殺人容疑?
「アン、誰が来ているの?」
「この館の執事です」
「そう……私達、疑われるの?」
「そうみたいです。獣人族なので『魔族に恨みが』とか言っていて」
アンから少し事情を聞いて私はベッドから下りた。
考え事をしていて着替えてもいず服は昨日のままだったので私はそのまま隣のリビングルームへと向かった。
「済みません。お待たせしました。白山領使節団の特使をしています白虎タリアです」
「土大領領主館の筆頭執事をしております土岩ゴームレです。お聞きになったかと思いますが、メイドが領主様が亡くなっているのを見付けまして……どうやら殺された様なのです。それで……お客様が昨晩から今朝まで何をしていたのか聞きに来た次第でして……」
「そうでしたか、お悔やみ申し上げます。それで私達の行動と言われましたが、領主様が亡くなられた原因は分かっているのでしょうか? 直接会った訳では無いので何とも言えないのですが、聞いた限りでは相当なお年だと……失礼でしたら申し訳ないのですが寿命や病気だったのでは?」
「はい。確かにその可能性は有るかもしれません、人族や獣人族でしたら。しかし、アーガン様は魔族です。魔族の寿命は魔力が尽きる事で体が維持出来なくならない限り訪れません。これも通常の魔族であればです。ですがアーガン様は魔貴族、それも何人もの魔力を受け継いだこの世で最大の魔力を有していた方です。その魔力が急に尽きるなど考えられない」
「そうなのですね。最大の魔力……それが尽きたはずがないと……」
私がゴームレと話していると部屋の外から声が聞こえてきた。
「何をしているお客様に失礼だ!」
それはチュチュさんの声だった。
「お嬢様。今は渡にお任せ下さい。お嬢様には領民に不安が広がらない様に対処をお願いしたはずです」
「領民が不安になどなるものか。お爺様が亡くなってホッとしているでしょう」
「お嬢様! 何と言う事を……」
「それが民の本音だろう。私もホッとした気持ちが無いとは言えない。それにゴームレは何をしている?こちらの方達は獣人の国からの特使様達だぞ」
「これは……この方達のためでもあるのです。アーガン様が亡くなった時に獣人族が同じ館の中にいたと他の魔貴族達に知られれば疑われるのはこの方達なのですよ」
「そんな考えをするのはこの土大領だけだよ。他の領ではそんな邪推を今はしない」
「まあそうだね。彼女達を疑うと言う事は彼女達を連れて来た私を疑う時言うのと同じだよ? そこのところ分かってる?」
チュチュさんの後ろからクオが部屋に入ってきていた。




