朱森領の武家の子供
アダルはここで店を開くまでの話をしてくれた。
「冒険者に憧れた私は幼馴染みと2人で朱森領を出て旅を始めた。最初に目指したのは数年前から噂になっていた絵本の国と魔人国の国境の町。各地から有能な人材を集めてると聞いてワクワクしながら『自分達なら直ぐに活躍出来る……』と思っていた、世間知らずだっただけでしたが」
「アダルさんは赤鷲家の人ですしたよね?」
「そうです」
「赤鷲家と言えば朱森領では朱雀家を支える武家の一つ。その様な方がどうして冒険者などに?」
「貴女は?」
「私は白犬アン。父が白山領の将軍職に就いています」
「白犬家ですか……それで白虎タリアさんの護衛を?」
「いえ……私は……」
「彼女は文官です」
「ハハハ、白犬家の娘が文官?」
「可笑しいですか!」
私はアンが笑われて少しムッとしてしまう。
「別に可笑しくは……彼女が私が冒険者と言ったのを含みのある言い方をしたので……」
「含みのある……私はただどうしてかと思っただけで……いや、どこか冒険者を騎士より下に見ていたのかも……済みません」
アンは自分の発した言葉を反省している様だった。
「いえ、白山領では女性も騎士になれると聞いていたので……」
「そうですね、例外としてですが。それでは貴男は騎士よりなぜ冒険者に?」
「幼馴染みの友人が……朱森領では彼女は騎士になれなかった、だからですかね……」
「幼馴染みの友人も一緒にここで?」
「いいえ、彼女は秘密組織ナに入ってしまいました。彼女は今、そこで幹部になっている様です」
「秘密組織?」
「知りませんか? 魔族軍の創った秘密組織」
「ああ! 噂では。秘密組織ナと言うのですか?」
「ええ。秘密組織ナです」
「なぜ獣人族の貴男の幼馴染みが魔族軍の創った秘密組織に入ったのですか?」
「それでは……先程の話のネタ続きをしましょう。私と幼馴染みのルーフは国境の町で白獅子ピオネと会い自分達の実力を知る事になりました。私はピオネの下で過ごして実力を付けても良いと考えていましたが、ルーフは『それではピオネを超えられない!』そう言いました。同じ獣人族のそれも同じ女性に負けるのが悔しかったのかもしれません。それで『魔人国で修業する!』とこの国に来たのです」
「それで何で鳥料理?」
「ハハハ。それは私が出会った魔族の女性が作った料理に衝撃を受けたからです! 彼女はその料理を『聖人様に教えてもらった』と言いました。魔族が人族の守護使徒様である聖人様にですよ! その時、私は『何で私は獣人族だと言う事に拘っていたのだろう』と思い知ったのです!」




