第10話 取り巻き
「日本語の学習は進んでる?」
「翻訳グラスをゲットしたにゃ」
ずるだ。
「えっと……この娘は、異世界の人。猫耳は自前です」
「「「異世界人!?」」」
「にゃあ……私にとっては、皆さんが異世界人だにゃあ」
まあ、そうだね。
ミアに、3人の事を紹介する。
「ミアの事は内緒でお願い」
「……そ、そうだな。うん、秘密にするよ」
「……分かったわ」
「分かりました」
うん、分かってくれた。
「想像はつくだろうけど。異世界のダンジョンを探索中に、ミアに会ったんだ」
むしろ探索前に会ったんだけど。
「実在したんだな……異世界人」
龍二が唸る。
「で、異世界船は、倉庫にある。龍二も知ってる、あの船だよ」
「アーティファクトと言ってたな。縮んだと言ってたけど、さっきは3人乗りと言ってたから、大きくなったのか?」
「うん。マナを消費して、拡張できるみたい」
「……なるほど。マナがあれば、私達も乗れるのね」
「あと15,000マナ程足りないかな」
「「「ぶっ」」」
3人が同時に噴き出す。
まあ、高いよね。
ちなみに、10,000を燃料として確保する前提。
「気軽に手伝える額じゃないな……まあ、かなりかかりそうだけど……気長に待つよ」
龍二が苦笑いする。
いや、もう1回行けば溜まりそうだけどね?
というか、ミアも僕も成長しているから、もっと稼げるんじゃないかな。
「ねえ、ひょっとして……ミアさん……ここに、兎中くんと一緒に住んでるの?」
「妻だから当然にゃん」
「「妻!?」」
栗原と模合が叫ぶ。
この非モテが、的な驚きだ。
「まだ妻じゃないよ」
否定しておく。
「「まだ!!?」」
栗原と模合が、涙目で叫ぶ。
なぜ泣く。
「ふふふ、言質頂いたにゃん」
ミアが嬉しそうだ。
いや、まだって言っても、将来的に嫁にする予定もないからね?
「ぬぬ……この泥棒猫……」
栗原が呻く。
だから泥棒じゃないって。
ん。
「悪い、電話……うん、うん、今龍二達が来ていて、うん、そう、栗原と模合、うん」
電話をいったん離し、
「龍二達、ごはん食べて行くか?」
「ん?いや、その予定は無いかな」
「た、食べるわ!」
「私も!」
まさかの、龍二が断ったのに2人がくいついた。
「龍二も食べて行ったらどうだ?」
「……まあ、栗原と模合も食べるなら……というか、電話の相手、誰だ?」
龍二が不思議そうにする。
「杏耶だよ」
「ああ。なるほど」
「「「杏那って誰!?」」」
栗原、模合、ミアが叫ぶ。
何故ミアまで。
「俺の妹」
龍二が答える。
「ミア、女の子と2人だと勝手が分からないからな。杏那に来てもらうんだ」
「「なるほど……?」」
栗原、模合が、疑問符を浮かべつつ頷く。
「羽修って、杏那と、俺より仲が良いよな……」
龍二が呻く。
まあ、戦友だからね。
「妹さんいたんですね」
模合が驚きつつ言う。
「……仲が悪いけどな。俺は職業に恵まれたけど……あいつは、普通の学校に通っている」
正直、龍二達エリートよりは、杏那の方が親近感がある。
杏那は、ライトファイター。
かなり弱い部類の職業だ。
とは言え、戦闘センスはかなり良い。
能力以上に、実力は高い。
僕も、良く鍛えてもらっている。
ややあって、杏那が帰ってくる。
食材を片手に、もう片手にはスーツケースを持って。
「おまたせー」
「久しぶりだな、杏那……そのスーツケースは何だ?」
「え、きもい。何で妹の持ち物知りたがるの?」
杏那が引いたような目で見る。
まあ、いきなり持ち物検査始めたら、そうなるよね。
「龍二、君は、もう少し女の子の気持ちを考えるべきだと思うよ」
「いやいやいや、違うから!?何で俺がデリカシーないみたいな扱い受けてるの!?」
「そうですよ、山里くんは、なんでスーツケースを持っているかを純粋に聞いたのよ!」
「いきなりスーツケースは持ってこないですよね!」
「うわ、お兄の取り巻きうざぁ……」
「よいしょ具合が半端ないにゃあ」
何故か陣営が真っ二つに割れてしまった。