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第12話 初心者

唐突に入って来た人の名前はケルビンさん。うん……どこかで見たことはある名前だ。あ、ちょっと待って、何か思い出せそうな気がする。確かフレンド一覧に居た。


「お久しぶりです信玄先輩!128レべとか意味不明なレベルになってるの何ですかそれ!?」

「……ああ、水野さんか」

「ちょっ、リアルネームは駄目じゃないですか!?」


そして入って来た人から先輩と言われた瞬間、全てを察する。高校時代の部活の後輩の水野さんだ。まあ部活と言っても閑古鳥が鳴いていたボードゲーム部の部室でユリクリウスと2人FUO2をやっていただけなんだけど。


そのボドゲ部で自分達が3年の時に入部した2つ下の学年の後輩が水野さんだ。人に妙なあだ名を付けるのが好きな奴で、自分は苗字が武田だから信玄先輩と呼ばれていた。対になるユリクリウスは苗字が上野だから謙信先輩だったけど『上』しか合ってねーよという。


で、この子も少しFUO2に興味を持ったからちょっと教えたりはしたんだよな。まあ3日で辞めたけど。ついでにすぐ幽霊部員なったけど、それにしては44レべはレベル高くないか……?もしかしてこの世界になってから鍛えたのか……?


「信玄先輩ってふおにの森所属じゃないんですか?128レべなら歓迎されると思うんですけど」

「リアルネームがダメならリアルネームに纏わるあだ名もダメだろ。クロワッサンと呼べ。……この世界でリアルネーム考慮する必要があるのかは謎だが」

「うぐっ、そうですね……。

っと、クロワッサン先輩のチーム名は……幼女同盟?21人しかいないなら辞めてふおにの森に来ましょうよ」

「言っとくけどたぶんふおにの森と幼女同盟がチーム対抗戦で戦ったらうちが勝つぞ」

「え?

いやいや、またまた御冗談を。ふおにの森のライトさんって人、130レべらしいですよ?上位の人みんな凄いレベルだし……1500人以上いる中のトップ12人が21人しかいないようなチームに負けるわけないじゃないですか」

「130なら今日中に抜くぞ。まだチケット一枚も切ってなかったからな。

……養殖は自分も良くないと思ってるからまあ、一回だけ一緒に行ってやるよ」


[コッペパン:誰ですかこの不愉快な女]

[クロワッサン:リアルで知り合いだった子。悪気はないから許してあげて。外見はただの弱小チームだし]


個チャでコッペパンからチャットが飛んでくる辺り、コッペパンにも人格が芽生えたような印象を受ける。これがただのロボットとか信じられないんですけど。ついでにめっちゃ庇って来るの可愛すぎん?


トラブルは起きたけど、サポートロイドとの周回が終わった頃には自身のレベルは132に、コロネは68レべまで上がっていた。超がつく養殖である。ちなみに44レべだったケルビンさんは1回のクエストクリアで46レべになっていたからギリ許容範囲内の養殖だろう。どうせその辺のレベル帯はレベル上げに凄く時間かかるだろうし、PSが追い付かなくなることはないはず。


で、クエスト周回が終わってロビーに戻るとケルビンさんがロビーで自分を待っていた。どうやらユリクリウスがどこにいるか知りたいらしいが、ユリクリウスは……。


[ユリクリウス:クロワッサン様。『ゆるふわロングS:アホ毛付き』の在庫はありますでしょうか]

[クロワッサン:リサイクルチケット20枚]

[ユリクリウス:はー!?……いや過去の取引価格だと適性価格か。というかショップの在庫0だからむしろ超好条件……!ありがとうございます……!]


ついさっきから2体目のサポートロイドのキャラクリを始めたから、今からだとたぶん数時間は会えないかもしれない。下手すりゃ数日は平気で引き籠るぞあいつ。


「ユリクリウスは今取り込み中だし、下手すりゃ数日は連絡取れないな」

「えー、嘘ついてはぐらかそうとしてません?

と、それよりクロワッサン先輩はふおにの森への移籍考えてくれましたか?私、結構戦いの才能あるみたいで「お兄さん」さんから強化対象メンバーに選ばれたんですよ!将来的には一緒のチームで戦いましょうよ」

「あー、「お兄さん」が選抜してるのか。……わりとポンコツだよあの人?」

「ふおにの森のサブマスター様になんてことを!?」


そしてふおにの森への勧誘が止まらないケルビンさん。勘弁してくれ。これ幼女同盟がチーム対抗戦で勝たないとずっと勧誘してくる感じ?いやその前に鯖対抗戦があるわ。その時の談合具合で幼女同盟の影響力が強いことはゲームやってなかった層にも伝わるかな。


[クロワッサン:黒猫ー。鯖対抗戦はどうするんだ?]

[黒猫:うちからは12人、ふおにの森17人、ゆるゆる同盟から1人に決まった。

どしたの?]

[クロワッサン:いや今の40レべ帯に幼女同盟の強さ全然伝わってないからビビった。一応全鯖2位チームだよね?]

[黒猫:内面はともかく、外面はただのヤバイロリコン集団だからなぁ]

[ふわわ:え、内面もただのヤバイロリコン集団だよね?]

[ゼル:その辺は仕方ないだろうね。ふおにの森が頑張って下位層や中位層を育成しているのは知ってるし……まあ、多少下位層や中位層からの知名度が落ちていたとしても上位層はちゃんとうちらの強さ知ってるから大丈夫だよ]


鯖対抗戦の予定について聞くと、いつも通り幼女同盟は12人の枠。TA上位から30人を選出するのが鯖対抗戦なんだけど、走る人を制限してあらかじめ30人選んでおくのが1鯖のここ数年のやり方だ。こうすれば予定外の人が参加することはないし、鯖対抗戦で勝てば鯖全員に報酬が出るからわざわざ邪魔する人もいない。それでもたまに混じって来るけど、そもそも選出される30人のタイムが良いから滅多にないな。


「……鯖対抗戦って知ってる?」

「それぐらいは教えられたので知ってますよ。今週末にあるイベントですし。サーバー代表の30人による、チーム対抗戦を大きくしたやつですよね?」

「それの出場メンバーをふおにの森が決めてるって知ってるか?」

「はい。確かシャルルさんが決めるって言ってたような……?」

「今回、鯖対抗戦30人の枠の中に幼女同盟のメンバーは12人入る。ふおにの森が17/1500に対して、幼女同盟は12/21だな」

「……何となく強いチームだということは分かったんですけど、そのチーム名どうにかならなかったんですか?チーム紹介文も変態っぽいことしか書いてないですし」

「まあ変態しかいないことは否定できない……」


チーム対抗戦と鯖対抗戦は交互に行われるので、鯖のトッププレイヤーは毎週末にイベントがある状態だな。まあチーム対抗戦とは違って鯖対抗戦はライトさんが味方にいるからめっちゃ楽。全部あの人に任せれば良いんじゃないかな?


[クロワッサン:TA早めに走っておくかー]

[黒猫:若干敵の内容変わってるから注意な。ギミックは変わらないから大丈夫だと思うけど]

[ユリクリウス:『レッドサンアイ2』欲しい。誰か持ってない?]

[ふわわ:それ『アニメ絵アイ:赤』で代用出来ない?無課金ガチャの方だからサポートロイドも使用可能になってると思うけど]

[時雨:今ショップにキャラクリ素材全然ないの辛いそうだね]

[黒猫:ああそれと今回の12人は黒猫、ユリクリウス、クロワッサン、ゼル、ハル、HAKU、時雨、めう、ふわわ、アルタイル、ジョーカー、ビートルな。後でメールでも流すわ。ABCはさっさとレベル上げろ]

[ABC:もう経験値ハイブーストクエストのチケットないです……]


今回の12人の選出の中にはABCさんがいないので、1鯖としてガチで最強面子を集めて勝ちに行くのだろう。ケルビンさんには「お兄さん」さんに幼女同盟がどういう同盟か説明受けといでとだけ言って別れて、マイルームに戻る。流石に68レべからは短期間だとなかなか上がらないだろうし、コロネのレベリングは一旦中止。


マイルームに戻ったら、ゼルさんとふわわさんが入室してくる。そしてコロネちゃんを見るなりまた性癖談義が始まった。


[ふわわ:可愛いけどロリ巨乳……]

[ゼル:ロリ巨乳は何人居ても良い……]

[クロワッサン:またロリ巨乳過激派対ロリ巨乳撲滅派の言い争いが始まる……]

[ユリクリウス:言い争いしてる筆頭が中身女子なの草]

[黒猫:今は大体の奴が女子だがな。

何でお前ら男のケツ見ながらゲームプレイしてたの?]

「ユリクリウス:いや格好良さ求めても良いだろ普通……」

「ハル:俺も男にしておけばよかった……!やっぱり相棒が欲しいよう……!」

「クロワッサン:技術進んでるし生やせるんじゃない?」

「黒猫:ロリの身体に生やしたければチームから抜けてくれないか?」

「ハル:いや俺もこの身体に生やしたくはない……」


最近はこの世界にも慣れて来たのか、チャットの下ネタが酷い。いやそれは元からだったか……?まあ大体の人は良い大人だし、一番年齢が低くても高校生なので大丈夫だろう。あ、ジョーカーさんの妹が居た……。


[マルマルさんがチームから抜けました]

「ジョーカー:妹からふおにの森へ行きますとメール来ました……」

「黒猫:妥当。真っ当な感性を持っている人間はこのチームについていけない」

「ゼル:そもそも女子中学生だったんでしょ?そんな子がいる中でロリっ子最高とか言ってたら避けられるわよ」

「クロワッサン:まあふおにの森の方が育成とかもしっかりサポートしてくれるだろうしね」

「ABC:ここは『自分が最強』と思っているプレイヤーが集まってるから育成の手伝いとかはあまりしないよね……」

「ユリクリウス:このぐらいの規模の方が良いというのもある。100人もチームメンバー居たら名前覚えられないし、チャット気軽に出来ない」

「黒猫:今のふおにの森のチームメンバー1569人だぞ。まだまだ加入希望者いっぱいだぞ」

「クロワッサン:この船で生き残ってる地球組、まだ10万人近くいるだろ?これ最終的にチームの規模1万人行くんじゃね?」

「黒猫:行くだろうな。まあただ育成にリソースを割く分は色々と遅れていくと思うぞ」


そして危惧した瞬間にマルマルさんの離脱メッセージが。こういうのって察した時にはだいたい遅かったりするよね。これでまたチームメンバーは20人に戻って、相変わらずの小規模チームである。

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