表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/380

第74話 この戦争は、あまりにも無謀すぎた

 

 王国軍はプランXこと、魔王領侵攻計画『ミカエル作戦』を発動した。

 多くの冒険者を葬った魔王領の玄関たる【猛獣の平原】、そこに響くは凄まじい数のエンジン音だった。


《タイガー14から大隊長車へ、敵影目視、10時方向丘の上! スケルトンメイジの大軍です》

《了解、タイガー全車全速前進! 射撃タイミングは各小隊長車に任せる》


 最初に魔王軍の前線陣地へ姿を現したのは、王国陸軍が誇る陸戦兵器『戦車』。

 平原を突っ走るそれは、さながら鉄のゾウのようであった。


「カカカカカカカッ!!!」


 スケルトンメイジ群による集団火炎魔法が次々繰り出されるも、110ミリを誇る装甲の前にもはや魔法は弾かれるだけの花火と化す。

 それどころか、どうぞ攻撃してくださいと言わんばかりに無防備の姿に、戦車乗員はニヤリと笑った。


《目標正面スケルトンメイジ! 対榴、小隊集中――――――撃てッ!!!》


 75ミリ戦車砲が唸り、稜線りょうせんごとスケルトンメイジを粉砕した。


《命中――――ッ!! 続いて撃て!!》


 これに対し、魔王軍も負けじと切り札級のモンスターを投入。

 巨大な盾を構え、横一列に並んだジャイアント・オーガが戦車大隊の前に立ちはだかったのだ。


やっこさん俺らをぶっ飛ばしたいようです!!》

《ハッハッハ!! 良いじゃねーか大変結構!! ご自慢の盾と筋肉をぶち抜いてやれッ!!》

《11時方向! 敵ジャイアント・オーガ! 弾種変更徹甲!! 小隊集中行進射――――――ッ!!!》


 芸術的とも言える一斉砲撃が、発砲炎マズルフラッシュから吹き出た徹甲弾を撃ち放つ。

 攻城兵器すらものともしないジャイアント・オーガ×魔導盾のコンボは、徹甲弾によって呆気なく盾ごと肉塊に変えられた。


 壁役を失ったゴブリン部隊は、生身のまま戦車に立ち向かう。


 意気軒昂に投石し、中には接近して剣を振るう者もいたが、そのどれもが車載機関銃の餌食となった。

 大量の戦車によって前線を食い破られ、魔王軍はさらに後退。


 王国軍は迫る飛行船部隊による空爆作戦を成功させるため、蹂躪しきった元魔王軍の前線基地に大量のトラックを集結させた。

 そのトラックこそ――――――


「いや〜さすが、"自走ロケット連隊"の一斉砲撃は凄まじい。まさか前線よりちょっと後方のここからでも見えるとは......」


 高台から闇夜を切り裂き飛んでいく地対地ロケットを見ていたジーク・ラインメタル少佐が、感嘆の声を出す。


「......一体どういうつもりだ勇者? わたしをこのような場所へ連れてきて」


 ――――始まりの町ソフィア。

 多くの駆け出し冒険者が滞在し、初級クエストを受けて生計を立てるこの町の郊外で、1人の軍人と1人の少女が日も沈んだ西を見つめていた。


 ラインメタル少佐の隣に立つのは、先のロンドニア奇襲で戦った吸血鬼。アルミナ・ロード・エーデルワイスだった。

 彼女は空へと伸びるロケット砲の光跡を見てつぶやく。


「まるで"光の矢"だな......あれ1つ1つに爆裂魔法が付いているのか?」

「まぁそんなところだ、今頃は敵の主要交通路とワイバーン基地が、地獄のような鉄の雨にさらされていることだろうね」


 涼しい表情で言い放つ少佐に、アルミナはさらに問う。


「恐ろしい力だ......、これも全部お前の謀略か?」

「さあね、そんなことより君に見せたいものが今日はあるんだ」

「見せたいものだと? わたしは敵なんだぞ? 安易に手の内をバラしても良いのか?」


 戦いが終わってアルミナは拘束されていたが、突然現れたラインメタル少佐によって拘束はいきなり解除。

 問い詰める間もなく、彼女はここまで連れてこられたのだ。


「敵だからこそだよ、君にはぜひとも見せておきたかったんだ......最近、ここ【始まりの町ソフィア】の郊外に列車用のレールが敷設されてね。今日はその準備が生かされる日というわけだ」


 やがて現れた"それ"に、アルミナは驚愕を隠せなかった。


「なんだ......あれは!?」


 展開されたのは、2門の大砲。

 だが、そのたった2門の大砲が規格外のサイズだったのだ。

 王国軍が魔王城を今度こそ攻略するべく開発した究極の砲。名を――――――


《"80センチ列車砲"、展開完了!! 現在、仰角調整中!》


 始まりの町に姿を現したのは、大陸でもっとも大きな対魔王決戦兵器。

 列車砲と呼ばれる規格外の大砲だった。


《少佐殿、敵司令部に異変あり。『移動要塞スカー』が起動したものと思われます》

「向こうから来てくれるとは都合がいい、お出迎えに熱いお茶を用意してくれたまえ」


 アルミナは思い知る。

 これは手の内をむざむざバラすのではない、最高幹部である自分に見せつけようとしているのだ。


《移動要塞スカー、【猛獣の平原】にて停止。攻撃態勢に移行しつつあるとのこと》


 この戦争はきっと負ける。

 そう彼女へ知らしめるには、十分過ぎるメッセージだった。


《80センチ列車砲、一番砲ネメシス! 二番砲ヴァルキュリア! 発射準備完了ッ!!》

《仰角よし! 3――――、2――――、1......発射ッ!!!!》


 町の住民全てを叩き起こすほどの爆音が、ソフィア中に響いた。

 発射された2発の4.8トン榴弾が、魔王軍の移動要塞目掛けて飛翔した。


【80センチ列車砲】

その名のとおり列車ごと大砲にしてしまった規格外の兵器。

男のロマンであり、コンクリートで造られた巨大要塞すらブチ抜ける。


※運用人数がめちゃ必要で、人数や指揮系統も旅団級だとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ