大自然とおかしな日常新たな出会い。
家の裏の祠から何日過ぎたのか、今考えても夢だったんじゃないかと思う程平和な日々を過ごしていた。婆ちゃんはあれから何も語らない。ただ、淡々と田畑を耕し、無口な婆ちゃんに戻っていた。
糠床を混ぜて野菜を漬け、豆を蒸して味噌を作り、そんな日々は好きだった。
自然の空気や臭いが澄んでいて、生きてる実感がひしひしと伝わる日々が癒しとなっていたからここ最近の出来事に困惑して、疲れていた。
婆ちゃんは普段通りに戻ってくれたから安心していた。あの狐さんに出会ったからどれくらい月日が流れたんたろう。季節は?…特に変わってないか。
さて、今日も1日頑張ろうっと。
「婆ちゃんー!朝ご飯何?」
(あれ?婆ちゃんいつも朝御飯用意してくれてるのにどこに要ったんだろう。)
「婆ちゃーん!遅刻しちゃうよ!ごはーん」
「ぶぇに!いい加減にすろ!いくつになった?いつまでも甘えるんでねぇ!飯くらい自分で、支度するもんだ。婆ちゃんだっていつまでも動けるわけでもねぇんだ!」
(!?なっなんだ?なして怒ってんだべ?ちょっとーお弁当は?もう!ナンだよー。)
「なしてこんなに怒ってるんだ?婆ちゃん!何か私やらかしたかな?」
「そんなんでねぇ!いつまでも甘えんな!」
「なにさ!婆ちゃんいっつも支度してくれてだねーか!もう朝御飯いらない!学校遅刻するけ、行く。」もう、朝から何なのよー!
毎朝風にまとわれ自転をこいでいたが今日は気分が悪い。ここ数日自分だけでは整理できない出来事だけで疲れてるのに婆ちゃんまで!
学校の駐輪場に着いた時、
「紅ちゃんおはよう!今日からよろしくね!あっ!そうだ!お姉さま達も今日から紅ちゃんと一緒だよ!」
(おい、おい、高校生だったんかい。じゃなくて、なんじゃこの状況は…よく考えろ紅よ。また、目をつぶてて開けたら戻れる。)やってみた、でも目の前にいた。
(顔がにやけてきた。狂いそうで。)
「ふっ!ふっ。」
「?紅ちゃん?やだー私の顔そんなにおかしい?失礼だなー。」
「違うわい!まーいいだろう。前をとりあえず開けてくれ。」
「紅様おはようございます。同じクラスです。何があってもお守りいたしますのでよろしくお願い致します。」
姉もかい!まーいい。ちょうじょはどうした?
朝から疲れた。私は気が重かったが教室までのらりくらりと階段を登ってたどり着いた。
(いつになく疲れたー!しかし何で学校にまで現れた?不思議と言うより異常か?)
「おはよう!」教室にいつものように入った。
何も変わってなくて安心した。でも、あの次女クラス一緒だか何か言ってたような…。一緒でもつきまとわなければ問題ないか。
席に着くといつものように外を眺めて自然の風景に癒されていた。チャイムがなり予想通り先生が転校生、つまり次女を連れてきた。
「皆様おはようございます。今日から紅様のおせわを致します竹と申します。宜しくお願い致します。」予想展開すぎるだろう。ため息をついた。
クラスはざわついていたが、清楚な彼女に皆見とれていた。よくある展開。ってか紅様の世話?しかも名前あったんかい!竹。まぁまぁ古風的で似合ってるわね。
「じゃぁ竹さんの席は紅どけろ。紅の席に竹さん座るように。」
「はぁ?先生!私の責任者何故転校生が座るんですか?私はどうなるんですか?」
あーあ。ここの席すごく良かったのに。何で私が移動しなきゃならないのよ。不満だった。
「紅は廊下側に移動!以上!質疑応答なし!」
(うわー本当最悪!何でまた廊下側?しかも後ろだしもうー。竹の奴。事情説明してもらわなきゃ。
)他の姉妹の事情も聞き出したかった。私を守る理由も。婆ちゃんは何も話してくれないし、ある意味チャンスなんだと思った。
休み時間になった。窓側を目指して私は移動した。
いや、しようとした。何か嫌な気を感じた。周りを見回すと時間が止まっていた。
すると、「紅様?逃げようとたくらんでいませんよね?わたくしからは逃げられません。わたくしは紅様をお守りする使命でございます。」
「分かったよー!逃げないよ!もう、何なの?守るとか使命とか何時代だよ!全く。」
しかし私達の時空はどうなってんだ?周りが止まっていた。こういうときは大体何かかおきる前触れだった。小さい時は目の前に雷が落ちたり、足を挫いたり、予感とは違うんたろうけど、とにかく何かの前触れのようだった。高校生になった今もこの体質は変わらないみたい。
「紅様?あまりそのお力はお控え下さい。お体に負担がかかります。」
(あー無意識だったんだ。)ふと、納得した。
いつも体調が良くない時は何かしら不思議な体験をしていたから。それが、自分の力のせいだとは全く思いもよらず、指摘されてすごく気がはれた。
いつも気にはしていたがこんなこと相談できかないし、頭いかれてるとかしか思われないだろうし。
なんだか竹が側にいるのが不思議だけどありがたかった。
「紅様?どうなさいました?ぼーとなさって。わたくし何か気にさわることでも……」
「いや、あんまり急な事が多すぎて、冷静さを失っていたみたいだ。」
なんだか、ほっとしていた。
「さて、妹ちゃんは一年生だよね?クラス見に行くか!」
「あっはい!紅様。妹の教室はこちらです。」
別に確認しなくても良いんだけれど、気になった。
色々あって結局自分も気になってんじゃん!あーそうだよ。とにかくいろんな謎を解いていかなきゃならないし今は姉妹がついてるいじょうは流れに任せなきゃ。と思った。ってか何だかんだ面白いんだよね!さて、妹ちゃんでも見に行くかな!
「紅様おはよう先ほどから何ニヤニヤなさってるのか分かりませんがしっかりお勉強なさいませんとご師匠様にわたくし達が叱られてしまいます。」
「わーかってるからー!それ以上説教したら……」
何か来る!殺気を感じた。外?行かなきゃと思った。私に何か訴えてるような殺気だ。切ない悲しいだけど誰にも言えない抱え込んでるような私にも伝わってきた。(誰だろう…)
早く行かなきゃ!足を一歩踏み出したその瞬間、色白男子君が私をひき止めた。
「紅ちゃん!もう授業だよ。はい座って。」
「ちょっと!行かなきゃならないの!今行かなきゃ!」
「紅ちゃんは勉強しなきゃ!僕が行くよ。紅ちゃんの不安定な気持ちは僕達が解消してあげるよ。だからしっかり勉強してよ!」
(なんだ?あいつは守護霊様だったっけ?あー何故守護霊が見えるのか。まっ、冷静さを失ったら今は生きていけん。私は自然の中に生きる普通の女子高生なんだから!)
イライラして仕方がないが、その前に外に感じる殺気が気になって授業どころではなかった。
席替えで廊下側になってしまい、外の山々の風景も見えないし、雲の流れる様子も分からなくなり、私の楽しみが消えてため息しかでなかった。
脱力感が抜けないまま放課後になり、私を取り囲むようにバックには守護霊様、松(三姉妹長女)竹、(三姉妹次女)梅(三姉妹三女)なんだか豪華メンバーになっていた。長女は無口で常に守護霊の隣に要るから目立たないし私に構いもしないから居るだけで気をつかうが、それより一人での通学がこんなに増えてまっっったく!叫びたい!私は田舎の普通の女子高生。ふっ!紅よ。お前には罪はない。たーすけてー!
守護神様?守護霊様?どっちでも良いが、あの最初に出会った狐が振り向けばニコニコして後ろにいる……。ふっ!まーいいだろう。ワタシは山々と澄んだ空気と夕焼け空をバックに帰宅するんだから。
「婆ちゃんただいまー!」いつものルーティンでお風呂焚きしなきゃね!
しかし、何するにもこの4人が私を囲んでいる。邪魔だ。
そこへ近所のじいちゃんが、婆ちゃんを訪ねできた。
「おー紅やい。婆ちゃんの手伝い毎日偉いな!婆ちゃんいっか?」
……殺気だ!学校と同じ殺気をかんじる。
「紅様!」竹が叫んだ。空がざわめき、雲が早々流れていく。振り向いたらダメだと思った。
「紅様、振り向いて大丈夫です!私達守護神が守りますから!」