地味女と罵られて婚約破棄されましたが、おかげで公爵家の方々からプロポーズされました
「クラリス・マイヤー! 君との婚約は破棄させてもらう!」
「……え?」
「ああ……! こんなことを言わなければならない僕の気持が、君なんかにわかるだろうか……!」
突如として立ち上がり、大仰な身振り手振りで私にそう言ったのは、婚約者のニールセン・オットーだ。
ここは王立貴族学院。昼食時の庭。
二人で食事をしたいなどと珍しい事をいうものだから、手作りのサンドイッチとサラダ。それと塩漬け肉のお料理を持ってきたのだが。
それを芝生の上で広げてる最中、突然の婚約破棄宣言をされた。
もちろん周りには食事を楽しむ生徒が大勢いる。
彼らの注目が集まっている。驚きの表情。そして哀れみの視線を向けて固まっていた。
しかしニールセンの周りにはまるでこのセリフを待っていたかのように女性達がすり寄ってきた。
「ニールセン様。やっと言ってくださった……」「あんな地味女と婚約させられて辛かったことでしょう……」「よくぞ、勇気を出されました。さすがです」
私の婚約破棄を内心ほくそ笑んでいるニールセンの取り巻き達だ。
しかも婚約破棄された私ではなく、可愛そうなのはニールセンだという彼女達。
まあ、今更驚きもしない。
というのも、以前……いや、私と婚約をした時から他に女性がいるのは知っていた。
正直なところニールセンのルックスはごく普通。中の中……いや私的には中の下といったところだ。
ただそれなりに大きな資産を保有するオットー侯爵家は、この王立貴族学院でも力を持っていた。
彼はその力を遠慮なく使って、学院内でも特にきらびやかな女性を囲ってきた。
そんな華やかさを好む彼が私のような特に取り柄のない地味女と婚約をしたのは、当然政略的なものだ。
オットー侯爵家とマイヤー男爵家で共同事業――貿易を始めるらしく、私達に婚約の話が持ち上がったというわけだ。
言うまでもないが、もとより私は彼に対して特別な感情は持ち合わせていない。
だが、問題はそこではない。
「あ、あの……しかし婚約は親同士が決めたこと、そんな簡単に破棄など……」
「ふむ……そう。それが問題なんだ。クラリス」
またしても大げさな仕草で悩み始めた。「うーん。困ったものだ」とわざとらしく声に出して首を振る。
自分で婚約破棄宣言をしておきながら、「困ったものだ」とはどういうことだろう。
ニールセン……いや、この男が何をしたいのか理解出来ない。
「つまり婚約破棄というのは、ニールセン様のご希望ということで、決定ではないということですか?」
「いや、そういう訳では無い」
「はい?」
意味がわからない。
「婚約は破棄させてもらう。僕は君なんかと結婚する気はない! だがそれには理由が必要だ。父を納得させるようなものが…………そうだ、クラリス」
「はい」
「君が婚約を破棄したいと言い出した事にしようじゃないか!」
「……へっ!?」
何を言い出すのかと思えば、すべての責任を私に押し付けようということか。
「そうだ。それがいい。考えてみたまえクラリス。君のような地味で何も持っていない女が、何故私と結婚できると思った? むしろその図々しさが不思議でならない!」
「は、はあ……?」
「この重大さがわかっているのかね! 君は!」
片目を閉じて、人差し指を私に向けてきた。
きっとこの男的には決め顔なのだろう。
「つまり……私の我儘で婚約破棄を申し出たと、お父様に伝えろということですか?」
「素晴らしい。物分りが良くて助かる。その回転の早い頭だけは惜しい。でも女に頭の良さなんて必要ない。華やかさ。見た目が全てだ。だが君にはそれがない、残念な女だ。それに君は裁縫や料理も得意だと言っていたが、そんなもの…………お、おい。ちょっと待て。……まさかここにあるものは君の手料理じゃないだろうなっ!?」
「……はい、今朝作ってまいりましたが……」
「おお、なんてことだ……! 君のような素人が作ったものを、僕に食べさせようとしていたのか……!」
「…………お嫌でしたか?」
「当たり前だ! 僕の口に合うわけがないだろ! そんなこともわからないとは、なんて愚かな女だ! ああ、そうだ。君は弟の面倒もみているらしいじゃないか。まったくそんなものは使用人にでもやらせておけば良いものを! 男爵家といえども貴族。娘に子供の面倒や家事をやらすなんて、まったく君の親はバカなのか? きっと弟もロクでもない人間に育つだろうな! 本当に残念な家だ!
いいかね。むしろ君は私に感謝しなければならない。だってそうだろう? 親同士の取り決めとはいえ、この僕が、このオットー侯爵家の僕がだ。君のような女と一時でも婚約してあげたんだ。その喜びを噛み締めてほしいくらいだ! ……だから、わかるな?」
いままでもうんざりした事は幾度となくあった。
だが今回はどれだけ自己評価が高い男なのかと呆れ返るしか無かった。
しかも女性は見た目が全てだって? 女をバカにしているのか。
この男は鏡を見たことがないのか。とてもそんなことを言えるようなルックスではないのだが。
それに何を言っても許せなかったのは、お父さまや弟の事をバカにしたことだ。
私の事を言うなら許してあげる。
でも大切な家族をここまで言われて、遠慮をする気にはなれなかった。
我慢の限界だった。
だからといって私より爵位の高いこの男に反論するのは、さすがに恐怖が無いわけではなかった。
でも私は勇気を出した。
言葉を喉から絞り出す。
「……ニールセン様」
「なんだ?」
「ご自身でお願いします」
毅然とした態度を作り、ニールセンの目をしっかりと見て私は言った。
直後、ニールセンの目がかっと見開いた。
「な、なんだと!? もう一度言ってみろ!」
「……はい。婚約破棄をしたいならば、ご自身でなんとかしてください」
「ク、クラリス……! ぼ、僕に歯向かうというのか……!」
顔を真っ赤にして、詰め寄ってくる。
狂気の顔が近づいてくる。
でもここで引くことなんて出来ない。
「は、歯向かうも何も……! ニールセン様が婚約破棄をされたいのですよね……!」
「貴様ぁぁっ! 誰に言っている! 僕は由緒あるオットー侯爵家の人間だぞ! 貧乏男爵家のお前なんぞが口答えするなぁぁっ!」
感情を露わにして怒鳴りつけるニールセン。
わなわなと体を震わし、いまにも殴りかかってきそうだ。
しかし、ここは爵位がものを言う王立貴族学院。
侯爵家のニールセン。男爵家の私。
どちらが不利な立場か、言うまでもなかった。
取り巻き女性達も、厳しい視線を向けてくる。
周囲の生徒からも、ニールセンの境遇を憐れむような声が聞こえてくる。
こういう時のニールセンは立ち回りがうまい。
「ああ……! 僕はなんて身勝手な女と婚約をさせられてしまったんだ……! 神よ! 御慈悲を……!」
天を仰ぐ。今度は神すら味方に付けようとしている。
ニールセンは私がうんと言うまで引く気はないらしい。
だが、その神すらも予想出来なかったかも知れない。
私の背後から、女神の如き美しい声が聞こえてきたからだ。
「クラリス。それ、僕が貰っていいかな」
声に振り向くよりも早く、私の顔の横をすっと手が伸びた。
そして声の主はサンドイッチを口に運んだ。
「うん。卵がとてもふんわりしていて、とても優しい味だね」
さらさらの金髪に綺麗な碧眼。細身の長身。
「最高のランチだ。ありがとうクラリス。美味しかった」
「あ、いえ……」
ぺろりと指を舐め、優しく微笑む。
王立貴族学院の歴史に残ると言われる頭脳を持つ、公爵子息ラインバルト・ミューゼン様だった。
一寸の汚れすら許さない美貌が眩しい。
「ラ、ラインバルト……! 何しに来たっ!」
彼の登場に、周囲の生徒がざわめく。
確かに、何故このような場に……。
宝石のようにきめ細やかな美しい手で、エスコートするように私を立ち上がらせた。
「クラリス。今の話すべて聞かせてもらった。君とこの男は婚約破棄をする。あっているね?」
「は、はい……ニールセン様がそうされたいと……。しかし親同士が決めた結婚です。そう簡単には……」
「ふむ。私の調べによれば、君たちの婚約はマイヤー家とオットー家の事業提携によるものだろう?」
「そう聞いておりますが……」
「ならばその理由。僕が作ってあげても良いかな?」
「は、はい……?」
「マイヤー家と我がミューゼン家が事業提携するよう父に進言する。マイヤー家もそのほうが利益があるだろう。それにマイヤー家当主は立派な方だと知っている父だ。きっと快く受けてくれる。これならば君たちの婚約破棄は何も問題ないと思うが?」
突然の申し出に驚き、ただ戸惑う。
しかしラインバルト様は至って冷静だった。
「どうかな? クラリス」
「で、ですが……オットー家がなんと言うか……」
「クラリス。そんなものは君が気にすることではない。婚約破棄をしたいと言い出したのはニールセン。ならば自分でなんとかするのが筋というもの」
「なあ?」とラインバルト様がニールセンを睨みつけた。
その視線は私に向けるものとはまったく違う。冷たい光を帯びている。
「ニールセン。君も侯爵家の子息。発言には義務がある。僕の言っている意味はわかるな」
「……ぅぐっ」
ノブレス・オブリージュ――高貴たるものの義務。
ラインバルト様はそう言っている。
さすのがニールセンであっても、それくらいはわかっているのだろう。つい先程までの態度はどこにいったのか。卑屈に体を小さくしている。
「し、しかし……! あの……っ」
「ん? クラリス。まだ何か問題があるかな?」
「問題と言うか……その……よくわからないのです……。ラインバルト様がなぜその様なご提案をしてくださったのかが……」
そう。なぜラインバルト様ほどの人物が私に良くしてくださるのか。それがわからない。
男女問わず人気が高く、いつも生徒に囲まれているラインバルト様。
廊下ですれ違う時などに遠巻きに挨拶をするくらいしか今まで接点がなかったのだ。
私の名前を覚えていてくれたことすら不思議なほどだ。
だが、その答えはすぐにその艷やかな唇から発せられた。
「…………僕が君の婚約者に立候補したい。理由がそれではダメか?」
あの常に冷静なラインバルト様が頬を赤らめ、私から視線をそらした。
王立貴族学院の頭脳が照れている?
これって……まさか……。いやそんなはずは……。
「ま、また……そんなご冗談を……!」
「冗談などではないっ! 僕は至って真面目だ!」
赤らめた顔に真剣な眼差し。美しい碧眼で私の目をしっかりと見つめてくる。
いくら鈍感な私であっても、この表情から彼の気持を察せないほど愚鈍ではなかった。
「あ、あの……本当に嬉しいお言葉なのですが……。御存知の通り私の家はそれほど裕福な家でもないですし……見ての通りの地味な女です。ラインバルト様と釣り合うはずが……」
「何を言っている! それは僕の言葉だ! 君はこんなクズ男と婚約させられてからも嫌な顔ひとつみせずにずっと我慢してきた。それを僕たちは見てきたんだ! こんなにも奥ゆかしく慎ましい女性は他にみたことがない。そんな素晴らしい女性と僕なんかが釣り合うのかと悩んできた。だがもう遠慮はしない。このチャンスを逃せば一生後悔する。……クラリス! 僕と婚約してほしい! 君がこの貧相極まりない男と婚約をさせられているなんて! もう耐えられない!」
そう言われてふと思い出したように、気づいた。
ニールセンの存在をだ。
ニールセンはラインバルト様の斜め後ろにちょこんと縮こまっていた。まるで怯えた子供のようだ。
気づけば取り巻き達もどこかへ行ってしまっている。
ラインバルト様がこの場に来たことで、ニールセンの存在は全くと言って良いほど掻き消されていた。
私はニールセンを改めて見る。
たしかに……侯爵家と王立貴族学院での力。そのようなラベルがなければなんともつまらない男に思えた。
……いや、違う。
元々つまらない男だったな。
ラインバルト様に視線を戻す。
彼の言った言葉の中で、一つ気になることがあったのだ。
「あの……いま『僕たち』とおっしゃいませんでしたか……?」
「ああ……あいつ等のことか。クラリスには知られたくなかったんだが、まあ無理だろうな…………ほら。さっそくだ。やかましいのが来くる……」
そう言ってラインバルト様は振り向きもせずに親指で後ろを差した。
すると猛然と駆ける男性がそこにいた。
「ラインバルトォ! 抜け駆けはしないと約束していただろうがっ!」
「ほら、うるさいだろう? ああいうのとは婚約しない方がいい。まあニールセンよりは遥かにマシだが」
「ライン! 貴様! こんな貧弱野郎と俺を比べるんじゃねぇ!」
やって来た大柄な男性は鋭い視線でニールセンを捉えて離さない。
ラインバルト様よりも長身。褐色の肌に美しい銀髪を後ろで結いている。
現王立貴族学院において武芸で右に出る者はいない。ジークフリード・ロウゼン様だ。
こちらも公爵家の方である。
「クラリス嬢! 聞いてくれ!」
「は、はい」
「声が大きすぎだジーク」
突如としてジークフリード様が私の前に跪いた。
驚きのあまりに「えっ」と声が漏れ出た。
「ラインバルトがどさくさに紛れて何か言ったかもしれん。だが、こいつよりも俺のほうが強い。だから俺に君を守らせてくれないか」
「あ、あの……守るとは……?」
「っ! こ、これ以上を俺の口から言えというのか……なかなかに手厳しいな!」
「あ、い、いえ……では大丈夫です……」
「くくっ。体ばかりデカくて、気は小さいようだなジーク」
「なっ! 貴様! いま俺をバカにしたのか!」
「俺はちゃんとお伝えしている」
「やはりか! ……くっ……わかった、わかった! クラリス! 聞いてくれ……!」
「は、はい……」
「その、なんだ……!」
「は、はい……」
「つ、つまりだ……!」
「確かに武芸だけは素晴らしいが、やはり気は小さい。クラリス。この男は絶対にやめておいた方がいい」
「うるさい! いま言うから黙ってろ!」
「はいはい。どうせクラリスは俺と婚約するのだがな」
けなし合いながらも、お互いに尊重していることが伝わってくる。
二人の仲の良さが伝わってくる。
「ク、クラリス……俺はずっと君のことを見てきた。正直、ニールセンと婚約が決まったと聞いた時は崩れ落ちるほど悔しかった。だがいまチャンスが巡ってきた。ならば俺も男を見せる。……クラリス! 俺と結婚してくれ!」
「まずは婚約だろ」
「どっちでもいいだろ! いちいちこまけぇなぁ!」
ラインバルト様に続いてジークフリード様からも。
とんでもない事が起こっているというのに、二人の仲の良いやり取りが本当に楽しくて、あんなに張り詰めた緊張の中にいたのが嘘のようだった。
私は笑顔になっていた。ふと笑いが漏れた。
「ふふっ……お二人は仲がよいのですね」
「勘弁してくれ、クラリス。ただの昔なじみってだけなんだ。こんな野蛮なヤツと僕を一緒にしないでほしい」
「そうだぞ、クラリス。こんな頭でっかちな野郎は絶対にやめといた方がいい。昔っからずる賢いことこの上ないんだよ、こいつ」
「それは聞き捨てならないな。頭脳明晰といってくれたまえ。筋肉だるま」
「それは褒め言葉として取っておくぞ、頭でっかち野郎」
「おーーーーーっと、口汚い。彼らは本性が出てくるとこんなものだよ。クラリス」
「え……っ?」
またしても突然の声。
ラインバルト様とはまた違うタイプの美声だった。
鳥のさえずりのように繊細で、まるで音楽を聞いているように流暢な発声。
「うわぁ……一番面倒なのが来たぞ」
「まったくだ。お前らクラリスを見すぎなんだ」
「この場に真っ先に来たお前が言うな。ライン」
彼は小さな弦楽器を持っていた。
藍色の長髪をなびかせて私達3人のところにやってきたのは、公爵子息エルストン・ビテンフルト様だ。
貴族学院の芸術的才能の塊と言われている。
王立貴族学院の有名人であり3公爵家の子息が私の目の前に立っている。
私だけを見ている。
エルストン様はその美声と同じく、流れるような動作で私の傍に来た。
そしてあまりに自然な動きだったので避けることすらできずに、腰に手を回された。
「クラリス。君を愛している。僕と婚約して欲しい。いいね?」
「ひゃ!」
突然の抱擁と愛の告白をされ、変な声が出てしまった。
周囲の視線が凄い……。色々な意味で恥ずかしい……。
でも仕方ないでしょう?
ラインバルト様と並ぶ美貌の持ち主エルストン様。
こちらは中性的な美しさがあり、女性から見ても魅惑的すぎるのだ。
「貴様! 学院内でよくも愛している等と!」
「まったくだ。これだから女癖の悪いヤツは好きじゃないんだ」
ラインバルト様とジークフリード様は、エルストン様を冷ややかな目で罵倒した。
ジークフリード様はどちらかと言えば、喧嘩腰だったが。
しかしエルストン様はまったく意に介さない様子で言う。
「僕が女癖が悪い? ラインバルト。変な勘違いを招く言い方はやめてくれないか。勝手に寄ってくるだけなんだ。だけどクラリス。君だけは僕が射止めたいと思った。誰にも渡したくないと思えた女性は君だけなんだ……。愛している。そう……だからキスしてもいいね?」
「「ふざけるなっっ!!!」」
雰囲気に流されて蕩けそうになっていたが、二人の大きな声にはっと我に返った。
エルストン様と私の間にジークフリード様の逞しい腕が割り込んだ。
「エルストン……いくらお前でも。それ以上は本気で許さんぞ」
「ふん。ラインバルトも言っているが、筋肉だるまのお前に簡単に負けるほど、僕らは弱くはない」
「クラリスの前だ。いい加減にしたまえ君たち。それにどう考えてもクラリスの隣は僕が一番に合っているじゃないか」
「ラインバルト。君のそういう意味不明な自信がどこから来るのか。ずっと不思議だったんだ。そうか。君ってもしかして勉強のしすぎで少し頭がおかしくなってしまったのか? もう少し遊ぶことも覚えた方がいい。でないとクラリスが退屈してしまう」
「ほう、エルストン……僕とジークを敵に回すつもりか?」
「待てライン。俺はお前と仲間のつもりはない」
「ふん、どのみちクラリスと婚約できるのはこの中の誰か一人だけ……」
エルストン様がそう言うと、3人は私を見た。
そして突如、ぴしりと背を伸ばす。
そこには先程までのふざけた雰囲気はない。
公爵家の人間らしい威厳。それと覚悟を決めたような表情。
3人は私の前で甲斐甲斐しく片膝を突き、手を差し出した。
「僕と婚約してください」
「俺と結婚してください」
「君を幸せにできるのは僕だけだ」
一斉のプロポーズ。
「え、ええ………っ」
なんで私なんかを……と、ただ戸惑うしかない。
しかし三人は膝を突いたまま、私からの回答を待っている。
こんなのすぐに答えられるわけないのに……。
どうすれば……と困り果てている最中、ふと視線の端にニールセンの姿が映った。
泥棒のようなこそこそとした動きで三人の後ろを去っていく。
……ああ。そういえばこの男。まだいたんですね。
もう、忘れておりました。
<了>
お読みいただき、ありがとうございました。
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