検問所で足止め
結局、私達は検問所で足止めを食らってしまっていた。
そしてなぜかクオは私達を置いて1人で検問所を抜け町に入っていってしまっている。
「あの……私達はなぜ足止めをされているのですか?」
私達が絵本の国の白山領から来た使節団だと言う事は検問所から出て来た男には説明してある。
「申し訳ない。土大領の領主様が亡くなられて、それが殺人の可能性があるらしく土大領から出る者には事情を聞く事になったんだ」
検問所の職員は申し訳無さそうに答える。
「そうですか……ですが私達は獣人族です。そちらの国の領主を殺す理由はありませんよ」
「そうかもしれませんが……決まりなので。ご協力お願いします」
そう言った職員の横を商人が通り過ぎて行く。
「ちょっと! 何であの商人は素通りなの!」
アンが叫んだ。
「あの商隊は領主様が殺された時はまだ土大の町にいなかったので……」
「それなら私達も……」
「いいえ、貴女達は領主様が殺される前に町に到着していたはずですよ?」
「何でそう言い切れるのですか!」
「それは……ほらあの商隊は許可証を持っています。貴女達は許可証がありますか?」
確かに商人の手には許可証の様な物がある。
「どうします?」
「どうと言われても……」
アンにそう問われたが私は現状を打破する考えが何も思いつかない。
『大人しく待っていてもここを通してもらえるか分からない……でも、力尽くで強行突破しても直ぐに捕まりそう……』
その日は結局どうする事も出来ずに私達は検問所の地下にある鍵の掛かった部屋に泊まる事になってしまった。
「明日は出られるでしょうか……」
「抜け出すなら扉を壊しますよ。警備の兵は魔族なので魔法さえ気を付ければ倒せそうです」
ベァーテスが物騒な事を口にする。
「それは一旦待とう。これ以上揉め事が大きくなるのは良くない。強行突破は最後の手段に取っておこう」
「そうですか……」
「でもこうなるとクオは怪しいと思いませんか? もしかして領主を殺したのはクオなんじゃ……」
アンが言う事は私も思っていた。
『クオなら魔法で……クオの得意魔法は雷だって言ってた……雷魔法なら大きな痕を残さずに心臓とかを止めたり出来そう……それに私達を置いて1人だけ逃げてしまった。もしかして私達を犯人に仕立て上げ様としている? もしかしてチュチュさんも共犯者?』
こうして私達は薄暗い部屋で眠れずに朝を迎えるのだった。
『ハァ……久しぶりに宿に泊まれると思ったのに……』
私は心の中で溜息を吐くのだった。




