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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
1章 私は何者?
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タリアの洗礼式


「お待ちしていました。リン様、ダン様」

タリアの言葉にダンが驚く。

「俺に様なんて付けるなよ……付けないでください。背筋が寒くなる」

「では、ダンさん」

「う……まあいいか。それで俺とリンに話って何だ? リャルルだけじゃなく、領主様に領相様、タリア様も」

官邸の入口で待っていたリャルルに案内された部屋は領主の執務室の様だった。部屋の中の顔触れは領主のターガツ、ターガツの娘タリア、それと白狐族の領相、そこにリャルルとダンと私。


「まず前置きの話は私から。リンさんは初対面でしたね。私は白狐アラシ、白山領の領相を務めています。宜しくお願い致します」

白狐族の領相が頭を下げ私に丁寧な挨拶をする。

「リンです……宜しくお願いします」

私も同じ様に頭を下げた。

「では。ダンとリンさんに来て頂いたのはタリア様の洗礼式で起こった不思議な現象の件です」

「不思議な現象?」

ダンが首を傾げる。

「はい。ダンはご自分の洗礼式の時の事は憶えていますか?」

「洗礼式? あぁ、洗礼式の為に白山領で用意された部屋に1人で入って絵本神殿から運ばれて来た使徒様の絵本だとされる本に触れて、本に力を吸い取られる感じがして……気が付いたら体が大人の姿になっていた? まあそんな感じだったと思う」

「私の時も大体同じでした。それはターガツ様や他の獣人族に聞いても大体同じ様です」

アラシの言葉にターガツも頷く。

「だよな? そう言えばリャルルは? リャルルの洗礼式はどうだったんだ? 今まで聞いた事なかった」

「私は洗礼式を受けていない。そもそも人族や魔族は洗礼式は受けないわ。それは亜人族も同じだと思うよ」

「そうだった。知り合いのドワーフも洗礼式は受けてなかった」

ダンは納得した様に頷いてから私を見る。

「どうかした?」

「リンは洗礼式するのかと思ってな」

「リンは魔法が使えるから魔力が体に溜まって死ぬ訳じゃないから洗礼式は必要無いと思っていたんだけど……」


『思ってたって私も洗礼式が必要って事?』

リャルルの口振りから今回呼ばれたのが私の洗礼式に関してなにかと思う。

『でもそれならダンが呼ばれたのは何で? 父親だから?』


「少し話が逸れましたが話を続けても?」

アラシの言葉に私とダンが頷く。

「洗礼式ですが通常だとダンが話した通り魔力を吸い取ってもらって体が大人になり終了なのですが、タリア様は少し違う経験をされたと……」

「ここからは私から話した方が良いのではないでしょうか」

アラシの言葉を遮りタリアが話す。


「そうした方が良い」

これまで黙っていたターガツが今日始めて口を開く。

「ではタリア様どうぞ」

「はい。まず私も1人で部屋に入り洗礼式を受けました。体から魔力が抜ける感覚を感じ……次に何故か声が聞こえたのです」

「声?」

「はい。声は自分が獣人族を創った絵本の使徒だと名乗りました」

「獣人族を創った絵本の使徒! 獣人族を創った使徒様って事は2番目の使徒様!」

ダンが驚きの声を上げる。

「ダンさんは使徒様に詳しいのですね」

「はい。一応は領兵になる前に遺跡調査の冒険者をしていたので」

「それは……もしかしたらリン様では無くダンさん……いや、ダン様が使徒様の話されていた猫なのかもしれませんね」

「使徒様が話された猫? それが俺? どう言う事だ?」

「説明します。使徒様の声は私から『少し新しい使徒の残り香の様な気配がする』と」

「新しい使徒!」

ダンの声が部屋に響く。


「ダン、声を抑えろ。この話はここにいる者しか知らない話だ」

ターガツからダンに注意の言葉が発せられ、ダンは漏れそうな驚きの声を押さえる様に口に手をやり頷く。


「『新しい使徒の絵本がお前の近くにある』と『黒い猫の……』そこまでは聞こえたのですが、洗礼式の部屋に入ってなかなか出て来ない私を心配した絵本神殿の神官が気を失っている私に触れて意識を取り戻してしまったので……」

「それでタリア様の頭に最初に浮かんだのがリンで、その話をターガツ様にしたそうよ」

リャルルがタリアの言葉に続ける。

「それで俺がリャルルに話し、リャルルが最近会った黒猫ならダンの可能性もあるのかもしれないと言ってな」

ターガツがリャルルの言葉に続く。

「リンが産まれた時に絵本なんて無かったから、リンが使徒だとは思えなかったの」

「私はターガツ様がリャルル様に話をした時にその場に同席していたので、この話し合いにも参加させてもらいました。それとこの話を他の者達に聞かれるのは避けた方が良いと進言もしました」

「何でだ?」

アラシの言葉にダンが疑問を口にする。

「ダンもリンさんもリャルル様の関係者……家族です。白山領ではまだリャルル様に対して偏見を持つ者や悪意を持つ者がいます。ですからダンやリンさんが次の使徒様だと知られれば……『新たな魔王が』と言われかねないと判断したのです」

アラシの話は納得するものだった。私は保育園でアイが口にした言葉を思い出していた。


『私は絵本なんて知らない。って事はダンが使徒?』





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