絵本の国には無い鳥料理の店
「そうだ!」
宿に着いて久しぶりベッドに倒れ込んで、今食べてきた唐揚げの味を思い出し笑顔になっていたが、あの鳥の獣人の顔を思い出し思わず叫んでしまった。
「どうかしましたか?」
3人同部屋の私のとなで同じ様にベッドに倒れ込んだアンが首だけこっちを向いて聞いてくる。
「あの鳥の獣人になぜ魔人国で働いているか聞くのを忘れていた事を今になって思い出しました」
「そうでした! あまりの料理の美味しさに私もすっかり忘れていましたよ」
「また明日も料理を食べに行ける口実にもなって良いんじゃないですか?」
ベァーテスはどこか嬉しそうだ。
「そうですよね。クオなら明日には直ぐにでも首都エルに行くって言いそうだった気もしてたんですよ」
「どうかしら……首都エルはここから半日の場所だと聞きましたよね?」
宿に来る道すがらクオからそう聞いていた。
「……クオってどこまで信用してます?」
アンが真面目なトーンで聞いてくる。
「どこまで……?」
「私達を検問所から出してくれたのは感謝なんですが、結局誰の口利きで助けられたのか分からないままですよ? もし何か後で『借りを返せ』と言われても困りません?」
「私もそれは不安でした。タリアはどうですか?」
「私も確かに不安ではありますが、今更どうこう出来ないでしょ? 用心だけしておきましょうよ。後は……クオを信用するしかありませんしね。それよりアンは従姉とは会えそうですか?」
「それは首都に行ってみない事にはなんとも言えません。アイには絵本の国には無い鳥料理を出す店を見付ける容認派とは言われています……鳥料理!」
「もしかして!」
「ですよね?」
アンと私は今日の鳥料理を思い浮かべていた。
「2人とも何ですか! 私にも説明してくださいよ!」
ベァーテスだけが話に付いて来れていない。
次の日。
この日はクオは別行動をすると1人でどこかへ出掛けてしまい、私達は3人で昨日の店へと向かっていた。
「楽しみですね」
「今日は料理人間夢中になって話を聞くのを忘れない様にしましょうね」
「分かっていますよ」
ベァーテスは1人浮かれていて、アンと私は楽しさ半分仕事半分の気持ちで店を訪れるのだった。




