使節団として
「あの……タリア様では無かったでしょうか。私…名前を間違えて……」
「いえ間違っていませんよ、私はタリアです。どうしてそう思ったのですか?」
「何度も名前を呼んだのにタリアが返事をしないから……」
アンが呆れた様に私に耳打ちで告げる。
その後、考え事をしていて呼ばれたのに気付いていなかった事とクオに誘われて突然訪問してしまった事のお詫びし、来訪目的を話した。
「お互い隣同士ですし、これからはもっと積極的に交流出来たら良いですね」
そうリストさんに言ってもらえて穏やかに面会は終わった。
だが結局のところ、両領の間にある国境の町次第な事とリストさんは領主を娘に譲るつもりなのとで話は持ち越しの様な形になってしまう。
今日は馬車で一度魅高の町に戻ってまた昨日と同じ宿に泊まる。
「白山領も魅高領も中央共和国に参加したら良いのに。それで全て解決! だからタリアの説得に掛かってるんだよ、白山領の未来はね」
宿に着いた途端、クオはそう言って自分の部屋に入っていった。
アンとバァーテスには一度自分の部屋に荷物を置いて、私の部屋に集まってもらう。
「魅高領はどうすると思います?」
アンが椅子に座ると直ぐにそう口にした。バァーテスはなぜかお茶の用意をしてくれている。
「そうですね、リストさんの次の領主になる方次第だと思いますが、多分……中央共和国に参加するのではないでしょうか」
「私もそう思いますが、もう一つの魔族を中心とした組織がどの様なものなのかにもよるでしょうね」
「……その事で一つ気になっているんですが、クオはもう一つの組織と関係無いと思いますか? クオは魔族でそれに元魔族軍です。知り合いの中に繋がりのある人物がいてもおかしくない。そう考えるとクオはもう一つの組織のスパイ……とか……無いでしょうか?」
「あり得ない話ではないですよね……」
「それならどちらでも対応出来る様に心づもりをしておけばいいですよ。それにもう一つの組織とか言う実態が分からないもので悩んでいても仕方ないではないですか? そちらは首都のエルに着いてからアンの従姉と話してそれからでいいでしょう。それよりも次に向かう土大領はどんな場所か気になりますよ」
バァーテスがテーブルの上にお茶を起きながらそう言った。
「多分そこでもクオに領主への挨拶に誘われるでしょうね」
「気分が重い……今度はクオに土大領の領主がどんな人が聞いておきましょう。それと何か手土産になる様なものを用意しませんか。今日は突然だったので手ぶらで行ってしまったのは使節団としては失格だったと思いますよ」
「手土産……」
アンからの手土産と言う提案に私は馬車に積まれている荷物の中から何が手土産に良いかを考えていた。




