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異世界に生まれ変わるなら猫  作者: りづ
余章 白虎の娘
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力のある者と無い者


クオの話の通り土大領は魅高領に比べて人族の集落が少ない。いや、少ないと言うより殆ど存在しないと言っていい。

街道沿いに魔物が出る事は無いが、このまま領都の土大の町まで買い物や宿に泊まる事も出来なさそうだった。

魅高領では私達が獣人族だからと少し奇異な目で見られる事もあったが、それでも買い物や宿には泊めてもらえた。

だが、土大領は宿と言うより集落が無いので野宿するしかない。

「買い物はここで買い溜めておいてね」と両領の間の町でクオ言われた意味が分かる。



「本当に人族の集落は一つも無いの?」

「無い事は無いよ……街道沿いから離れた場所にあるだけ」

「それは何で?」

「人族にしたら魔物より魔族の方が厄介だと思うからじゃない? 昔はお金を踏み倒して売り物を持って行ったり宿代を踏み倒したりする魔族もいたから。他の領なら領主が兵士を派遣して取り締まったりするけど土大領はね……」

「取り締まらないって事?」

「逆に『取り締まりに来たんだから食べ物をよこせ!』とか言われた時もあったらしいよ。だから殆どの人族は他の領に移り住んでしまったり、街道沿いから離れた場所に集落を作ったりしたんだ」

「街道沿いから離れた場所に集落を作ってどうしてるの?」

「それは定期的に聖女様が物資を配ってくれているらしいけど」

「聖女様? 聖人様じゃなくて?」

「聖人様は聖人様。聖女様は聖人様の……何だろう? 聖人様が姿を現さなくなってから聖人様の城を守り続けている人の総称みたいな? 聖女様は一人じゃ無いから交代で各地を回って困っている人族を助けているらしいよ」

「『らしい』ってクオは聖女様に会った事は無いの?」

「無い無い。魔族の前には殆ど姿を現さないから。聖女様は街道も使わずフラッと人族の集落に現れるんだって。だから街道で会う事も無いし、集落でも物資を配ったら直ぐに帰ってしまうらしいから」


クオの話から土大領での人族の暮らしはかなり苦しそうに思えた。


『でも、その聖女様って本当は何者なんだろう? 街道を使わないで現れるって魔法か何か使ってる? もしかして聖女様は魔族なのかな?』


「どう思った?」

私は街道沿いで野宿する時にアンとベァーテスに意見を聞いてみる。

「どうですかね……白山領でも白毛族は白毛以外を下に見て商品を奪ったりするでしょ?」

「そんな事ある?」

私とアンはお互いの顔を見て首を傾げる。

「二人は白虎族と白犬族で領都で暮らしていたから見なかっただけですよ。白山領でも田舎に行けば今でも偶にある事ですから」

ベァーテスから白山領の思いもよらない闇の部分の話を聞いてしまった。


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