第84話 俺があんな趣味の悪い人形を置くヤツに見えますか?
レビューを頂いてしまいました......!!!(ガクガクブルブル)
本当にありがとうございます!m(_ _)m
「こちら03エルド、キッチンをクリア。送れ」
草木も眠る深夜2時頃、遂に決戦を行うべく俺たちは完全武装で広報本部内を巡回していた。
《02セリカ了解ッス、こっちもまだ部屋には異常ありません。送れ》
「了解、引き続き警戒しろ。送れ」
《ラジャー、終わり》
セリカとの無機質な通信を終えると、俺はサイレンサー付き9ミリ拳銃を手にキッチンを出た。
木の廊下は薄暗く不気味だが、その不安はすぐに消える。
「やぁエルドくん、今僕も広報室を見てきたがクリアだ。こうも焦らされると本当に出るのか不安になるね」
同じく9ミリ拳銃を装備したラインメタル少佐と出くわした。
今晩は全員が臨戦態勢を取っており、俺と少佐は主に1階を。
セリカとオオミナトは2階を担当していた。
「幽霊も驚くだろうね、セリカくんの部屋を開ければトレンチガンが待ってるんだ。彼らに表情というものがあるなら是非とも見てみたい」
そう、毎晩脅かされてとうとうブチ切れたセリカは、なんと自室でトレンチガンを持ってガン待ちしている。
隣の部屋にはオオミナトもおり、まさに完全な迎撃態勢ができあがっていたのだ。
「全く広報本部が戦場になるとは思わなかったが、幽霊とやり合うのは僕も初めてだ。魔王軍よりかは楽しめると期待しようじゃないか」
「少佐はポジティブですね、いっそのことお化けが出るといえば定番の場所であるトイレに地雷でも仕掛けますか?」
「面白い発想だねエルドくん、トイレの神様もビックリだろう」
不気味さをぶっ飛ばすように笑う俺と少佐。
だが、ふとここで陽気な会話は急降下する。
「ところでエルドくん」
「なんですか少佐?」
「――――――あんなところに"人形"なんて置いてあったかな?」
全身に寒気が走った。
見れば、廊下の突き当たりにポツンと1体の人形がこちらを見つめていたのだ。
「俺があんな趣味の悪い人形を置くヤツだと思いますか?」
「思わんよ」
「なら行動は1つですね」
「あぁ」
俺と少佐は同時に拳銃をその人形へ撃ち放った。
減音器によって抑えられた銃声が響き、人形を9ミリ弾がまたたく間に引き裂いた。
穴だらけの床を踏み、そっと近づいて何度か蹴ってみる。
人形はピクリとも動かなかった。
「......クリア、制圧です」
「とうとう出てきたか、セリカくんたちにも伝えよう」
「そうですね」
遂に仕掛けてきた。
俺が警戒の指示を出そうと通信機を起動するが、なにかおかしい。
「こちらエルド、02セリカへ。感明送れ......繰り返す、感明送れ」
「......どうした?」
「いえ、どうもノイズが酷くて......」
おかしい、ついさっきまで通信状態は良好だった。
なぜ繋がらない?
《こ......っ、......て......》
「やっと繋がったか、おいセリカ。感明送れ」
《こっち......見て......》
「おいセリカ! ふざけてないで返事を――――――」
言いかけた時、少佐が俺の肩を思い切り引っ張った。
「エルドくん上だッ!!」
「......なっ!?」
天井に広がっていたのは無数の"顔"。
それらは1つ1つが微笑み、俺たちを見つめ笑っていた。
すぐさま発砲。
天井の修理代などお構いなしに、セリカとオオミナトのいる部屋を避けて全弾撃ちまくる。
最後の1発が天井に着弾し、拳銃がホールドオープン。
そこにあったのはハチの巣となった天井だけだった。
「逃したか......、通信はどうだ?」
「いっ、今確かめます」
アルト・ストラトス王国の軍事通信をジャックなど、ミハイル連邦クラスでやっとだというのにどういうことだ。
相変わらず通信はノイズだらけ、だが直後にこだました断末魔は通信をせずともわかった。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」
セリカの声。
あいつ! 確かトレンチガンで待ち伏せしてたのにどういうことだ!?
「上に行くぞ!!」
「了解ッ!!」
俺と少佐は9ミリ拳銃に2個目の弾倉を装填し、2階へ続く階段を駆け上がった。




