土大領領主の館
「私は魅高領にある国境の町に出来ました中央共和国から来た使者の闇紫クオです」
「お噂は聞いております。闇紫と言いますとあの?」
「まあ、フフフ……」
クオは執事の男の言葉に微笑で返す。
「それはそれは、どうぞ中へ……それでそちらの方は? そちらの方も中央共和国の方ですか?」
土大領主館の執事はそう言って明らかに疑う様な目で私達を見ている。
「私達は絵本の国の白山領から魔人国ルシミカに使節団として来ました。私が特使の白虎タリア。こちらが白犬アン。そして赤熊ベァーテスです。領主様代理の方にお目にかかれればと思いまして……」
私は自己紹介をして執事の顔色を見つつ頭を下げる。
「そうでしたか、獣人族の国から……済みません、勉強不足でして白山領がどの様な場所かまでは分かりませんが、領主代理のチョチョ様にご面会ですね。畏まりました。では中へどうぞ」
そう言うと執事の男は私達を館の中へと招き入れてくれた。
「では獣人族の方達はこちらの部屋で……チョチョ様を呼んで来ます。闇紫様はこちらへ、アーガン様の部屋へお連れします」
「じゃあ私は領主様に挨拶してくるよ。また後でね」
クオは私達にヒラヒラと手を振って執事の後をついて行く。
「どうぞ。お茶でよろしいでしょうか?」
私達が部屋に入るとメイドさんが待っていてお茶の用意をしてくれていた。
「ええ……はいありがとうございます」
「失礼します」
私に続いてアンとベァーテスも部屋に入る。
「どうぞお掛け下さい」
私とアンがソファーに座ると目の前のテーブルにお茶が置かれる。
「「ありがとうございます」」
私とアンがお礼を言う。
「そちらの方もどうぞ」
「私は護衛ですので、ここで……」
ベァーテスはそう言うと私達のソファーの後ろに立った。
「少々お待ち下さい。今、チョチョ様が来ますので」
そう言ってメイドさんは部屋の扉の横に立った。
『気まずい……クオ……早く来て!』
心の中で叫んでしまう。
コンコン
ノックの音がしてメイドさんが扉を開けた。
『クオ?』
そう期待したが入って来たのは黄色い目の魔族だった。
「お待たせしました。土大領の領主代理をしております大土チョチョです」
「白山領から参りました白虎タリアです」
「白犬アンです」
「護衛の赤熊ベァーテスです」
お互いに名乗り合って私の特使としての最初の仕事 “魅高領では挨拶だけだったので”が始まるのだった。




