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第58話 節操のない連中には罰をプレゼントしましょう

 

「列車を視認しました! 損傷多数!!」


 交信の途絶えた列車を発見したのか、セリカが機関銃座からその様子を双眼鏡で確認した。

 損傷があるということは間違いなく攻撃されたということだろうが、ならなぜ走り続けている?


「かなりボロボロです。やられましたね......」

「とりあえず近づこう、機関銃の発射はいつでもできるようにしといてくれよ」

「了解ッス!」


 少佐の指示で車両へ接近。

 最後尾――――大きく穴が開いて中まで剥き出しになった車両へ近付くと、あの人は大胆にも助手席から列車へ飛び乗ったのだ。


 並走する装甲車から、俺も少佐の手を借りて車内へ。

 中はかなりスペースがあるようだ。

 アサルトライフルを構えながらゆっくりとクリアリングしていく。


 《どうッスかー?》

「クリア、敵影は確認できない......」


 やがて車両の連結部へ来たとき、少佐がポンポンと俺の肩を叩いた。


「エルドくん――――ここから上へ上がろう」

「車上ですか!? しかし次の車両の中も調べないと――――」

「ここらへんは景色が良くてね、あまり緊張しても身が持たない」

「はぁ......そう仰るならば」


 意味不明だが、とりあえず車上へよじ登る。

 確かに景色は綺麗だが、こんなことより列車を調査した方が良いんじゃなかろうか。


「サッサとクリアリングしなきゃ――――だろう? わかってるよエルドくん、でも時には正面切って突っ込むより、もっと卑怯に立ち回った方が良いときもある」


 どういう意味だ? それはつまり......俺が入ろうとしたこの車両の中に敵がいるという意味か?

 そんな疑問は、直後に襲った足の痛みによって確信へと変わった。


「なッ!?」


 下から天井を突き破って俺の足を掴んできたのは、真っ黒な手だった。


「くそがっ!!」


 真下目掛けて撃ちまくる。

 人間ではない、この禍々しい手の主を『貫通ショット』エンチャントの弾丸で車両ごと撃ち抜いた。


「バレバレな待ち伏せはやめて手を出してきたか......良いだろう! 節操の無い連中には相応の罰をプレゼントだ!! 薙ぎ払えッ!!!」


 並走する装甲車から、セリカが機関銃を間断なく叩きつける。

 撃ち込まれているのがすぐ下なので怖かったが、車上にいたおかげで事なきを得たらしい。


「おっ、やっと炙り出せたようだ」


 見れば、先頭付近の車両から全身を黒に染め上げた人型のそれが、よつん這いで車上へ何体も出てきたのだ。

 運転手を除いて、他の乗組員の生存が絶望的だとこの時点で察する。


「少佐!」

「見たところ召喚獣に似ているね、まぁいい......ちょうど退屈していたところだったんだ」


 銃剣を両手に構えた少佐は、黒い召喚獣に照準を定めた。


「掩護してくれ、ちょっと彼らと遊んでやろう」

「うっかり少佐殿を撃って、お前は祖国を裏切ったとか言われないよう気をつけます」

「あぁ頼むよ、ケツを掘られるのは勘弁願いたい――――――!」


 車上を蹴った少佐が一気に突っ込む。

 いや速すぎる......! 俺が引き金をひくのを待たず3両分も飛び越え、直接召喚獣を銃剣で斬り付けていた。


 離れていながらも、ヤツらの面食らった表情がよく見えたような気がした。


 化け物のような少佐の動きになんとか合わせ、単発射撃&『誘導ホーミング』で連中にスキを作る。


「ハッハッハッ!! 実に楽しい限りじゃないか!! レベルは60くらいか? よくできた召喚獣だ!!!」


 レベル60以上の召喚獣を、それこそ紙切れを破くように蹂躪する人の方が十分化け物だと思う。

 列車から最後の1体が斬り落とされた時、少佐はふと上を見た――――


「来たか......!!」


 後方に下がってくる少佐。

 その瞬間、真上より何かが召喚獣のいたあたりへ着地。

 列車が大きく揺れた。


「初めまして、勇者とそのお仲間......。まさかこんなところで会うなんて思ってなかったわ」


 現れたのは子柄な少女。

 セミロングになった桃色の髪を風に揺らし、一見してみれば13歳くらいの可愛らしい顔で俺たちを見ていた。


 だが今までのような雑魚ではない、デスウイングやヒューモラスを超える覇気は、俺の頭にそう警告を流す。


「さっきのは召喚獣だ......。なら、その召喚主がいるのもまた道理というわけだよ、エルドくん」


 じゃあ、つまりこの列車を襲ったのは――――――


「あらためてこんにちは勇者御一行さん、わたしはエルミナ・ロード・エーデルワイス。吸血鬼王の娘であり最上位種族の末裔――――新生魔王軍では"最高幹部"をやってるわ」


 小さく牙を見せた眼前の吸血鬼は、1秒と掛からず俺たちとの距離をゼロまで詰めてきた。


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