もう直ぐ首都の検問所
町を出てから数日。
私達は土大領と首都エルとの領境までもう直ぐの所まで来ていた。
ここまでの道程も町や集落なども無い野宿が続く旅立った。最後にベッドに寝られた土大領主館でも、あの出来事で慌ただしい旅立ちだったので、本当に久しぶりにやっとゆっくり出来るだろうと心をウキウキさせている。
「タリア? 何? ニヤニヤして」
「だって、やっと宿に泊まれそうなんですから嬉しいじゃありませんか」
「そうだね。ベッドで寝られるね。もう野宿続きは嫌だよ!」
「そうですよね」
アンも私と同じ気持ちだった様だ。
「そう上手くいくと良いけど……」
クオがポツリとそう呟いた。
「どう言う事?」
「二日くらい前に私達を追い抜いていった魔族がいたの憶えてない?」
「あの速い馬の?」
「そう」
「それがどうかした?」
「あの魔族が土大領の伝令とかじゃ無いと良いなって思ってるだけ」
「伝令だと何かあるの?」
「それが領主が死んだって伝えるためだったら? それも殺しだって知らせるものだったらどうなると思う?」
「どうなるって……」
「どうにもならないでしょ。私達は関係無いんだから。そのためにあんな朝早く出発させられたんだし……ね?」
「そうですよ。アンの言う通り私達は何もしていませんし何も関係ありません」
「……タリア達の言う通りだと良いんだけど。……ちょっと外見たいから」
クオはそう言うと御者台のベァーテスの横に座った。
「何も起きませんよね?」
「大丈夫でしょ……私達はアーガン様が亡くなったと言われている時は誰も部屋から出ていないのですから。疑われる意味が分かりません」
「そうですよね。うんうん。私達には関係無い……」
アンはうんうんと自分を納得させる様に頷いていた。
「クオ!」
御者台のベァーテスが叫んだ。
「どうしたの?」
私とアンが荷台からベァーテスのいる前方を覗く。
「クオが馬車から飛び降りたんです!」
「え!」
荷台の横に着いている窓からクオが外にいるのが見えた。
「止めて!」
「そうですね……」
私の言葉にベァーテスが馬車を止めたが前から声が響く。
「なぜ止まる! 検問だぞ早く来い!」
「ですが……1人……」
「何かあるのか!」
「いや……乗っていた仲間が馬車から飛び降りて……」
「何? 飛び降りた?」
ベァーテスと話していた声の主は明らかに怪しむ様に馬車の横を私達の来た方へ歩いて行く。
「お前達の仲間などどこにもいなかったぞ!」
怒鳴る様な声を張り上げ男が戻って来たが、その隣にはクオがいる。
「クオ?……いや、そのクオ……」
「クオ? 闇紫クオ様がなんだって?」
「闇紫クオ様?」
「クオ様は私達魔王軍の……」
「元ね、元。魔王軍はもう辞めたから」
「それでもクオ様は私の尊敬する憧れの人です!」
そう言って検問所の男はクオにアタマヲ下げた。




