①〜心優しき魔の王〜
これは始まりの物語──。
「私は種族の垣根を取り除くのが目的だ。
魔物も動物も精霊も全て皆仲良く過ごす!それが私の目的だ」
「しかし魔王様。人間どもは…」
「あぁ、わかっている。それでも諦めてはならぬ」
魔王と呼ばれる男は大きな玉座に座り、数多くの種族の中心に堂々たる存在のはずがニコニコと優しく微笑んでいた。
「私共はあなた様にいつまでもどんな状況でも御使いいたします。なぁ?」
『おう!!』
リーダー格と思われる魔物が幾千と超える種族に聞くと皆、同じ返事をした。それほど信頼されているという証なのだろうか。
「皆、ありがとう。こんな私についてきてくれて」
「あたりまえですよ。魔王が支配ではなくまさかの統制となると興味しか湧きませんよ」
『そうだ!そうだ!』
「あははははは!そうだな!」
魔王城からは数多くの楽しげな声が聞こえたらしい。
一方、人間のとある国では…。
「勇者はまだ来ないのか?!」
「少々お待ちくだされ!」
こちらの玉座では人間の王がカリカリと苛立ちを見せ、側近の大臣が王様を抑えていた。
すると玉座の間に1人の男が現れた。
「勇者をお探しですか?」
その男の瞳は鋭く見据えていたが、暖かな目をしていた。
「お主は勇者と呼ばれる者か?!」
「はい」
「その証拠はあるのか?!」
そう言われると勇者は背中に装備していた剣を抜いて玉座の間の床に軽く刺し込んだ。
「こ、この!無礼者!玉座の間の床に剣を刺すとはなんと無礼な!そこになお──」
「その剣はもしや霊剣セイティーノではないか?」
『?!』
先ほどまで苛立ちを見せていた王は急激に冷静になり逆に熱くなった大臣は王に止められ、その剣の名を名乗るとその場の空気は凍りついた。
「さすがは王様。詳しいですね」
「ふぅ…。わかった、お主が勇者だということは信じよう。そこで勇者であるお主に頼みごとがある」
「それで、頼み事とは?」
「それはな───」
「?!…わかりました」
勇者は王から聞いた依頼を聞いて内心驚いてしまった。そのとき思ったのは「理不尽な…」ということだったそれほどまでに潰したいのだろうか…。
「では頼んだぞ」
「はい…」
勇者は城を後にした。
「フッ…。これで!…ガハハハハ!」
勇者が去った後の玉座では王が1人で下劣な笑いを響かせていた。
その頃、魔王の城では───
「ま、魔王さまぁぁぁぁ!」
魔王と数多くの種族がいる広間に1匹のドラゴナイトが飛び入ってきた。
そのドラゴナイトの顔色は真っ青になり汗をダラダラと書いていた。
「こらこら、ほら水でも飲んで落ち着きなさい」
「ふっ…はぁ…はぁ…。……ップハァ!」
魔王の魔法によって虚空から出されたカップに入った水を飲み冷静さを取り戻したドラゴナイトは息を落ち着かせた。
「それで、どうした?」
「そ、それが!城の近くまで勇者が来ています!」
『何?!』
『それは誠か?!』
それを聞いた周りの種族は驚きの声を上げていた。
だが、その一方で魔王は冷静でいた。
「皆の者!落ち着け!イフリート…あとは、みんなのことは頼んだぞ?」
「御意…」
「いいか!我は何百年かかろうがまたこの世に君臨する!何度でも!何度でも!だから、この世界のどこへ行っても、転生後の姿でも受け入れてくれ!この肩の傷が目印だ!」
リーダー格であるイフリートは元々、理解していたため素直に受け入れた。話についていけない他の者は訳がわからなかった。
「また、必ず、戻ってくる」
そう言って魔王は城を出て行った。
魔王城の近郊───
勇者が確かにこちらに向かって歩いていた。
魔王は勇者に対して声をかけた。
「いつ以来かな?こうして2人で会うのは」
「雑談はいらない。俺はお前を倒すために来た」
明るく話すが勇者は魔王の話を相手にしなかった。
「ほう、ついにそのときが来たか…。ならば──」
その後、魔王は封印したと勇者が王に報告するとそれは一夜にして世界中に広まった。
その後、魔王の一派にこのような唄が残された。
《紅き月にてかの王は目覚める。全ての種を超え全てをつなぐ。その答え、救世主しか知らず──》
読んでくださりありがとうございます!
続きが出るのでおまちください!