都エルへは半日でしたか?」
「うん、そうだね。タリア達は何か用事は無いの?」
「いえ、特には」
「でも何か用事があったんでしょ?」
「それはもう済んだので……」
「そうなんだ……で? 手掛かりはあった?」
「手掛かり?」
「そう、秘密組織ナの知り合いと会う手掛かり」
「クオ……知ってたのですか?」
「まあね。それなら初めから私に聞いてくれたら良かったのに。私がユズを紹介してあげたのにな」
「ユズ先生と知り合いなんですか?」
「ああ……うん。ユズとは……まあ同じ出身だから」
「そうなのですか? ユズ先生は確か魅高領出身でしたか……」
「違う違う。同じ魔族軍出身って方。私は生まれは雷高領だから」
「ユズ先生も魔族軍だったのですか!」
「まあ……私が魔族軍に入りたての頃、ユズは秘密組織ナの前身の組織のメンバーで雲の上の存在だったけどね」




