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第9話 外れスキルも使い方次第

 

「無名の魔導士が、上級者パーティーに喧嘩を売ったこと––––後悔なさい!」


 20人の高位魔導士が一斉に詠唱を開始する。

 さて、残念ながら今は自衛用の武器すら持っていない。

 よって俺が取る行動はたった1つ。


「ヴィザード隊! 焼けッ!」

「闇を切り裂く光となれ!『上位電撃魔法レイドスパーク』!!」


 瞬く閃光。

 魔法学院の試験なら満点は確実であろう攻撃魔法が俺に接近––––発射と同時に着弾した。


 吹き飛ぶ石レンガにすさぶ爆風、きっと連中はこの攻撃で勝ちを確信しているのだろう。

 だが、残念ながらそれは叶わない。


「おい、あれは!?」

「リーダー!『魔甲障壁』です! あの男……初期の防御魔法で20人の上位魔法を防ぎやがった」


 見かけより大したことないな、これならセリカに撃たれた9ミリ拳銃の方がずっと強い気がする。


「ッ……! もう一度だ! 最大出力で放てッ!!」


 どうやらまだやるつもりらしい。

 まぁ挑戦する姿勢は褒めるべきだろう。

 もっとも、改善されなければ無駄であるが。


「『上位光魔法ヘブンズ・アロー』!!」


 再び撃ち込まれる上位魔法。

 嵐のような乱撃に、俺は障壁へ無尽蔵の魔力を供給することで修復を行う。

 相手からすれば、煙が晴れる頃には無傷の障壁が現れるという地獄が発生していた。


「くそっ! くそっ!! なぜ初級魔法ごときが破れない!!」


 魔力無限の魔導士に、有限の者がいくら攻撃しようと結果は同じ。

 放たれた上位魔法は、その全てが障壁に阻まれた。


「くっ、こうなったら"アレ"使うわよ……!」


 女魔導士は、おもむろにローブから結晶を取り出した。


「待ってくださいリーダー! さすがに王都で召喚獣は……!」

「黙りなさいこの無能ども! お前たちがだらしないせいでこうなってるんだよ! 私を舐めたあいつだけは絶対に許さない!!」


 結晶が輝き、路地裏に莫大な魔力が渦巻いた。


「降臨せよ! "ガルム・ワイバーン"!!」


 地面に描かれた魔法陣から召喚されたのは、赤色の鱗をまとった家ぐらいの大きさを持つモンスター。

 市街地でこんなものを召喚するとは、だいぶ狂ってやがる。


「撃ち抜けガルム・ワイバーン!! あのクソ魔導士をちりに変えてやりな!!」

「ゴアァァァァァァァァァァァッ!!!!」


 大口を開けた召喚獣が、さきほどとは比べ物にならない威力のブレスを放った。

 路地裏が吹き飛び、周囲のガラスが全て割れる。


「アッハッハッハッハ!! 燃えろ燃えろ! 召喚獣の一撃をくらって無事なわけがないのよ!」


 黒煙の向こうから聞こえてくる声は、きっと歓喜の叫びなんだろう。

 それだけに、足を踏み出すのが申し訳なかった。


「いやとても良い攻撃だった、さすがは召喚獣といったところか」

「なっ、ありえない……なんで生きてるのよ!?」


 驚嘆する女魔導士へ、俺は笑って答えてやる。


「俺の魔力は無限だ。本気で壊したいなら、88ミリ高射砲でも持ってくることだな」

「きっっさまあぁぁぁぁ––––––––ッ!!!」


 発狂したように叫ぶ女魔導士。

 再び召喚獣が魔力を溜めるが、その攻撃は放たれる前に召喚獣ごと吹っ飛んだ。


「しょ、召喚獣が!?」


 まあこんな芸当ができるのは、あの方くらいだろう。

 待ち望んでいた救援の到着だった。


「いやはや厄介に巻き込まれているようだね、間に合って良かったよエルド君」


 端正な顔立ちに金髪メガネの元勇者、ジーク・ラインメタル少佐の姿が屋根上にあった。


「待ち侘びましたよ少佐」

「いやすまない、これを取りに行っててね」


 少佐からショットガンを受け取る。

 装填されていたのは、対人用の非殺傷弾だ。


「非殺傷と言っても、あくまで死なないようにしただけでその威力は凄まじいッスよ」

「なんだ、お前もいたのかセリカ」

「……腐れ縁を断ちに来たんですよ」


 彼女もまた、対人用の装備をしていた。


「さて、では始めようか」


 魔導士連中の前へ少佐が歩み出る。


「【アルナソード】の冒険者に告ぐ、我々レーヴァテイン大隊は警務隊で手に負えない、すなわち君たちのような魔導士へ治安維持のため武力の行使を認められている。よって––––」


 全員がショットガンを構えた。


「これより鎮圧を開始する」


 俺たちは地面を蹴ると敵パーティーに急接近し、一切の容赦なく引き金を引いた。

 非殺傷弾によって吹っ飛ぶ魔導士、向こうではラインメタル少佐がなんと3人同時に打ち倒している。


 かく言う俺も、敵の杖を弾いて銃を突き付けた。


「なぜ……、上級パーティーの我々が!」

「答えは簡単だよ、俺たちがその上の国営パーティーだからさ」


 非殺傷弾を叩きつけ、往生際の悪かった魔導士を失神させる。

 ほぼ片付いた頃合いで、セリカがあの女魔導士を追い詰めていた。


「お前みたいな半端者の荷物持ちが、なに私に突き付けてくれてんのよッ!!」


 おそらくは、彼女こそセリカの元パーティーメンバーだったのだろう。

 この期に及んで喚き散らす女魔導士へ、セリカは冷静に答えた。


「確かにわたしは半端者でした。だけどもう違う、わたしはレーヴァテインに入って生きがいと大事な人に出会いました。––––もうあなた方の荷物持ちじゃありません」


 最後の銃声が響く。

 レベル50以上の魔導士20人が、たった数分で制圧された。


「ひとまず片付きましたね、さすがに疲れたッス」

「全くだ、さっさと帰って今日買った本についてでも語り合おうぜ。俺もヘトヘトだ」


 残弾を抜き、俺は右腕だけ大きく伸ばしながら言った。


「はい! バンバン語り合いましょう!!」


 セリカもまた、過去のしがらみから解放されたようだった。


遅筆な自分なりに毎日せっせと書いておりますので、ブクマや感想、良ければ最新話まで飛んでポイント評価など頂けると狂喜乱舞します(/・ω・)/

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― 新着の感想 ―
[良い点] ざまぁまでが特急だった!笑 無駄に粘着してなければ、こうはならなかったのに。。。
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