第16話 封印
「他にどんなのがあるにゃ?」
「見るのが怖いんだよね」
『でしたら、花火大会くらいでしたら、影響も少ないかと』
なるほど。
地域→イベント→花火大会
1,000pt。
いや、明らかにさっき1ptでやらかした事の方が大事件だと思うけれど。
やってみよう。
『花火大会を実施しますか?』
はい/いえす
はい、を押す。
『花火大会を1週間後にスケジュールしました』
「早いな」
「早っ」
「そうにゃ?」
「うん、お祭りって、準備に時間がかかるから。明日議題に上がって承認されて、数か月準備してとかじゃないのかな。規模もあるだろうけど」
「まあ、この地域、そう大きな公園もないし。どこかで打ち上げるのを家から見るとかそんな感じじゃん?」
「そうかもな」
まあ、疲れた。
寝よう。
二度と内政コマンドは使わない。
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「……ねえ、羽修……」
「うん……」
酒溝山遺跡公園。
住んでいる酒溝市の3分の1をしめる、
「どうしたにゃ?」
ミアが不思議そう。
まあ、今日初めて外に出たしね。
「昨日まで、近所にこんなでかい公園無かった」
「にゃ……?」
「昨日のアレで増えたんでしょーね」
杏那が呆れたように言う。
「にゃあ……こんな大きな公園を1晩で作ってしまうとは……」
ミアが呆然と言う。
というか。
「こう、地域に馴染んだ公園になってるし。植生も自然だし……調べたら、昔からあるみたいだから……余程緻密に色々書き換えたか……もしくは……」
「過去を改変したか、よね」
「にゃああ!?」
杏那の言葉に、ミアが驚きの声をあげる。
そりゃそうだ。
物質創造、周辺の意識を書き換え……それと、過去の改変は、別の話だ。
しかも……
「ここ数十年……そんな規模で書き換えたんだと思う」
「羽修……アレは危険過ぎるよ」
「そうだね。アレは今後封印しよう」
迂闊に試すんじゃなかった。
「ねー、羽修。あの湖の真ん中にある山は何にゃ?」
「あれは前方後円墳だな。昔の王様のお墓だ。あれも無かったから、増えた物の1つだな。調べたら、公園の名前の由来らしい」
「にゃー。あんなに大きな墓を作るにゃあ」
ミアが感心した声を出す。
ミアの世界では、大規模な墓は作られなかったのだろうか。
まったく。
たかだか花火大会をするだけで、何て事を……
[花火大会をする為には、大きな場所や動機が必要。その為に、世界が辻褄合わせを起こしたのです。自然な事でしょう?]
自然ではないと思うけど。
[例えば、一介の高校生が、突如凄い量のマナを変換し始めたら、騒ぎになるでしょう。が、偶然にも担当者は見逃したり、他の事に気を取られていたり……たまたま、騒ぎになりません。何か事象が起これば、それを馴染ませるために調整が行われる。世界とはそんなものなのですよ]
……あれ、そういえば、僕ってかなり目立つ事をしていたのでは……?
マナに変換すると直接税金が納められる、つまり、国に把握されてたって事だよね……?
大量の換金もしたし。
あれ……?
[つまり、そういう事です。世界が波風立てないようにする力……辻褄合わせのお陰で、今後も騒がれる事は有りません]
……あれ?
「張り紙見たけど、ここの花火は、毎年有名らしいね。全国から見物に来るってさ」
杏那がぱたぱた戻ってくる。
わーい。
地元が何故か観光地になっていた件。
「花火大会……楽しみだにゃあ。花火を見るのは初めてにゃ」
ミアが嬉しそうに言う。
まあ、楽しんでるから良いか。
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「下着に、服に、パジャマに……ミアは何か欲しいもの無いのか?お金に余裕はあるから、ある程度なら買えるよ?」
「にゃあ……どれも珍しい物ばかりで、欲しくなってしまうにゃあ……」
ミアが目をきらきらさせている。
流石に店のものを片っ端から買われては、家に入り切らない。
[部屋を拡張しますか?]
はい/いえいえ
勿論いいえを押……
「いいえがない!?」
[ばれた]
あぶない……下手にいえいえを押すと、家が増えていたかも知れない。