第14話 暗闇を照らす
「お兄もヘマしないでね?」
「主力になれるかは分からないけど、温存する様にはするにゃあ」
杏那は、僕とミアを護るような配置につく。
「解析」
ミアの魔法で、罠が浮かび上がる。
「さすが聖女です……」
模合が漏らす。
便利だよねー。
「……来るわね」
栗原が前に出る。
栗原の勘は、相当なものだ。
一応、解析の魔法である程度見えているのだけど。
それ以上に早く情報を得ている。
がしゃがしゃ
こちらの存在に気づいて、襲撃に来たのだろう。
レッドボーン。
赤い骸骨……結構上位の魔物だ。
上位ダンジョンの訓練の時に、最下層で出るような敵。
しかも、剣と盾で武装している。
ちなみに、倒しても別に消えないので、剣と盾を奪って使う事もできる。
ただの鉄の剣とかである事が多いが、時々魔剣とか持っているらしい。
武器持ちの敵は、要注意だ。
「……多いな」
敵の数は3体。
龍二と栗原で1体ずつ確保しても、1体余る。
「聖なる矢!」
模合の魔法が発動。
光の矢が、無数にレッドボーンを貫く。
がっ
龍二と栗原が、1体ずつ敵を確保。
切り結ぶ。
ぎっ
模合の魔法を受けたレッドボーンは……まだ動いてる!
凄いスピードで隙間を抜け、模合に迫る!?
ジッ
ミアの放った光が、レッドボーンの額を射抜く。
そのまま、レッドボーンは動かなくなる。
強い……!
ジッ
再びミアが光を放つ。
龍二と栗原が抑えていた2体も、あっさりと倒れる。
「……それが聖女の魔法ですね……聖なるビームでしょうか?」
模合の疑問に、
「いえ、今のはただの、僅かな光にゃ」
光魔法の初歩。
暗闇を照らす、光源の魔法である。
「……そんなディムライトがあるか、です……」
模合が呻く。
結局。
龍二、栗原が前衛。
杏那が中衛。
ミアを邪魔しないように動きつつ。
ミアはとにかくディムライトで敵を撃ち抜く。
そんなミア無双のまま、ダンジョンを踏破した。
迷宮主も、ディムライト数発で死亡。
出てきた装備品は、微妙な品ばかり。
それと、ずっしり重い魔物のコア達。
僕のアイテムボックスに収納し、帰還。
これだけあれば、かなりの額になる筈。
6等分、かな。
僕、ミア、杏那の分は僕がまとめて管理でも良いのだろうか?
今までそう言えば分配とかしてないなあ。
……
「……586ptでした」
「ほう、なかなか稼げたな」
「まあ、そんなもんよね」
「いいお小遣いになりますね」
58万6千円くらい。
確かに、良い稼ぎなんだけど……今までより明らかに少ない!?
いや、むしろ、今までが異常過ぎた。
この差は何だろう?
燃料費は、50ptだったらしい。
明らかに、いつもより少ない。
時間をかけて移動したから?
帰りは一瞬だったけれど。
268ptを僕がもらい、残りを龍二達に分けた。
ミアと杏那の分は、僕がまとめて管理して欲しいと言われた。
というか、2人には、それだけ?的な表情が浮かんでいた。
ですよね。
「……いつもより手応えがなさすぎたので、そんなものかも知れないにゃあ?」
ぽつり、とミアが言い、
「そう?むしろいつもより強く感じたけれど。上位の魔物も多かったし」
杏那が小首を傾げる。
僕も、杏那と同意見だ。
杏那が夕食を作り、みんなで食べた後、解散。
「明日は、休みだから、朝から出かけるよ」
「たっぷり稼ぐにゃ!」
ミアが、ふんす、と気合を入れる。
「違うし。ショッピングに行くよ?ミアの買い物色々しないと!」
杏那が嬉しそうに言う。
「お金はあるからね。ある程度好きなものを買えるよ」
家に入らないような大型の物とかは駄目だけど。
「ショッピング……にゃ?」
「うん。ミアも、フードを被って、頭部を覆えばバレないと思う。絶対にフードをとっちゃだめだよ」
「にゃ……分かったのにゃ」
さてと。
「風呂が沸いたから、入ってしまおう」
「ん、一緒に入る?」
「一人ずつ入るよ」
ミアが、じとーっとみて、
「やっぱり2人は付き合っているにゃ?」
「違うし」
「付き合ってないよ」
ミアは、胡乱気な目で、
「その……お互いに好きではないにゃ?」
「大切な親友だよ?」
杏那。
「好きだよ?」
僕。
「にゃ……その、そういう事する友達、なのにゃ。恋愛感情はないのにゃ」
「うん」
「僕はあるよ?」
「にゃあ!?」
ミアが叫ぶ。