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番外編 異世人と怪談をしても微妙だと思う

時系列無視の番外編です。

この話を読まなくても、前後の話や本編に影響は有りません。


お盆ということで、怪談話会です。

日本人の怪談を、外国の人に語っても微妙かもしれない。

むしろ、同じ日本でも、住んでいる地域が違えば、微妙かもしれない。

世代が違えば、微妙かもしれない。

共有している常識、それがどれだけ大切か、というお話です。


###########################################


「今日は怪談話をしよう」


僕の提案に、


「かいだんにゃ?上るにゃ?」


ミアが小首を傾げる。


「怪談というのは、怖い話の事だよ」


龍二が補足する。

ミアの世界にはない概念だったかな。


「怖い話を……何故するにゃ?」


「怖いもの見たさって言うか……涼しくなると言うか……」


栗原が、言葉をつまらせながら言う。


「意中の男性に、怖がっているふりをして抱きつくチャンスとかですか?」


模合が言う。

その位置からだと、龍二は遠いですよ。


「何故怖がっているふりをするにゃ?普通に抱きつけば良いにゃ?」


ミアが僕を抱きしめる。

色々当たるからやめい。


「ちょ」

「ミアさん!」


栗原と模合が、ミアを引き離す。


「まあ、ミアは見ていたら良いんじゃないかなー。私達が怖がらせてあげるしー」


杏那がくすくすと笑う。


「だ、誰も参加しないとは言ってませんにゃ!こ、後悔するにゃ!とっておきの、禁断の……禁呪に近い、怖い話があるにゃ!大分卑怯だとは思うけど、仕方ないにゃ!」


超ハードルを上げてきた。


「へー」


杏那が、面白そうな表情を浮かべた。


--


話は、順番に、1人1つずつ披露していく。

僕は、きさらぎ駅の話を。

口裂け女、地元の地名を交えた実話っぽい話、ダンジョンの噂……

龍二の怪談は、頭抜けていて。

僕も、軽く悲鳴を上げた。

平気な顔をしていたのは、ミアだけだ。

杏那も、少し顔色が悪かった。


杏那の話は、それ怪談か、という内容だった。


「実は……私は羽修に、処女を捧げてるよ!」


龍二は驚きの表情。

栗原と模合は恐怖を感じた表情。

ミアは、何故その話、と訝しげな顔。


「いや、確かにびっくりする様な内容だが、悪質な嘘はやめておけ」


龍二がたしなめる様に言う。

怪談特有の、嘘OK的な空気。

本当か嘘か曖昧になるから、効果的という事か。


いや、単なる事実のカミングアウトなんだけどね?


「……というか、何で今ので、兎中が顔色一つ変えない訳?」


「いや……どう反応して良いのか……」


事実だしなあ。


「ふふふ……次は……私の番、にゃ」


今まできょとん、として反応無かったミアが。

不敵な笑みを浮かべる。


異世界の怪談か。

未知の存在。

それが……


どれほどの……


ものか……


ミアが、語り始める。



かつて、神々の大戦があった。

数多の世界で、人類は、卑小な存在。

圧倒的な力を持った、神々に翻弄されるだけの存在だった。


ある時、その均衡が、崩れた。


この世の全ての悪。

悪しき意思、ダンタリアン。

悪魔の中の悪魔であり。

しかし、神であるという説もある、それ。


恐るべきは、その力。

森羅万象を記録する、アカシックレコードへのアクセスができるとされ。

無限の力の持ち主は、卵の殻も割れない力の持ち主になり。

万物を切断する剣は、か弱い糸すら切れなくなり。

魚は空に飛び、鳥は水を泳ぐ。

あらゆるものは書き換えられ、弄ばれる。


全ての神と悪魔は力を合わせ。

幾億の世界が犠牲となり。

ダンタリアンを絶え間なく攻撃。

そして。


最後の世界。

最後の2柱……悪魔ルシファーと、神オーディン。

ダンタリアンを倒した後には、たったそれだけが残った。


最後の世界は、始まりの世界となり。

アカシックレコードからも隔離された、特別な世界となった。


やがて、他の世界が増え始め。

現在に至ると言われている。


ルシファーとオーディンも、互いに戦い、滅び。

旧き神は、全てが滅びた。


しかし



実は



ダンタリアンは、滅びていない。

そんな話が


まことしやか、に



今の世界に、かつての力はない。

団結力はない。


もし今ダンタリアンが復活したら。

その事実を認知すらできないまま。

ただ弄ばれ、そして、全てが無に帰すだろう。



もしかしたら。

貴方は既に、会っているかも知れない。

気づくことすら許されないまま。


ダンタリアンに


ミアの語りが終わって。

うん。


怖くない。


みんな、微妙な表情。


「あれ……怖くない、ですか?」


「ぜんぜん……?」


「えと、ダンタリアン、ダンタリアン」


「えっと、ミアの世界だと、名前を聞いただけで怖いとか?」


杏那が小首を傾げて言う。


「……ですにゃ。名前を言ってはいけないアレ。本来は名前を出すだけで魂の底から凍えさせる怖さが……というか、私も話ながらちょっと漏らしたにゃ」


「……着替えておいで」


激しすぎる捨て身攻撃。

しかし、異世界人には通じなかった。


結局、怖がらせた人が多かった人が勝ちという事で。

龍二が優勝に。


あれだね。

基礎知識というか、常識というか。

そういうのの共有って重要だよね。

怪談には。

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