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第3話 ランカー達

アブダクションから帰還した自分とユリクリウスを待っていたのは、さきほどクエストを受注した際、クエスト受注カウンターにいる人だった。ゲームだとどこの鯖のどこのブロックでも同じNPCだが、流石に現実となると同じNPCというわけじゃないからロビー毎に受付嬢は違って来る。しかしそれでも可愛い女の子が受付嬢をしているので、目の前で土下座されると困惑する。陰キャは美少女と対面するのも辛いのだ。


「ごめんなさい!他の船団から情報を仕入れていれば……!」

「他の船団って……同じようなことが起きたんですか?」

「はい。おそらく全ての船団で、地球の方々の1組目はアブダクションが起きました」


どうやらあのアブダクション、全ての船団のトップバッターが遭遇したようで生還したのは30組中3組だけらしい。あれ、猛者達が集まる1鯖でトップバッターが自分達だったというのは意外だな。あ、1鯖の1位チームは全員でVR任務受けたのね……。それならアブダクションは100%発生しないね……。


というかよく考えてみれば戦闘技能を試すのにわざわざクエストを受けに行く必要性はなかったな。簡単な任務でもアブダクションに遭遇すれば危険度は一気に跳ね上がるという意識さえあれば、自分達もVR空間で訓練する選択肢を選んでいた。


ついでにどの鯖でも2組目からはクエスト受注を止めることが出来たようなので、1鯖の被害者は自分とユリクリウスだけである。今回の事件での死者の名前も教えられるが、他鯖の対戦経験のあるランカーが何人も死んでいた。


……このタイミングで慌てることもなく「探索任務で腕鳴らししよーぜ」とかいうやつは、大抵がサービス終了間際までプレイしていた人間だろう。特に鯖対抗戦で活躍していた8鯖の椛さん、11鯖のブラッドさんは自分以上の廃課金勢で凄いプレイ動画を動画投稿サイトに何本も上げていたので、亡くなっていたのはショックだ。


[黒猫:『幼女同盟』のメンバーは全員チームルームに集合!集まれー!]


なおそんなショックはお構いなしに我らのチームリーダー黒猫がメールで招集をかける。速攻で集まれとのことなので、謝罪を受けるのもそこそこにチームルームまで移動。地味に受付嬢からお金を貰えたのは嬉しい。


……というか幼女同盟ってチーム名、リアルだとヤバくないですかね?これでFUO2最強鯖である1鯖の2位チームなのは問題だと思うよ。


さて、FUO2ではチームという、100人までが所属できる団体がある。チーム全員でチームの泉を育てたり、週末にはチーム対抗戦で他鯖の人と戦ったりする。このチーム対抗戦に出場できるのは1チーム12人と少ないが、幼女同盟のチーム人数は19人なので大した問題じゃなかったりする。報酬しょっぱいし。


ちなみにチーム対抗戦は、勝つ度にレートが増え、強い所と当たるようになるのに報酬は変わらない糞仕様である。お蔭で我ら幼女同盟は1鯖の最大規模にして最強のチーム「ふおにの森1」と同時間帯に参加申請をしないというルールまで出来た。1とナンバリングしてあることからわかるようにふおにの森2がある。ついでに3もある。


合計チームメンバーが250人とかいう頭おかしい戦力を誇るが、大半が無課金だし、チーム対抗戦は12人同士の戦いなので直接対戦の戦績は1勝2敗と1回勝てている。しかしここで負け越したせいで、うちは永遠の2番手が確定した。


チーム対抗戦全サーバーランキング

1位 2690ポイント サーバー1 ふおにの森1

2位 2680ポイント サーバー1 幼女同盟

3位 2385ポイント サーバー1 ふおにの森2

4位 2310ポイント サーバー3 無能艦隊

5位 2300ポイント サーバー11 †Bloody Wings†


……改めてチーム対抗戦のランキングを見ると酷いな。森、幼女、無能が並んでいるよ。というかブラッドさんが死んだってことは、サーバー11って1位チームのチームリーダーが逝ってる?マジであのアブダクションは何だったんだ。


ブラッドさんは昨今の課金勢がユニットを万能型1つに纏めようとしているのに対し、確か特化型の装備をきちんと3種類作っていたんだよね。DPSは全鯖トップクラスだったはずなので、恐らくアブダクションには1人で連れ去られたんじゃないかなぁ……?


色々と考えるのは後回しにして、一旦チームルームへと移動。おおう、完全な温泉宿と化している。しかもほぼ全員がバスタオルか水着という、こいつ等ゲームが現実になった実感ないのかよという光景が広がる。


「お、来た来た。TS転生し損ねたお2人さん、今どんな気持ち?」

「いやむしろ男キャラで良かったよ。クロワッサンは……まあありじゃない?」

「何がありなのか詳しく話をしようか?」


その中央にいるのは、キャラクター名が黒猫なのに、白髪で白い猫耳を付けている白肌の女の子。恐らく元男。というかTwitterで顔写真まで載せているのを見てるので間違いなく男。自キャラが白ビキニでロビーを走り回る姿を見て抜いたという逸話はあまりにも有名でチーム内外にも知れ渡っている変態。ついでに装備とPSも変態。


「アブダクションから1ペロもせずに生還とか相変わらずカチ勢は頭おかしいな」

「その話出回っているんです?タキオン船団なら隠しそうなものだけど」

「いや、3鯖のキリタ君が色々と教えてくれたよ」

「どのキリタ君だよ」

「両脇に黒い十字を付けたキリタ君」

「†キリタ†か。確か解析勢だっけ?何であいつはもっとまともなプレイヤー名を付けなかったんだ……」

「クロワッサンがそれ言う?」


チームリーダーの黒猫と話すけど、どうやらアブダクションで1組目が連れ去られた話は既に拡散しているらしい。3鯖のアクアさんが確かアブダクションで生還していたはずだから、そこ経由か。


「……アクアさんってアーチャーだよな?確かソロで生還していたはずだけど何があった?」

「不屈の闘志発動からのネバーギブアップの無敵時間で最終砲回避」

「うわ50%の確率で死んでるやつじゃん。マジで良く生き残ったな」

「ついでにアクアさんはアブダクションクリア時に特殊アイテムの『スロット1:豪運』を獲得したらしいが、お前らは何か拾った?」

「……ユリクリウスが拾ったぞ」

「ちょ、言うのかよ!」

「うるせー。武器枠が2つに増えたとか絶対バレるんだからさっさとゲロれ」


そして黒猫に二刀流のことをユリクリウスが話すと爆笑し始める黒猫。どう見ても薄幸な美少女なのに中身が釣り合ってないからちぐはぐな光景だ。なおこれで面倒見は良い模様。そうじゃなきゃ変態どもは束ねられない。


「これからふおにの森と会談みたいなのするんだけど、お前らは強制参加な。

あとはゼルとABCで5人だな」

「えっやだ」「ここで寝てる」

「ABCは寝るな絶対連れて行くからな元チームリーダー兼大使がサボれると思うな」


集合をかけた最大の理由は、今からふおにの森と話し合いがあるからか。まあ向こうはVR空間で色々と試したみたいだし、こっちはアブダクションに遭遇したり黒猫が他鯖から情報を仕入れたりと少しはこの世界がわかってきたから、情報交換会みたいなものかな。


というわけでふおにの森チームルームへ移動。金色のトロフィーがずらりと並んでいるが、3割程度は銀色である。流石にチーム全体での討伐数ランキングとかでは負けるけど、TAとかはうちも負けていないし勝っているところも多い。


なおこちらのチームルームも温泉宿の模様。まあ1番高額なチームルームで広い&温泉で色々と遊べるとなると上位チームのチームルームは温泉宿固定になるのだろうか。


出迎えてきたのは、ふおにの森のチームリーダーのシャルルさん、サブリーダーの「お兄さん」さん、ふおにの森の圧倒的エースであるライトさん、ふおにの森2のチームリーダーのべロベロスさん、ふおにの森3のチームリーダーのらんらんさんの5人だ。


ふおにの森は、最終的に1鯖のアクティブがほぼ全員集まった。1鯖でまともに機能しているチームはうちとふおにの森ぐらいだ。まあ最終的にアクティブが1万人程度になって、1番人の多い1鯖のアクティブも500人ぐらいだったとすると辻褄は合う。


「ようこそおいで下さいました。ABCさんはお久しぶりですね。ふおにの森のシャルルです」

「相変わらずの姫プだな。

幼女同盟現チームリーダーの黒猫だ。こっちは元チームリーダーのABC。半年ぶりに見た」

「レベル100なのに何故か参加することになったABCです……お久しぶりです……」


シャルルさんと黒猫が対面するけど、黙っていたらめっちゃ絵になる光景だな。シャルルさんは金髪で黒猫さんは白髪という違いはあるけど、根本的にロリ巨乳なのは似ているし。


そして情報共有が始まるが、流石は巨大チームなだけあって情報収集が早い。あくまでもまだ推測段階だが、地球が滅んでいる可能性とか考えたくもなかったよ。


[クロワッサン:ユリクリウスは今の話分かった?]

[ユリクリウス:お、個チャってそのまま使えるのか。まあ聞いた通りだろ。既に地球が滅んでいるほどの、未来に魂を移動させられたって考えだな]

[クロワッサン:ゲーム内アバターを操作しているようで実際にはこの身体を遠隔操作してたって話に繋げるには、それしかないか。シアリーの人員不足の話も胡散臭いんだよな……]

[ユリクリウス:設定上、シアリーになれるのは魔力を使える一部の人間が、厳しい訓練を修了してようやくレベル5の段階だからな]


こちらも情報を出すものの、団長の握っていた3鯖情報以外は既知だった当たりふおにの森のガチ勢感が凄い。


ある程度の情報交換が終わったところで、今後の話に移行する。まずは2組目に誰が行くかという話だ。現状、地球組のクエスト受注はVR空間以外全て停止されている。特に対策もせずに地球組がクエストを受注して、またアブダクションが起こったら、何しているんだという話になるからな。


しかし現状、元々タキオン船団に所属する地球組以外のシアリーは特にアブダクションが起きていないんだよな。そもそもゲームの中でも発生確率0.1%で忘れていた人もいるぐらいの存在。30組同時に発生したこと自体が何かおかしい。


「……まあ、前に進むなら2組目は練度の高いメンバーで行って試すしかない。

こちらから2人、そちらから2人の4人パーティーでどうだ?」

「その2人がユリクリウスさんとクロワさんであれば有り難く申し出を受けますが……お2人はアブダクションで死にかけたとのことですが、再びクエストに行く気はありますか?」

「俺は問題ない」

「自分も行きますよ」


死にかけたけど大丈夫か?みたいなことをシャルルさんが聞いてくるけど、自分は死にかけてないし、自分が死ぬなら恐らく遠からず地球組は全滅の憂き目に遭うから行く以外に選択肢はない。一方で、ユリクリウスが参加するのは意外だった。コイツの性格的にしばらく引き籠るかと思ったのに。


ただこのやり取りだけで、シャルルさんが慕われるのも分かる気がする。時々姫プしてるけど。個人的にも何度かTAで組んだことがあるのでPSが高いことも知っている。自分のことをクロワさん呼びする、珍しい人だ。


「ではこちらからはらんらんさんとライトさんを出します」

「火力2人、回復支援1人、カチ1人。まあ何があってもクロワッサンだけは帰って来るだろ」


しかしまあ、下手すりゃ死ぬという意識がまるでないな。自分も死ぬ気ないけど。どうしてもゲームの延長線上の出来事のように思えてしまうし、初心者達や中級者達は今どうしているのか結構気になる

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