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第96話 国民の虐殺には銃弾の鉄槌を浴びせるまでです

 

「車両隊は負傷者のカバーを行え! 1班と2班は敵軍の掃討を開始せよ!!」


 車両を盾に部隊は銃撃を展開、激しい弾幕が形成された。

 突然のことに亜人の指揮は一気に崩壊し、意気軒昂に突撃してきた者は次々と9ミリ弾や7.92ミリ弾に腹をぶち抜かれた。


 敵の数はおおよそ60〜70。

 半分近くが最初の攻撃で殲滅できたが、さすがは亜人――――――驚異的な身体能力で屋根上を飛び回り始めた。


誘導ホーミング』エンチャントで1体1体を確実に狙うが、これまた通常の小型モンスターと違って拳銃弾では威力不足だった。


「マズい、少佐ッ!!」

「人間共が!! 殺された第1軍団の恨みを今ここで晴らす!! 死に晒せぇッ!!!」


 銃撃をかいくぐった1体が直上へジャンプ、ラインメタル少佐目掛けて爪を振り下ろした。


「――――なッ!?」


 だが、切り裂こうとした亜人の爪はいとも簡単に少佐の手の中で静止。

 文字通りガッチリ握られていたのだ。


「これだから教育のなってない亜人連中は困る......、爪や牙を向ける相手をこうもアッサリ間違えるとは......」


 少佐から俺も吹き飛びそうなほどの魔力が開放され、亜人の鋭利な爪が握りつぶされた。


「――――僕は勇者だ、倒したければ魔王クラスの魔物を呼んでくることだな」


 地面に叩きつけられた亜人は、そのまま脳天をハンドガンで撃ち抜かれる。

 えげつねぇ......、この人だけは敵にしてはいけない。


「おや、亜人くんたちは奥の公園まで引いたようだね。セリカくん」

「はい!」

「"エンピ"をやる、元上位剣士職の力を連中に実感させてやれ」

「了解ッス!」


 スリングに掛けたサブマシンガンを背中へ回し、エンピ――――またの名をスコップを構えるセリカ。


「そういえば元冒険者だったなお前」

「フッフーン、今じゃさらに経験値貯まって"レベル68"まで上がったんスよ。近接ならエルドさんにも負けません」

「そりゃどうかな? 俺だって進化してるんでね」


 魔力をたぎらせ、その身に溢れさせた。


「エンチャント『身体能力強化オリオン』!!」


 ロンドニアで最高幹部エルミナを倒した、圧倒的な身体能力を付与する魔法。

 常人なら10秒ともたず干からび、おまけに発動中他の魔法が一切使えなくなるが、今の俺には全くもって好都合。


 魔力は無限なのだから発動時間は無制限だ!


「総員突撃ッ!!!」


 負傷者のカバーとは別に車両隊が前進、それらを援護する形で俺たちは屋根上から支援にまわる。


「手段は問わん! 神聖な王都を脅かす侵略者共を1匹残らず掃除せよ!! ヤツらに現代の戦争を教えてやれッ!!!」


 屋根上の敵を走りながら射撃する少佐。

 凄まじい動きにも関わらず、的確にヘッドショットを決めていた。


「図に乗るな人間風情がッ!! 選ばれし上位種族たる亜人の鉄槌をくらえ!!!」


 一際大きい建物の上から、複数の敵が属性魔法を撃ち下ろしてきた。


「正面から炸裂魔法!!」

「了解! 横へ待避しろセリカ!!」


身体能力強化オリオン』を解除、同時に俺は防御魔法を発現した。

 爆発で衝撃波が走り、周囲の窓ガラスが割れる。


「よしっ! バカな人間を1人仕留めたぞ!! ――――――って......えっ?」


 勝ち誇った亜人へ、残念でしたと微笑んでやる。

 即席の初期魔法とはいえ、今では対戦車ライフルの直撃にも耐えられる障壁だ。


 たかが炸裂魔法でヒビすら入るわけない。

 そして、愕然とする亜人の後ろに――――暴力がひっそりと降り立った。


「お兄さん、どこ見てるんスか?」

「なっ――――――ぐほぁッ!!?」


 一瞬にして屋根上へ登ったセリカが、手に持つエンピで亜人を殴り飛ばしたのだ。


「こいつッ......!!」

「貴様! よくもサーベルさんを!!」


 他の亜人が一斉に襲いかかるも、見る者全てを魅了するかのようなエンピさばきで亜人たちがねじ伏せられていく。

 あいつ......銃いらねえんじゃないの?


「エルドさん! 下に落ちたヤツを頼みます!!」

「あー了解、任せろ!」


 再び『身体能力強化オリオン』を発動。

 まず俺へ炸裂魔法を放ってきたヤツへ、お返しとばかりに蹴りを打ち込んだ。


「ゴブオッ!!?」


 さらに数体、エンチャントによって底上げされた体術で体格に勝る亜人を殴り飛ばしていく。


「なぜ......、攻撃が通じない。我々は第2軍団の中でも精鋭中の精鋭なのに......」

「やっぱりお前ら魔王軍だったか、じゃあ教えてやる」


 サブマシンガンの弾倉マガジンを入れ替える。


「俺のレベルは"77"だ。拳銃で戦車へ立ち向かうように、お前らじゃいくらやっても俺には勝てない」

「グッ......!!」

「身を置く陣営を間違えたな......、無抵抗の市民を虐殺した貴様らに――――――王国軍は容赦しない」

「だったら――――――やってみろよぉッ!!!」


 亜人が咆哮を上げる。

 それが合図だったのだろう、公園に潜んでいた亜人の集団が車両隊の弾幕を強行突破してきたのだ。


 なんて諦めの悪い連中だろうか......、余計な仕事を増やしてくれる。

 ――――あれを使うか。


 スリングに下げたサブマシンガンを背中へ回し、中折なかおれ式の筒へ40ミリ擲弾てきだんを装填。

 公園を突っ切って突撃してくる亜人へ、グレネードランチャーを発射した。


 放物線を描いて弾は集団のド真ん中へ命中、整った花壇ごと亜人の集団を消し飛ばした。

 これは確かに強いんだが、自分は『炸裂ブラスト』を使えるしどうにもかさばるから次は置いていこう。


 空薬莢を捨てながら、再びサブマシンガンを倒れる亜人へ向ける。


「さて、無抵抗の市民を殺しまくったんだ......。あの世で詫びろ」


 ――――ズダダダダダダダッ――――!!!


 這いつくばる亜人へサブマシンガンの引き金をひく。

 あっという間に目の前の亜人は肉塊と化した。


《あーエルドくん、そっちは片付いたかい?》


 少佐からの無線が入る。


「こちらエルド、散らばっていた亜人は掃討。公園の残党も車両隊が全て倒しました」

《それはなによりだ、ご苦労さん。しかしまだやることが残っている》

「なんですか?」

《これよりアルナ教会王都支部へ向かう、わたしは後から行くから君とセリカくんで先行したまえ》


 無線が終わる。

 アルナ教会......? なぜそんなところに。

 だが命令は命令だ、俺はセリカと共に1度は引き返した教会へ突っ走った。


【グレネードランチャー】

その名のとおり擲弾(爆発する弾)を発射する武器。

非常に高い火力をもっているので、これがあるとめちゃ心強い。


余談※米軍はM203という小銃の下部レールに装着するタイプを使い、我らが陸上自衛隊はこれとは別に小銃擲弾というものを使っているらしいです

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