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第67話 短所こそ最大の長所と示してみせようッ

 

「お前1人で十分だと......? まぐれでいい気になってくれるなッ!!」


 発動したのは最上位火炎魔法。

 無数の炎槍の切っ先が、肌で感じられる熱と共に俺へ向けられた。


「遥か海の果て――――主は灼熱の国より来たれん『イグニス・フレシェットランス』!!!」


 超高速で発射された散弾のような槍を、再び防御魔法によってことごとく弾き返す。

 生身にくらえばこんなもの即死不可避だ、全身全霊で受け止める以外に道はない。


 左手から膨大な魔力を障壁へ流し込み、すぐさま修復を終わらす。


「どうした吸血鬼、一兵卒には傷一つ付いてないぞ?」


 攻撃は防ぎ切った。

 その証拠に、俺の周囲だけは地面が火でくすぶっていない。


「『イグニス・フレシェットランス』を耐えた......!? ありえない、あんな初級防御魔法に......」


 彼女としては、今ので俺を完全に仕留めるつもりだったのだろう。

 確かに普通の魔導士なら魔力切れで干からびていたに違いない、だが俺の魔力は無限だ。中級以上の魔法が使えない代わりにいくらでも魔力は湧いてくる。


 初めてエルミナの額に汗が浮かんでいた。


「魔法が効かないっ......? なら試そう! お前にわたしの――――全力をぶつけてやる!!!」


 エルミナはお得意の近接戦に移行したようで、間髪入れず体術が飛び込んできた。

 だけどな......こっちもやられてばっかだと思うなよッ!!


「あぐっ!?」


 スラグ弾を土手っ腹に撃ち込む。

 さすがに効いたのか、エルミナは口から血混じりの唾液を吐き出していた。

 だがこれでも致命傷には至らないらしく、すぐさま裏拳が飛んできた。


「ッ......!!」


 間一髪で防御魔法を展開。

 必死で踏ん張り、なんとかふっ飛ばされずに済んだ。


「マジで化物だな......! こっちはスラグ弾を撃ち込んだんだぜ? もうちょっと痛がってくれよな......!!」

「わたしは吸血鬼王の末裔だ! 銃なんていう卑怯な武器には屈しないッ!!」

「それは残念、セリカ以外にもミリタリー仲間が欲しかったんだが! あとあいにく俺は喧嘩が弱くてね、姑息に立ち回らせてもらうよっ!!」


 携帯していたナイフを投げる。

 それを当たり前のようにかわしたエルミナへ、俺はスキを見逃さず蹴りを打ち込んだ。


「『炸裂ブラスト』!!」


 吹っ飛んだエルミナへ、エンチャントしたスラグ弾が再び直撃。

 それでもなお、爆発を突っ切って彼女は俺との距離を縮めてきた。


「だったら、ズタズタに引き裂いてやればいい話でしょうがッ!!!」


 防御魔法を駆使しつつ、紙一重で攻撃を避けていく。


 彼女のこの強さ......ひょっとしたらレベル90、下手したら100すら超えているかもしれない。

 並の冒険者パーティーなら全滅させられてしまう実力だ。


 油断したらこっちが瞬殺されかねん。

 互いに拳と発砲を外して、またも距離を取る。


「オオミナト以外にもこんな一兵卒がいたなんてね、ホントは勇者相手に残しときたかったんだけど......」


 エルミナの両腕に魔法陣が何枚も――――包んでいくように次々と重ね掛けされていく。

 なんとなく察せる、これはだいぶんマズいやつだ。


 まがりなりにも魔導士なのでわかる、先程の最上位火炎魔法すら超える魔法がくるのだと。

 規模から推察するに、俺たちが来る前に時計塔のちょうど半分より上を綺麗サッパリ消し去った技か?


 だとすればヤバい、いや、せめてオオミナトさえ安全な場所に運んでれば退避もできたんだがなぁ......。


「勇者を葬るためにお父さんから貰ったこの技で――――――全てを消し飛ばしてやるッ!!!」


 軽い地鳴りと同時に、その魔法は放たれた。


「滅軍戦技――――『ブラッド・ノヴァ』!!!」


 迫りくる対勇者用の魔法に、俺はショットガンを置いて両手を突き出す。


「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――――ッッッ!!!」


 流し込めるだけの魔力全開で障壁を展開。

 やってやる! ここで俺が負ければ今度こそムダ飯食いの税金ドロボウ!

 初期魔法がなんだ、短所こそ人間最大の長所足り得ると示して見せようッ!!


「――――――嘘......ッ!?」


 初めて数メートルほど押し込まれたが、障壁は健在。

 俺とその後ろには焦げ1つない街並みが広がっていた。


「あり......えない! こんなのって......!!」


 今度こそ攻撃を完璧に防がれたエルミナが、期待通りに動揺してくれていた。

 初級魔法バンザイと叫びたいが、それはこの過重労働が終わってからのお話。


 まずは目の前の仕事を片付けねば......。


「良い攻撃だったよ、こんなに押し込まれたのは初めてだ。――――じゃあ、そろそろ反撃させてもらおうか」


 ショットガンを拾い、予備の弾を装填。

 ここに来るまでにステータスカードをいじり、習得した4つ目の付与魔法を発動する。


「レベル70エンチャント――――――『身体能力強化オリオン』!!」


 全身に力が溢れると同時に、莫大な魔力が燃やされていくのを感じる。


 この魔法は発動している間、尋常ではない魔力――――おそらく並の魔導士なら10秒ともたない量を消費し、なおかつ発動中は他に一切の魔法が使えなくなる。


 魔導士としては使い勝手最悪のエンチャントだが、俺にとっては全くの逆。

 地を蹴り、彼女をもってして反応できない速度で肉薄した。


「えっ......」


 こちとら異端の魔導士だ。

 手にショットガンを持っているのだから攻撃魔法は無用。その上魔力は無限、発動時間も無制限というわけだ。


「ぐぅッ!?」


 超至近距離でスラグ弾がエルミナの胸に直撃した。 

 

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