第66話 王の末裔? 一兵卒1人で十分です
畏れ多くもレビューを頂いてしまいました
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
ので、昨日に続いてさらにもう1話追加で更新です!
「オオミナトさん、待たせた......!」
装甲車から飛び降りた俺は、安堵した表情で座り込むオオミナトに駆け寄った。
すっかりボロボロになった彼女は、ふぅっと息を吐いて崩れた屋台に寝っ転がる。
「いつも遅いんですよエルドさんは......、わたしもう疲れちゃったので......あと任せて良いですか?」
「あぁ、よく戦ってくれた。お前のおかげで街はまだ陥落せずに済んでいる」
「なら良かったです......。一応わたしも......人を守れたんですかね」
言い終わると同時にオオミナトは意識を失う。
俺は立ち上がると、体勢を整えた2人の吸血鬼へ振り返った。
「少佐、一応街中なので聞いておきます。......武器使用の制限は?」
「欠片も無い。我々は目の前の吸血鬼へ全力を出さねばならないだろう」
車を降りた少佐が両手に拳銃を持ちながら答える。
「勇者に兵士......!! お前ら如きにこの争乱は止められない! たった数人でなにができる?」
「ほお、その様子だと、まだ僕たちが旧来の古臭いパーティー戦術を取っていると思っているらしい」
「どういうことだ!!」
「知らないなら教えてあげよう、こういうことだ」
少佐が右手を上げた瞬間、それは起こった。
――――ダァンッ――――!!!!
「なッ......!?」
エルミナを襲ったのは、肉眼では見えない位置から放たれた銃弾だった。
吹っ飛んだ彼女は転がりながら靴底でブレーキを掛ける。
「ありえないっ! どんな長距離魔法でも察知できないわけがないのに......! 何をした!!」
「言っただろう? 我々はもはや勇者パーティーなどではない、国家が持ち得る最大最強の暴力装置――――――」
少佐の合図でさらに追加の"長距離狙撃"がエルミナへ牙をむいた。
「ぐっ......!!」
「名を軍隊――――! 君たちの野望も信念も、これの前ではひたすらに無力だ! 立ち上がる軍旗の前にひれ伏してもらおうか!!」
気づけば屋根上には大勢の軍人が立っており、その全員が量産前で数少ないアサルトライフルを装備していた。
王国軍の虎の子――――ロンドニアに展開していたレーヴァテイン2個中隊がここに集結したのだ。
少佐の横に立つ形で、俺とセリカも前へ出る。
「舐めるな人間風情がッ!! 国家の操り人形などに負ける我々ではない!!」
大量の魔法陣から召喚魔法が発現。
こちらの頭数を上回るゴブリンやスケルトンナイトが、街の広範囲に分散した。
全く厄介極まる行為だが、少佐は冷静に指示を出す。
「各員、小隊ごとに散開して追撃!! 1匹も逃がすことは許さんッ!!」
「「「「「了解ッ!!」」」」」
徹底して訓練された兵士らは、直ちに行動を開始。
一方的とも言える戦闘を各地で始めていた。
「さて、僕とセリカくんはあの水色吸血鬼を......あのエルミナという娘はエルドくんに任せるよ」
「了解しました少佐」
「ならエルドさん、これを!」
セリカから渡されたのはスラグ弾の装填されたショットガン。
なるほどありがたい、これで火力には困らないというわけだ。
「助かる......でもお前の銃はどうするんだ?」
「今はいりません、わたしには"これ"があるので」
ドヤ顔でエンピを構えるセリカ。
そういえば元近接職の冒険者だったなコイツは......。
トロイメライ以来となる本気を出すつもりだろう。
「このわたしを1人でだと......!? 冗談も大概にしろ人間ッ!! この吸血鬼王の末裔に一兵卒が敵うと思うな!!」
エルミナは炎槍を具現化し、それを俺目掛けて猛烈な勢いで投擲した。
避けることもたぶんできたが、後ろには気を失ったオオミナトがいるのでその選択肢は除外。
なら――――――
「なにッ!?」
前方に展開した初級防御魔法が、エルミナの炎槍を正面から受け止めた。
障壁の傷は無限の魔力ですぐに修復され、攻撃など無かったように元通りとなる。
「少佐の言った通り一兵卒とのサシで十分だ、掛かってこいよ――――吸血鬼ッ!!」
「ッ......!!!」
俺とエルミナは、互いに魔法と銃口を向けあった。